株価には行き過ぎはつきもの。
 上がり過ぎれば売られるし売られ過ぎれば買われる。

 売られ過ぎたところを買い、買われ過ぎたところを売れば万事がうまくいくとは思いますが、ことはそう簡単ではありません。

 人間は欲との戦い。
 買われ過ぎているとは実感してもまだ上がるのでは・・、という欲が出て売らないで放置すると、悔しいほど下がりますし、反対に売られ過ぎだと感じてもまだ下がるのでは・・・、という欲が出て買わないで放置すると上がってくることもよくあります。
 皆さんもこうした経験を持たれているのではないでしょうか。


 「天井売らず、底買わず」という投資の格言があります。

 上下5,6%ぐらいは人にあげて内容をよく吟味しながら株価よりも内容重視の投資や時間分散の鉄則をもって運用にあたられる投資家の皆さんの日常の努力に期待したいと思います。


 それにしても株価の変動というのは不思議です。

 本日は摩訶不思議な個別銘柄の株価の変動について直近の事例を取り上げます。


1.ITコンサル系V社の場合


 年末になると急いでいる資金が多いのか株価はめまぐるしい変動を見せがちです。
 これも偏に短期投資家のなせる業と言えます。

 ストップ高を演じた後に2日間で高値から16%余りも下落したV社の株価も激しい変動に見舞われました。

 V社は昨年東証マザーズにIPOしました。IPO後の株価は一時公開価格の1.8倍、初値からは1.6倍までありましたが、その後は調整が続き高値から6割以上も下落してしまいました。公開価格と比べても3割以上も下落した時期がありましたが、このところは徐々に上向きつつあったのです。

 先々週までの株価変動は小幅なものでしたが、先週水曜日になるといきなりストップ高となり買い物を残す格好で期待を残しました。多くのストップ高銘柄は比例配分狙いの買いで買い物を残して終わることが多いのですが、V社株も比例配分狙いの買いも入って、ストップ高買い気配のまま、比較的大量の買い物を残して木曜日を迎えました。

 確かに寄付前にはストップ高の買い気配が見られ、これは今日もストップ高になるのではとの淡い期待が多くの投資家の胸にはあったのかも知れません。

 ただ、現実にはそう甘いものではなく、前日終値の4.7%上で寄り付き、その後はわずか1.6%上値を追う場面が一瞬あったのですが、残念ながらその後の株価はどこかのスキー場のような傾斜で下落が始まりました。
 高値をつけた日の終値は前日の終値より6%下落。反発の期待があったその翌日は更に6%ほど下落してしまいました。

 時間を追って徐々に下落していくパターンで買い物に売りがぶつかっての株価形成が見られました。

 ここで注目したいのはV社の発行済み株式数です。

 現在V社の発行済み株式数は300万株(売り出し株数は120万株)で、時価総額は25億円前後です。私はこの時価総額水準にとても興味を持っています。
 通常のIPO企業では時価総額がこの程度の水準に留まっていることはないからです。

 そもそも同社は昨年6月のIPO時に経常利益3.5億円を見込んでいたのですがその前提で公開価格が決められたとすれば、その後の業績下方修正(2.2億円)は投資家の期待をいきなり裏切った格好となったのです。

 今期の予想経常利益は更に減益となり、これを横目に多くの投資家は上場時に投資した株を投げてきたことになります。

 上場後1年を経てV社は持ち株会社に変わり、今後のグローバル化(米国、タイに子会社設立)やR&D体制に備えています。
 IPO後に技術系の企業を連結子会社化してグループ戦略が始動し売上のスケールはアップ。但し、利益はそれほどまだ出ていないために上場前の経常利益水準には至っていないのが投資家には不満となっているものと考えられます。

 売出株数120万株は金額では13億円。
 3月末の株主数は2000名を超えましたので株主1名当たりの平均投資金額は64万円となります。株数ベースでは平均600株になります。
 前期末浮動株比率は26.4%ですので浮動株は77.5万株(対象金額は6.6億円)です。現在は先行投資期にあたり今期は無配の状態ですが、来期は初配の可能性がありますので、投資家は中長期的な成長に期待して保有するスタンスが求められます。

