先日の9月10日はまぐまぐセミナーに参加させて頂き、9月17日は山本潤氏のセミナーに参加と大変有意義な時間を過ごさせて頂きました!
投資家というのはある種孤独な戦いを強いられていると感じる時があります。
しかし、世界は広く自分の眼を外に向けることさえできれば様々な人や出来事、現象や発見が待ち受けています。
手前勝手な感覚ではありますが想うのです。
株式投資をするということは『視る』ということだと。
株価や指標、人の推奨で判断してただ買うのではなく、『視て』欲しい。
あなたが買う株は一つの会社であり、そこには多くの人が働き、考え、創造しています。
それらを知ろうとしたり考えることが結果として投資のスキルを磨くだけではなく、人としての深みももたらすと思います。
自分はまだ青臭い考えの若造です。
株式投資によって金持ちになるだけでは嫌なのです。
金が増えただけの人生なんて嫌なのです。
人は人でしか、経験は実践でしか、磨けない。
会社に電話したり、本を読んだり、株主総会や展示会に出かけたり、セミナーに参加してみてください。
『無駄』な事なんて世の中にはありません。
今日取り上げる会社は新報国製鉄(5542)という会社です。
高機能合金の【開発・設計・製造・精密加工・販売】を一貫して手がける従業員約100名の研究開発型総合材料メーカーです。
この会社はリーマンショックの大不況で経営が一時危うくなりました。
それを大幅な構造改革、リストラを経て、今では割安高成長銘柄の一つです。
今後の同社はその成長の速度を加速させていくのを取材を通じて確認できたので取り上げさせて頂きます
ここも前回の記事で書かせて頂いた東北特殊鋼(5484)と同じく世界一の技術を誇る下町ロケット銘柄です
■相川伸夫ピックアップ銘柄フォロー
・山王(3441)2016年12月19日配信
株価560円⇒1498円(+167%)
・テノックス(1905)17年2月20日配信
株価815円⇒1192円(+46%)
・LCホールディングス(8938)17年4月3日配信
株価894円⇒1495円(+67%)
・特殊電極(3437)17年6月12日配信
株価2922円⇒3770円(+29%)
・東北特殊鋼(5484)17年9月4日配信
株価1831円⇒1912円(+4%)
LCホールディングスと特殊電極に動きがありました。
LCホールディングスは9月28日新規上場したロードスターキャピタルが同社と同じくソーシャルレンディングを手掛ける会社ということもあり、各種指標からみてもLCホールディングス見ても割安感が見直されたものと思います。
「LCレンディング」代表取締役の山中健司氏が書いているブログによると『……連結利益については上振れする可能性が高いと思われます。』と条件付きで書かれていました。
まだまだ楽しみな同社からは眼が離せませんね!
・特殊電極も高収益割安銘柄として見直されたものと思います。全体として割安銘柄の株価上昇が続いています。
■新報国製鉄(5542)の魅力
それでは本題に戻ります。
新報国製鉄にも前回の東北特殊鋼と同じく、3つの魅力を書きたいと思います。
1)気付きにくい割安性(有価証券報告書から読み解ける)
2)驚くべき高収益性(商品力の高さに裏打ちされた利益率の高さ)
3)生産能力の大幅強化と他社の追随を許さない圧倒的な研究開発力
新報国製鉄も更なる高成長を内に秘めた日本が誇るアツい企業だと考えています。
■気付きにくい割安性(有価証券報告書から読み解ける)
執筆現在2017年9月29日(金)
株価終値1577円と年初来高値更新中!!
