産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
8月号連載記事
■強みに集中し、弱みは無視しろ
●企業は強みによって競争に勝つ、弱みでは無い
「企業は強みによって競争に勝つ、弱みでは無い」という言葉がドラッカーの考えを雄弁に物語っています。ただ、神が与えた人間の本能は、多くの人々に全く反対の行動をとらせます。
役所に申請に行って「あっ、10頁の3行目ですけど、「ケ」の横線がちょっとだけ枠からはみ出ているので、再作成して提出してもらえますか?」と言われるような官僚主義は別にしても、「他人の欠点や間違いを見つけ出す才能」は、ほぼ万人に公平に与えられています。読者の方々も、上司、あるいは部下の欠点の一つや二つ上げるのはわけないことでしょう。あるスポーツ紙はだれが日本の首相になってもけなすことで有名ですが、どれほど優れた宰相でもスポーツ新聞のネタにできるような欠点は持っているということです。
ドラッカーは、「欠点を多大なエネルギーを費やして改善してもせいぜい平均になるだけだ。しかし、それと同じエネルギーを長所に費やせばいとも簡単に一流が超一流になる。なぜなら、組織にとって得意なことをさらに得意にするのは難しくないからだ」と述べています。そして、ポーターも「平均点では市場に勝つことができない」と、トレード・オフによって強みに集中することを唱えています。
ところで現在は、通信・交通、さらにはインターネットなどの発達によって、商圏がどんどん拡大しています。
今は、少し勢いが衰えていますが、マイクロソフトのウィンドウズやインテルのCPUはあっという間に世界中の市場を支配しました。検索エンジンではグーグルが圧倒的な力を持っています。このような「一強多弱化」は、ますます進んでいくのが必然です。
もちろん、「一強多弱」ですから、多弱として生きていく道も当然あります。例えば、一強のグーグルが対応するのが難しいような、特定地域の地元情報に特化したような検索サイトです。しかし、多弱であっても「平均的」であっては、すぐにより優秀なライバルに打倒されてしまいますから、一強となりうる特別な強みを持っていなければなりません。
このような根本的な理解が無く、いつも失敗しているのが地方(商店街)の振興です。「何か他にない特徴を・・・」などと、コンサルタントなどが色々アイディアを出しますが、「地元の強み」に立脚しない他から持ってきたアイディアはうまくいきません。提供するサービスや商品が、いくら努力しても「平均点」にしかならないからです。当然、地元固有の強みを見つけ出すしかないのですが、これが簡単ではありません。誰もがわかるような強みならとっくの昔にビジネスになっているからです。
冒頭で述べたように「神は人間に、他人の欠点を見つける才能」は、平等に与えたが「他人の長所を見つける才能」は、ごく一部の人間にしか与えなかったのです。
●多角化戦略は逃げ口上
バフェットは、「偉大なる企業は一つの事業に集中して成功してきた」と述べますが、これは、ドラッカーの考えにも通じます。限られた少数の強みに、資源と人材を投入しなければ、企業は競争に勝ち残っていけません。どれほどの巨大企業であっても、資源と人材は無限に持っていません。
トヨタは巨大企業ですが、自動車関連ビジネスに集中しています。また、ブリジストンはタイヤ、ニトリは家具、新日鉄は鉄鋼、メガバンクは金融に集中してビジネスを行い発展してきました。バフェットが投資するアメックスは金融業(祖業はその名の通り運送業ですが・・・)、P&Gは日用品、シーズ・キャンディはチョコレート(米国の英語ではキャンディにチョコレートが含まれる)、ネブラスカ・ファニチャーマートは家具に集中してきました。コカ・コーラは、コーラを中心とした飲料に注力してきましたが、一時迷走期にエビの養殖にまで手を出したことで有名です。もちろん、失敗しました。当然の結果といえるでしょう。
(続く)
続きは「産業新潮」
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8月号をご参照ください。
(大原浩)
★大原浩の執筆記事<米中貿易戦争「中国の負けは最初から確定している」その理由は…国際投資アナリスト・大原浩氏が緊急寄稿>が7月18日(水)午後発売の夕刊フジ1面に掲載されました。
ZAKZAK(夕刊フジネット版)
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★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
(JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/
★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。
(毎週木曜日連載)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)