5月初旬は欧州と韓国の大統領選挙が注目されました。
フランス大統領選挙で極左極右が勝利せず、ドイツ州議会選挙では一時劣勢かと言われたメルケル首相のCDSが勝利し総選挙への安心感が生じました。また、フランス大統領選挙翌日の韓国大統領選挙では、南北融和を重要とする新大統領が誕生。トランプ政権発足後の混乱が、世界の世論に影響した結果のように見えます。
今年は選挙の年である欧州。フランス大統領選挙後には6月の下院選挙があり、マクロン新政権の議会運営が注目されます。懸念事項では、イタリアでユーロ離脱を志向する「五つの星運動」がありますが、当面の市場の注目は選挙からECB金融政策に移っていくものと思われます。
そんな中で、ユーロ買いが活発になっています。
ルペン・リスクで売られていたユーロは対ドルで、選挙後の5月8日にショートカバーが入り1.10乗せしました。一つの節目を達成したことから、その後1.08台まで戻したものの、今後の金融政策の変化期待(量的緩和の段階的縮小であるテーパリング)からのユーロ買いが活発化。それに、トランプ政権への期待剥がれからのドル安と相まって、現在はユーロ買いがドル安の流れを主導している形です。
ドルの相対的強さを示すドルインデックス(ドル対貿易相手国通貨バスケット)は主な移動平均を下抜けました。
欧州の政治リスクが後退したことに加えて、経済の好調さとインフレ率が目標値2%に近づいてきていることが今後の期待につながっています。利上げは、テーパリング終了のその先のことですので、ずっと先になるのでしょうが、先を読んで動くのがマーケットですので、今後のECBの動きに注目です。
ユーロ買いのもう一つの背景であるのが、米国の政治と経済状況によるドル安の流れです。年初来の対ドルでの主要通貨パフォーマンスを見ると、最も上昇したメキシコペソの11%を筆頭に、日本円も含めて殆どの通貨がドルに対して上昇しました。
一方、4月末以来、フランスの選挙を挟んだ直近までの流れは、全体的にはドル安基調ながら、日本円は1.44%の円安に動き、豪ドル、英ポンドも僅かながら安くなりました。
地政学リスクの高まりや欧州選挙リスクから、ドル円相場は、4月17日に108円13銭という安値をつけました。しかし、そこを当面の底に、フランス大統領選直後の5月10日には114円37銭の高値に。この動きは、リスクオンの時に起きるドル安円安傾向かと思います。
そのドル円相場の動き。主要な移動平均線を上抜けてくる兆候も見られ、チャート的には底入りか?との期待も持ちたいところではありますが、今後のコアの焦点である米国経済、金融政策の行方を見つつ、判断していく必要がありそうです。
米国の金融政策に関しては、FRB当局者の発言などから6月の利上げは、余程のことがない限り実施される可能性が高いと見られています。直近の予想(ソース:Bloomberg)では確率97.5%。6月利上げは、既に市場にも織り込み済でしょう。
今年4回もあるかもしれないという予想も一時あったFRBの金融政策正常化のための利上げですが、ここへきて年合計3回にも疑問符が一部聞かれるようになりました。
背景には、先般発表された第1四半期のGDP値、先週発表された個人消費、消費者物価が予想を下回ったこと。予想以上の4月の雇用統計でも賃金が伸びていないこと。
加えて、トランプ政権の公約の政策実行の可能性が低下し、期待が剥がれてきたことも大きいでしょう。バランスシート縮小も疑問視する向きもあります。
経済指標の中でも、特に所得が伸びないことが問題でしょう。所得が伸びないと、個人消費の伸びは難しく、住宅関連消費にも影響します。先進国の所得の伸びの鈍化は、日本も同様ではあります。
5月後半には、米国の重要な経済指標の発表は予定されていませんので、目先、市場はトランプ政権に関するスキャンダル的要素に振り回されることになりそうです。
大統領就任100日を過ぎ、公約関連法案の議会通過はゼロ。実務を行う官庁の局長人事なども未だ完了していないと伝わります。9月には暫定予算の期限を迎え、連邦財政債務の上限に抵触するリスクもあり、トランプ氏公約の財政拡大路線には疑問符がつきます。
公約実行への疑問符やスキャンダルによるダメージを払拭するために、政権が何をしてくるのか?
北朝鮮問題では、中国、ロシアとどう絡んでいくのか?
そのあたりがキーになっていくのではないかと注目しています。
経済対策での期待外れを外交で挽回できるのか?
今年は、政治から目が離せない年と言われます。5月下旬、トランプ大統領は初の中東訪問、G7出席を予定しています。
相場格言で言われる「Sell in May」。『「今度ばかりは違う」と信じると大損する』というジョン・テンプルトンの名言も頭に入れつつ、冷静に見ていきたいところです。
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※5月17日東京時間午後1時執筆
本号の情報は5月16日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)