書評:トコトンやさしい海底資源の本
大高敏男 乾睦子 著、 日刊工業新聞社
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「海底資源」というキーワードをかなり幅広く解釈した内容ですが、その範囲の広さにもかかわらず、コンパクトかつ充実した内容だと思います。
特に第1章、第2章で鉱物に関する基礎知識の解説(担当:乾睦子)、第3章~第6章では、海洋や海底の資源やエネルギー変換技術、採掘技術、探査技術についての基礎知識の解説(担当:大高敏男)という構成は良いと思います。
海洋資源は大きく鉱物とエネルギーに分けることができるかと思いますが、2004年度の家庭用エネルギーの内訳は<電力44.9%、石油24.3%、都市ガス17.5%、LPG12.2%>です。また、業務用エネルギーの消費量も、おおむね同じで電気が全体の約半分を占めます(しかも、もし日本中の車が電気自動車になれば、電力使用量は現在の10倍になるといわれています)。
石器時代、青銅器時代というような歴史分類で言えば、現代は間違いなく「電気時代」です。もし大規模な太陽嵐などで1週間世界中の電気が使えなくなれば、現代の文明はアトランティス大陸のように崩壊するでしょう。
本書でも、「電気」にかかわる資源に多くのページを割いており、海底熱水、潮汐エネルギー、海流・潮流エネルギー、海洋温度差、塩分濃度差など数多くの発電手法に言及していますが、注目されるのは
1)波浪エネルギー
2)洋上風力
3)海洋バイオマス
です。
1)の波浪エネルギーは、波の高さ(上下運動)を利用する発電ですが、一般的に海洋という特殊環境から大規模な設備が必要とされる海洋発電の中では、比較的小規模・簡便に実現可能です。極端に言えば海にブイを浮かべるだけで発電が可能です。
2)の洋上風力発電は、陸上での風力発電に比べて、風力が安定していることと、強い風力を得ることができるのが強みです。風力発電において、発電量は羽根が受ける風速の3乗に比例します。つまり、風速が3倍になれば発電量は27倍になるのです。
ちなみにバフェットは、傘下のエネルギー会社(バークシャー・エナジー)を通じて、風力発電の設備に多額の投資をしています。もちろん、太陽エネルギーの変換効率が10%台で太陽光パネルの廃棄と設置場所の開発で環境を破壊する太陽光発電よりははるかに賢い選択なのですが、陸上の風力発電については将来の不安があります。
3)海洋バイオマスは、かなり有望だと思います。陸上のバイオマスでも、既存の火力発電所等と同様に「24時間一定の発電量を維持できる」という強みがあるのですが、海洋バイオマスには「藻」という心強い味方がいます。
世界の海藻の資源量は推定で1800万トン以上といわれるのですが、約7.2×10の9乗立法センチ(1トン海藻から400立方センチのメタンガスを生成すると考える)ものメタンガスが生成されます。
しかも、メタンガス1立方センチ製造するコストは10円から30円程度と試算されるので、実用化が期待されます。
また、海藻の養殖は決して難しくないことも利点です。
(大原浩)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)