前回に引き続き、1月29日に閣議決定された税制大綱の中身をチェックしていきましょう。今回は法人課税についてです。

 今回の法人税の部分改正では、民間の投資促進や雇用促進を意図するような改正を行っています。その内容を確認してみましょう。

1.民間投資の喚起と雇用・所得の拡大

・国内の生産等設備投資額を一定以上増加させた場合にその生産等設備を構成する機械装置の取得価額の30%の特別償却又は3%の税額控除ができる制度を創設

 国内の新規設備投資に関して、特別償却と税額控除を認めて、投資を促そうという試みです。
 私の周りでも昨年の太陽光パネルの特別償却(100%)に関しては、節税目的で利用される方が大変多く存在しました。そのことを考慮すると今回のように償却率の変化で新規投資を促すと言うコンセプト自体は効果があるものだと考えます。

 あとは30%の特別償却と言う数字が中途半端な感じがしますが、それでどこまで効果があるのかという事なのか注目しています。


・環境関連投資促進税制について、その適用期限を2年延長するとともに、即時償却の対象資産にコージェネレーション設備を追加

 こちらはエネルギー環境負荷低減推進設備を導入した場合の特別償却に関する税制の延長です。
 先程述べた太陽光パネルの即時償却という制度は節税目的で幅広い会社で大変積極的に利用されていたと感じています。太陽光パネルだけではなくその他設備 でも制度としては利用されているようですが、他設備に関しては実際の利用状況は分からないので、景気に対する影響も不鮮明です。


・研究開発税制の総額型の控除上限額を法人税額の20%から30%に引き上げるとともに、特別試験研究費の範囲に一定の共同研究等を追加

 これは、文字の通り研究開発費について税額控除を認める、またその上限を引き上げると言う話です。メーカーにとってはとても良い制度だと思いますが、このことで研究開発費を増やそうと言うインセンティブがどの程度強まるのかはよくわかりません。


・労働分配(給与等支給)を一定以上増加させた場合、その増加額の10%の税額控除を可能とする所得拡大促進税制を創設するとともに、雇用促進税制を拡充し税額控除額を増加雇用者数一人当たり20万円から40万円に引上げ

 これは、従業員に対する給与を増やしてあげると税額控除が受けられるようになるという制度です。しかし、残念ながらこの制度があるからと言って積極的に給与を引き上げる企業と言うのはごく少数ではないでしょうか。
 このような税制優遇の制度を考えるぐらいであれば、雇用者側の立場から問題になっている労働者に対する雇用や給与の柔軟化(給与の上げ下げや解雇に関する規制を緩めること)を実施していった方が雇用や給与に与える影響は大きいのではないかと思います。

2.中小企業対策・農林水産業対策

・商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等が経営改善に向けた設備投資を行う場合に30%の特別償却又は7%の税額控除ができる制度を創設

 これは中小企業向けの優遇制度です。経営改善に取り組む企業が設備投資を行う際の特別償却と税額控除の制度ですが、こちらも効果は疑問です。そもそも、 経営改善に取り組む企業は業績が悪いわけでして、その企業がどの程度法人税を支払っているか?(赤字企業であれば法人所得税は支払わない)ということを考 えると、この税制をもって、新規投資のインセンティブが働くと言う事は考えにくいのではないかと感じます。

○中小法人の交際費課税の特例を拡充(中小法人の支出交際費800万円まで全額損金算入)

 これは、効果あるでしょうね。交際費の損金不算入と言う制度がなくなれば、中小企業で黒字の会社は多少なりとも交際費支出が増加すること間違い無しだと 思います。これは中小企業だけではなく大企業にも拡大しようという話も上がっていますので、そちらにも波及すると効果は大きくなると思います。
 あたりまえですが、サラリーマンの人たちは自分の金で何かするのは嫌がりますが会社の金で交際できるとなれば積極的に使うものですから。


 以上法人課税の変更を見てきました。法人税においてはやはり償却の制度と損金算入の制度を変更することで企業行動を大きく変化させることができます。今 回見てきたところではやはり中小企業の交際費の損金算入の変化が企業行動に一番大きな変更を与えると思いますし、これが大企業にも適用されることを望みま す。


株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一

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