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為替市場動向~出口へ向く米欧英、日本は?~
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為替市場動向~出口へ向く米欧英、日本は?~

2017-06-30 00:07
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     週末、月末、四半期末、半期末の節目が重なる6月30日を前に、先週から狭い値動きだった市場でしたが、昨日ドラギECB総裁、イエレン米FRB議長の講演で大きく動きがありました。また、同じ日に、米上院議会で共和党がヘルスケア法案(オバマケア法案の見直し)採決を延期したことも影響がありました。


     イエレンFRB議長の発言主旨は、利上げ路線は不変、(使う尺度によるので確信はないとしながらも)『やや高く見える資産価格』の2点だったように思われます。資産価格(株価)が幾分高いとしているのは他の当局者からも出ていて、ニューヨーク株式市場は、発言を受けて下げ幅を広げ、長期金利は上昇しました。資産価格への言及については、今後も注目していく重要ポイントでしょう。

     また、このところ、注目されてきたインフレについては、(インフレ低下)懸念もありつつ、指標により相反するシグナルがあるとしました。
     昨日は講演内容から、6月のFOMC後に提示された出口戦略であるバランスシート縮小工程と利上げの方向性は不変ながら、状況次第で柔軟に動く姿勢かと推測しました。

     因みに、米FRBの利上げ確率の直近数値は、9月で約16%、12月で約45%、来年3月あたりで60%近い確率にやっと上がる程度。市場は、金融正常化の次の一手への確信を深める決め手待ちをしている印象ではあります。


     一方、同日ECB経済フォーラムで講演したドラギECB総裁の発言では、株式相場、ユーロ相場が動きました。
     量的緩和政策からの出口に関連して注目されてきた物価状況について、昨日のドラギ氏の発言では、デフレ圧力からリフレ圧力に変わりつつある、景気回復局面ではあるので、引き締めはしないものの、緩和政策を調整していく主旨のメッセージを発しました。

     ユーロ債(ドイツ国債)利回りは、前日より0.10%強上昇し、株価は下落、ユーロ対ドルは1.1200水準から1.1340台まで上昇しました。

     ユーロ・ドル、このところの高値1.1296を抜いた1.1340台は昨年8月以来の高値です。上昇を続けるとしたら、高値目標は1.14前半、更に行くなら、1.16水準あたりが目安かと思います。昨年の5月、6月につけた高値です。

     ただ、ユーロ高は基本的にインフレ率低下につながりますし、輸出競争力からも急激なユーロ高はもろ手で歓迎されるものではないはずなので、今後けん制発言もあろうかと思います。
     また、米国の利上げ色が強くなった場合には、天秤にかけてドル高が強くなりユーロ反落もあり得ます。


     今後さまざまな議論が交わされるでしょうし、複数の当局者からの要人発言に反応して上下するものと思われますが、出口戦略への動きが更に具体的に進んでいるということは心しておく必要があります。


     米国、EUの量的緩和政策出口への道に比して、動けていないのではないかと推測される日本。このところドル円相場が徐々に下値を切り上げてきている背景には、欧米との金融政策の方向性の違いがあると思われます。

     先週は、一部投機筋ポジションが円高志向ポジションを減らした可能性も伝わり、110円が固まり、昨日は112円台に乗ってきました。勢いよく上昇している相場ではありませんが、底堅い動きで上下しながらの動きです。欧米との金融政策の差に更に市場からの注目が集まれば、更なる上値を試す展開もありとみています。


     最後は、英国ネタです。

     こちらも量的緩和政策の修正がらみです。
     英国のMPC政策決定会合の議事録開示により、利上げの早期実施の可能性が高まっていると伝わり注目されています。緩和派で著名な委員による「年内の利上げへの言及」から英国ポンドが一時大きく買われました。

     6月8日の総選挙での保守党過半数割れによる政治の不安定は、EU離脱交渉への不安を残しています。英国の利上げについては、欧米とは事情が少し違い、Brexit決定の国民投票後のポンド安によるインフレ懸念、英国からの資本流出の二点を防止するための利上げの意味合いが強いと思われます。

     このところ、相次ぐテロ事件、高層マンションの大火事、また、記録的な熱波だそうで、消費者心理の冷えも心配されますが、他の大きな動きから英国も金融政策の変化へ向かっていると言えます。


     英国のEU正式離脱に向けて、有力金融機関が欧州での中枢機能をドイツ等へ移転決定するなどのニュースも伝わり、この動きは今後も進むものと思われます。
     昨年のBrexitショックの日から1年が経ち、切り札にしたかった総選挙で敗れた現政権が今後持ちこたえるだろうか?
     また、その政権でBrexit交渉が有利に運べるだろうか?そして、その影響は?

     今後も注目していきたいところです。


     最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。


    ※6月28日東京時間11:00執筆
     本号の情報は6月27日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
     なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


    式町 みどり拝


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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