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書評:市民政府論
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書評:市民政府論

2019-02-22 14:35


    書評:市民政府論
       ジョン・ロック 著、光文社古典文庫
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    ●法律が無ければ自由は無い

     そもそも、政府が国民(臣民)に対して、指示命令を行い服従させることが正しいのか?その根源的な問いかけに対して、330年近くも前(統治論第2編=市民政府論の発刊は1690年)に明確な回答を与えたのが本書である。

     本書で定義される自然状態というのは、実のところエデンの園のような楽園では無い。現在で言えば、アフリカのソマリアやナイジェリアのような市民に殺戮が繰り返される無政府状態の地域。あるいは西部開拓時代のアメリカのように無法者が横行し、善良な人々が財産(生命・自由・資産)を脅かされる暗黒時代である。

     だからこそ、人々は社会のルールを決め、そのルールに従って国民の財産(生命・自由・資産)を守る統治者の支配に従うことを望んだのである。

     誤解されがちだが、(ロビンソン・クルーソーのように絶海の孤島で暮らさない限り)「(何をやってもかまわない)完全な自由」などというものは存在しない。集団の一員として暮らす限り、他人を無視できないが、その他人にも当然「完全な自由」が与えられる。したがって、その他人は、いつでも好きな時にあなたを殺す自由を持っていることになる。

     だからこそ「殺人者は罰せられる」という法律があってこそ、あなたの自由は保障されるのである。無政府主義は、人間をとてつもなく不自由にするだけである。「法律」こそが国民の自由を保障するのである。


    ●政府の横暴をどのように止めるか

     法の執行機関である政府は本来国民の信託を得て成立し、法律によって制御されなければならない。しかし残念なことに、大部分の共産主義(独裁)国家は、国民の信託を受けずに、暴力で政権を奪い取っている。だから、異論を唱える国民を拷問したり処刑する必要があるのだ。大多数の国民が、政権の継続を望んでいないのだから、ある意味当然である。

     例えば、民主主義中国=中華民国(台湾)から暴力で政権を奪い取った共産主義中国は、立法主義がきちんと機能していない(人治主義)国であり、国民の自由も保証されていない。天井の無いアウシュビッツ(ウイグル)の人々を中心に共産党員以外のほとんどの国民が圧政に苦しめられていることを見ても、法律の重要性は明らかである。


    ●国民には政府を倒す権利がある

     確かに、国民の信託を受けた政府が本来の目的を逸脱し、国民の財産(生命・自由・資産)を侵害するのは、何も共産主義中国だけでは無い。北朝鮮をはじめとする独裁国家は現在でも多数ある。

     そのような、国民の信託を受けていない政府が国民の絶対不可侵の権利(自然権=生命・自由・資産)を侵害した場合には、国民と政府との信託契約は解除され、国民はその政府を打倒し、新しい政府と契約を行うことができるという<契約自由の原則>が本書の肝である。

     執筆された時代を考えれば、極めて革新的な理論だが、いまだに世界中の多くの国々でこの国民と政府の間の<契約自由の原則>が実現していないのは悲しむべきことである。

     もちろん、先進国の多くでは、国民の血が流されなくても平和的に<政権交代>が行われる。普通選挙は、色々な問題点も指摘されるが、現在考えうる限り最高の統治方法であり、先進国・民主国家においては死守すべきものである。

     また、トランプ氏(米国)が判断したように「共産主義中国は永遠に民主化されない=普通選挙が行われない」のであれば、中国人民は共産主義政権を打倒する固有の権利(自然権)を持つ。

     現在、少なからぬ中国人民がその自然権を行使しようとして立ち上がっているが、中国共産党の弾圧はゲシュタポ並みである。また、特に天井の無いアウシュビッツ(ウイグル)は、目も当てられない惨状である。

     我々日本人は、このような惨状を直視し、アジアの民主化のために、勇気を持って立ちあがった人々を、応援・支援すべきである。


    ●国家には自然権としての自衛権がある

     もう一つ注目すべきなのは、自然権としての自衛権である。個人レベルで、ロックは次のように述べている。

    1)自分の家に誰かが侵入してきたら、即座に殺してもかまわない。被害者は、その侵入者が単なる物取りなのか殺人者なのかを判断する余裕など無く、自分の生命を守るための自衛行為として相手を殺害することは正当防衛
    (緊急避難)である。

    2)しかし、例えば自分の親族が殺された場合、殺人者を自分の手で殺すことは認められない。その処罰の権限は、国民から政府に依託されたものであり、個々の国民が行使することはできないし、緊急性も認められない。

     例えば欧州で死刑が廃止されているにも関わらず、容疑者を射殺することが認められているのもこの<緊急性>の要件を満たしているからである。容疑者の行動を抑制しなければ、他の市民の財産(生命・自由・資産)が侵害される場合には、緊急避難としての自然権の行使が許されるのである。

     この考えを世界レベルで考えれば次のようになる。

    1)統治の最上位の形態は、現在のところ国家である。国連などの国際機関が存在するが、いずれも単なる「業界(国家)団体」であり、加盟社(国)に対して何ら強制力を持たない。つまり、国際政治というのはどれだけ立派なことを唱えても自然状態、すなわち西部開拓時代の無法地帯なのである。

    2)したがって、憲法第9条にどのような文言があろうと、日本国民の自然権である<自衛権>は侵されない。自然法は、憲法を含むどのような法律よりも上位にある。

     したがって、共産主義中国が日本の領海(領空)を侵犯(家に進入)すれば、自然権を持つ日本国民は憲法9条など関係なく、共産主義中国(侵入者、殺人者)を壊滅(殺害)する権利を保有する。

     特に、共産主義中国はウイグルを天井の無いアウシュビッツにした実績があり、日本国民はそのようなリスクを回避する緊急避難のために自然権を行使して共産主義中国を壊滅させることができるのだ。


    (大原 浩)

    ★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
    (JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
    ★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。
    (毎週木曜日連載)


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    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
     ては御自身の責任と判断で願います。)
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