※会社発表数値にて↓は計算(四季報数値ではない)
今期予想EPS 326.23円
今期予想PER 4.83
実績BPS 889.89円
実績PBR 1.77
今期予想ROE 36.7%
時価総額55億円
浮動株21.8%の小型株です。
↑は会社発表資料により算出された指標になりますが、連結貸借対照表にて計算される数字は簿価が使われるものと時価が使われるものがあります。
有価証券報告書の45Pにある(賃貸不動産関係)の文書に以下の数字が載っています。
東北特殊鋼の時と同様ですね(笑)
・連結貸借対照表で純資産に計上されている金額
⇒7444万円
・期末の時価勘定
⇒31億924万円
つまり、差し引き約30億3480万円ほどの含み益を賃貸不動産事業で抱えているが、それは貸借対照表には『簿価』で計上されているので、BPSには反映されていないということになります。
よって、含み益を交えて指標化すると↓のようになります。
※BPS 1806.6円
※PBR 0.87(含み益を考慮する)
直近株価は上昇を続けていますが、割安度の観点でも魅力が感じられます。
■驚くべき高収益性(商品力の高さに裏打ちされた利益率の高さ)
冒頭で触れた通り、この会社はリーマンショックで大幅な構造改革を余儀なくされました。
辛い経営判断だった事でしょう。希望退職を募り、人員の再編と工場の集約をし、経営方針の転換を経て今日の新報国製鉄があります。
新報国製鉄は捨てたのです。
・多くの企業に使われる汎用品の製造を。
・利益率の少ない製品の受注を。
・自社でなくとも作れる製品の製造を。
目指したのは『自社でのみ製造が可能なオンリーワンの合金メーカーになること』でした。
同社は今や『世界で最も精密な機械』と言われる露光装置(半導体や液晶、有機ELを製造する装置)に欠かせない合金のトップメーカーになったのです。
露光装置の要求精度誤差は100万分の6mmとも言われ、想像も出来ない精密さが装置には要求されます。
世の中のありとあらゆる物質は温度によって目には見えないレベルで膨らんだり縮んだりしています。
そうしたわずかな熱膨張すら許されない神の領域に達したテクノロジーによって、ブラウン管テレビが液晶テレビになり、今度は超薄型の有機ELテレビになろうとしています。
半導体も高速化&大容量化&小型化が可能になり、500KBのフロッピーディスクが4MBのメモリーカードになり、今は128GBのマイクロSDとなってきたわけです。
技術革新を可能にしたのは当然、それらを製造するための装置が出来たからです。
・精密な装置を作るためには様々な部品が必要!
その中で根幹になるのは土台であり骨組みの金属です。
わずかな熱でひずんでもダメ!!しっかりと装置の重量を支える剛性も必要!
新報国製鉄はそうした需要をいち早く察知し、研究・開発によって熱膨張が起こりにくい合金『低熱膨張合金(インバー合金)』の開発・商品化及び営業に尽力し、低熱膨張合金における世界トップの会社となりました。
現在、売り上げの約7割ほどが低熱膨張合金であり、他社が真似できない高付加価値商品であるがゆえに利益率も非常に高いです。
その証拠に四季報の全33業種の鉄鋼に関して全市場でスクリーニングをかけると47社がヒットし、比較してみると以下のような順位となります。
-鉄鋼業種47社中-
・前期売上高経常利益率 2位
・今期売上高経常利益率 2位
・前期実績ROE(%) 1位
・今期予想ROE(%) 1位
・今期予想PER 1位
・来期予想PER 6位
・時価総額の小ささ 4位
今期予想のROEとPERの数値は『のれん』が含まれているので参考にしかなりませんが、47社中でもかなりの高収益企業であることがこれによって伝わるかと思います。
■生産能力の大幅強化と他社の追随を許さない圧倒的な研究開発力
・『2029年(創立80周年)売上100億円企業を目指して』
※2017/2/10
http://www.shst.co.jp/wp-content/uploads/2017/02/chuki20170210.pdf
上記、中期経営計画通り、今年2017年~2019年にかけて大規模な設備投資計画が進行中です。
これにより鋳鋼生産能力は、月100tから1.5倍の150tに大幅増強されます。
更に生産効率向上のための施策が随所に盛り込まれているので、より一層の営業利益率のアップにも期待できます!