 直近の出来高増では新たな株主が登場したものと推察されます。

 先週の出来高は180万株で発行済み株式数の6割に相当します。
 あきらめムードだった投資家にとっては驚きの短期急騰劇を演じた訳ですが、その後の元の木阿弥への株価下落も驚きなのかも知れません。
 思い切って高値圏で売却できた投資家がいれば買い戻すこともでき、上昇のスタート水準(810円)まで値を消すのかどうか、今週も驚きの展開になるのか注目したいと思います。


 先行投資期にあるV社は業績で評価する段階には至っていません。
 テーマ性では人材不足の折、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、Chatbotといった成長分野のテーマを基盤にして事業展開を行っています。ですからテーマ性で言うとこれからの時流に乗りそうですが市場での評価は低い状態です。

*RPAとは
 ルールエンジン、画像認識、機械学習、AI(人工知能)などの認知技術を活用した、ホワイトカラーをターゲットとした業務の効率化・自動化の取り組みや仕組みの総称

**炎の投資情報(有料)のメルマガでは更に詳細内容や投資作戦をお伝え申し上げますので宜しくお願いします。



2.IPO後5か月目の株価急落を演じたC社


 市場で人気の消費関連銘柄となったC社は株価の変動が結構激しいのが特徴です。リスク要因が意識されるのか評価がまちまちで定まっていない点が株価の変動につながっているようです。
 株価が上昇傾向にある間はポジティブな評価がなされているのでしょうが、一旦何らかの理由で株価が下落傾向になると短期投資家はネガティブな評価をしてしまいがちです。

 筆者は地方に所在するこの企業の本社に上場後、取材を敢行し社長取材も行っています。ビジネス柄見かけは派手ですが情熱的な経営者でした。
 IPOしたばかりで評価は定まっていないようですが、こうした波乱の株価変動も未来に向けての通過点に過ぎない出来事と言えます。

 特許化された製品をパーツで世界に販売していく事業展開は興味深いのですが、現実にはまだ収益水準が低いので投資家には不安感もあるのかと思います。評価が定まっていないことを今後のIR活動でカバーしてほしいと思います。
 この時期C社のテレビCMもよく見かけるようになりました。

 C社は知名度向上に向け今期は初のTVCMを流し始めたのです。この先行的な費用投入が結果として1Qの利益が赤字になった背景なのですが、詳細はまた改めて取材して確認しようと考えています。

 何らかの理由で売りたい投資家の売りとここはまた投資チャンスと見た投資家の買いがぶつかり大商い。1日で発行済み株式数の5%以上の出来高があったことになります。おそらく1日で何回も売買された投資家の存在もあったかと思いますが、朝方の気配では前日比400円安(ストップ安)の可能性もあったのでそこまではいかずに終わったのはC社の株を買いたい投資家の存在の賜物ではあります。

 四半期決算に過剰反応してリスクオフされた投資家の皆さんは、どこまで株価が下がるのか確証があっての売りを出されたのかどこまで下がるかの不安感の中で大幅安の中でやや慌てて売りを出されたものと考えられます。
 通期業績はどうなるのかを改めて確認しながらもう少し冷静な対応に努めて頂ければと思います。

 因みに上場来高値(1810円)と安値(980円)の中間値は1395円。直近の高値(1683円)と安値(1003円)の中間値は1343円。株価に行き過ぎはつきもの。下げ過ぎればまた戻るのが常ではあります。
 ファンダメンタルズが不変であれば1300円台の株価の位置は居心地が良さそうですが果たしてどうなりますか。今週の下げ3日目から4日目が注目されます。



 以上2銘柄(V社、C社)の株価は大きく乱高下を見せたのですが、今週以降は落ち着きを取り戻すものと思われます。
 一部の投資家の皆さんはささいな業績変動を見出して売りを浴びせがちです。
 それは多くの短期投資家(推定300万人)がこの市場で活動しているためでもあります。相場は短期的な波乱を経て、落ち着きを取り戻すことになります。

 皆さんの冷静な取り組みを期待しております。


(炎)


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