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証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その3
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証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その3

2016-12-22 14:30
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     CFP梶原真由美です。

     今回は米国金融リテール業界の近年の変化について、最終章をお届けさせて
    いただきます。


    <前回までの内容>


    証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その1
    http://www.okuchika.net/?eid=6698

    証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その2
    http://okuchika.net/?eid=6737


     2008年の金融危機時にも米国リテール証券業界は投資家の信用を損ねませんでした。
     金融危機を経験した投資家は、自力で投資判断を行う難しさを実感し、金融の専門家を頼るようになりました。
     それは富裕層だけではなく、「老後の資産形成」を投資目的とする資産形成層も同じであり、そのニーズに応えRIA(=個人向け投資顧問業者)が増加しました。

     一方、金融商品に個人投資家が求めたものは「低コスト」「分散投資」「専門家のアドバイス」であり、そのニーズに応えた商品が普及していきました。

     今回は、近年の米国証券リテール業界対面チャネルの変化についてご紹介します。


    ■大手証券会社

     大手証券会社の特徴は、情報収集力・豊富な商品ラインナップ・ブランド力ですが、こうした本社からの支援が充実している代わりに、歩合制を取る営業担当者の戻し率は業界でも最低水準となっています。

     従来以上に富裕層に特化する戦略をとっており、伝統的な大手証券会社の場合、他の新興チャネルと較べると預かり資産残高では他を圧倒しています。
     プライベート・バンクの牙城である超富裕層向け営業を強化する一方で、資産形成層の取り組みには消極的な姿勢です。

     米バロンズ誌が毎年公表する2014年全米トップ営業担当者ランキングは、上位1~5位をモルガン・スタンレー勢が占めました。
     そのうちの3チームは超富裕層部隊所属でした。


    ■地方証券会社

     ここではエドワード・ジョーンズが例に挙げられています。
     EDジョーンズは、あえて他の証券会社が進出しない郊外に進出し、営業担当者がたった一人しかいない「一人店舗」で運営しています。
     店舗数は一万店と全米最大を誇り、まるで「街医者のように気軽に相談に応じる」徹底した地域密着型の営業を貫いて、好評を博している証券会社です。

     同業他社とは企業文化が大きく異なることから、証券営業以外の就業経験のある人を採用し、徹底的な研修によって証券営業担当者として育てています。

     EDジョーンズが注目されたのは、金融危機の最終も営業担当者を採用し続けたことで、2012年には、2020年までに営業担当者数を2万人、預かり資産1兆ドルを達成するという「20/20ビジョン」を発表しました。

     2008年にはファンドラップを導入し、2013年には初めて自社投信を設定し、ファンドラップの顧客にのみ提供しています。

     他にはIBD(Independent Broker/Dealer)といわれる証券会社がIC(売買委託手数料型独立系営業担当者)を採用し、勢力を拡大しています。
     これらの拡大の経緯は、ICがIBDからの支援の度合いと歩合の戻し率、ICの自由度とコンプライアンス責任の所在に応じた複数のチャネルを用意し、ICが自分に働きやすい環境を選べるような仕組みを整えていった事が挙げられます。


    ■RIA

     RIAは(Registered Investment Advisor:個人向け投資顧問)顧客の運用資金をカストディアンと呼ばれる証券会社の口座へ預けて貰い、実際にアドバイスを実施する際には、カストディアンの注文執行システムを利用しています。
     報酬は残高連動型となっており、報酬もまたカストディアンを通じて徴収しています。

     RIAが近年米国で目覚しい躍進を遂げてきた事はお伝えしましたが、その立役者はチャールズ・シュワブです。
     チャールズ・シュワブは87年からRIA向けサービスを開始し、カストディアンシステムに加えて様々な営業支援を行ってきました。

     情報技術面ではCRM(顧客管理システム)、ポートフォリオマネジメントシステム、ポートフォリオの自動リバランスシステム、書類管理システム等も加えた統合プラットフォームを提供しています。
     また2008年からは日々のオペレーション業務の一部を代行するサービスも始めました。

     ネット証券として急成長したチャールズ・シュワブがこうした先進的な情報技術で営業担当者を惹きつけてきました。
     それだけではなく、大手証券の営業担当者をターゲットとした独立支援を強化したこともRIAの伸長を後押ししました。


    ■ロボ・アドバイザー

     オンラインで一任サービスを含めたアドバイスを提供するロボ・アドバイザー。
     2014年の市場規模は推定36億ドル、18社で、その77%は2009年以降に参入したものです。
     世界最大級のロボ・アドバイザーであるウェルスフロント社は、2011年の導入以来、わずか2年半で10億ドルの資産を集めました。

     同社の仕組みは最初にネット上で年収、資産額や投資目的等の情報を入力すると、これにあったポートフォリオを推奨します。
     これを調整しながら納得のいく資産配分を決め、口座を開設して運用を開始します。投資対象は低コストのETFやインデックス・ファンドで、定期的なリバランスも自動的に行います。

     ロボ・アドバイザー・サービスを提供するのは新興企業に留まらず、バンガードも2013年に導入、チャールズ・シュワブも2015年に導入を発表しています。


    ■日本との比較

     3回に渡ってお伝えしてきた、金融危機後の米国リテール証券業の変化から、将来の日本の証券業界の姿が垣間見れます。
     米国では金融危機後、大手金融機関離れが起き身近に相談出来るアドバイザーを求める要望から、RIAとよばれる個人向け投資顧問業者が増加しました。

     現在の日本の証券業界は、大手証券会社、ネット証券含む中小証券会社で構成され、米国でいうところのICはIFA(Independent Financial Advisor:金融商品仲介業)チャネルと呼ばれ、IFAの収入源は主に所属証券会社からの商品販売手数料収入です。

     例えば、IFAが顧客に販売した商品の手数料は、所属証券会社とIFAで特定の比率でシェアされます。

     米国RIAに近い制度は「投資運用業」にあたるのですが、投資運用業の登録要件は最低資本金が5,000万円と非常に厳しく、中小企業事業者の登録及び、IFAからRIAへ移行の壁は高くなっています。
     また、カストディアンのような仕組みは存在せず、投資運用業者は各自で情報技術面やオペレーションを構築しなければなりません。

     現在の日本の証券業界の問題は、手数料収入が主な収入源となっている事であり、その為欧米に比べ手数料率が高いことです。

     特に投資信託においては、販売手数料が証券会社の主な収入源であることから、本来長期保有すべき投資信託の商品コンセプトと相反する売買勧誘が一部で横行しています。

     そういった中、日本にも米国RIAのような制度を作ろうといった動きが出ています。

     「資産形成支援のあり方を考える勉強会」による「個人資産形成の拡大に向けての提言」発表-楽天証券2014年
    https://www.rakuten-sec.co.jp/web/company/newsrelease/pdf/press20140610.pdf

     金融庁がIFA育成に本腰 利益相反抑え、積み立て促進狙う-2016年12月 日経新聞電子版
     http://www.nikkei.com/article/DGXMZO10388940X01C16A2000000/
    ※本文はIFAとなっていますが、米国RIAのことを指していると思います。


     楽天証券等の2014年の提言を受けて金融庁が動きだした、というのが現状です。
     今後出てくるであろう視察団の報告書内容に注目したいですね。


     日本にこの先、RIAのような制度が創設された場合、日本の証券リテール業界にも今回みなさんに紹介した、金融危機後の米国のような流れが訪れる可能性は低くないと思っています。


    株式会社マネーライフプランニング
    パートナーCFP 梶原 真由美

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