この三か年の設備投資が完了すれば、売り上げ100億を達成する生産能力が整います。
更に『研究開発型メーカー』を自負する同社は100人余りの社員の内1割が研究開発に従事しており、社員に学位を取らせる気合いの入れよう。
・『研究開発機能を充実』
http://www.shst.co.jp/wp-content/uploads/2017/08/20170829.pdf
そうした研究開発により、液晶製造用の露光装置向けが大部分を占めていた低熱膨張合金でしたが、今後は他の需要の創出に向けて営業がスタートしています。
現在重点拡販を狙っているのはマイナス196度でも熱収縮しない事を売りにした【宇宙関連事業】。
高精密な成型を要するが同時に高剛性が求められる【航空機用部材のCFRP成型金型】。
・『究極のゼロインバーを開発』※2017/3/29
http://www.shst.co.jp/wp-content/uploads/2017/03/201703292.pdf
・『超高剛性のゼロインバー合金 新報国製鉄が実用化』※2017/4/4
http://www.shst.co.jp/wp-content/uploads/2017/04/20170404.pdf
↑上記の技術はすでに確立、量産納入が始まっています。
今はまだ売り上げに占める割合は少ないですが、オンリーワンの同社は海外に対しても既に営業を強化しています。
-主な取引先-
新日鐵住金(株)
(株)ニコン
キヤノン(株)
不二越機械工業(株)
JFEスチール(株)
山陽特殊製鋼(株)
エヌケーケーシームレス鋼管(株)
パラマウント硝子工業(株)
東日本旅客鉄道(株)
(株)ジェイテクト
ローム(株)
(株)IHI
(株)神戸製鋼所
日本製紙(株)
王子製紙(株)
三菱重工(株)
JAXA(宇宙航空研究開発機構)
低熱膨張合金以外にも『がっちりマンデー』で取り上げられたシームレスパイプ(石油掘削で使用)を製造する耐熱鋳鋼で出来た圧延工具などにも同社の技術が輝いています。
■新報国製鉄の未来
現在、ニコンとキャノンが液晶製造装置においては世界シェアを独占(最新の海外データでは6:4)しています。
半導体製造装置に関してはオランダのASMLがほぼ単独首位に近づいており、ニコンは苦戦を強いられています。
こうしたことから、今後の動向を見通すのは至難の業であると言えます。
しかし、リーマンショックから会社を見事立て直し、大企業相手に一切値下げをせず、むしろ値上げ要求を貫き通せる会社へと導いた。
間違いなく凄腕の経営者である成瀬社長は生産能力&生産効率アップの大胆な設備投資の道を選びました。
それは今後の有機EL、液晶製造の露光装置の需要が伸びるという確信と、潜在需要の掘り起こしに対する同社の強い自信の成せる決断でしょう。
現在、株価は年初来高値を更新して、依然好調です。
短期の株価の高い安いはテクニカル投資の方にお任せするとして、この会社の成長に期待する投資は『買い』でしょうか?『売り』でしょうか?
低熱膨張合金に関して新報国製鉄を追いかけている会社が一社あります。
2014年に低熱膨張合金の開発のPRによって、その会社の株価は一時3倍にもなりました。
現在、その会社の低熱膨張合金の売り上げは取材で確認したところ数億程度のようです。
新報国製鉄は『極低熱膨張合金及びその製造方法』という特許を2017年08月30日に取得しています。
内容から判断するに記事になっていた『究極のゼロインバー合金』の物だと伺えます。
同社の性質上『愚直にお客様に喜ばれる製品を提供する』という姿勢なので、そうしたPRは出てきません。
どちらの商品の方が製品価値が高いのかは私には判断できません。
ですが、低熱膨張合金の売上実績と生産能力では新報国製鉄が二回りは引き離しているようです。
新報国製鉄の企業情報の経営理念のページには、ヘルメット姿で溶鉱炉の前に立つ成瀬社長の横顔と共に5つの理念が書かれています。
その4つ目にこんな一文がありました。
『お客様に満足頂ける価値ある製品で、国と社会に貢献する』
この会社の名前の由来はどこにも書かれてはいませんが、
【世界が求める『新』しい合金を『製鉄』して、『国』の発展に『報』いる企業であり続ける】
…という意味なのかと勝手に想像してしまいました。
自分の会社の利を考えるのは当たり前ですが『国』という文言が出てくるのは同じ日本人として背筋がシャンとする想いがします。
これからも日本のモノづくりを応援していきたいと思います!!
最後まで長文をお読みくださりありがとうございましたm(_ _)m
それではまた。
『全力全開全力前進!!!』
(相川伸夫)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)