長年アナリスト活動をやっていると様々な出来事に遭遇する。
企業は生き物。時代とともに業績や業態は変化していく。その采配を振るう経営者にも変化が訪れ、引退の時期を迎えることも世の倣い。
その経営者に愛着を持った投資家は長年のつきあいに終止符を打つこともある。アナリストは投資家と企業をつなぐ仲介役とも言える。企業をリードする経営者のパワーを感じて評価することもあるし、人となりに思いを馳せてレポートすることもある。
企業を創業して成長させてきたカリスマ経営者が長年育ててきた企業に別れを告げる時は、その経営者にとっては文字通りの死を意味すると言っても良い。
企業の創業から成長、上場を経て後継者に経営をバトンタッチするまでの歳月はどれほどのものなのか。その思いを察するに涙抜きでは語れない。
そうしたカリスマ創業経営者は私の周りにもいた。
その一人は夢真ホールディングスの創業オーナーだった佐藤会長。
佐藤会長に初めてお目にかかったのは2003年9月の上場前後。
取材してレポートを書くためだった。
池袋サンシャイン内の本社に足を運んだ私の脳裏に焼き付いている佐藤会長の姿が思い出される。その時、佐藤会長は積極的な経営で株式市場でも話題の人物だった。
M&Aを積極化させ業績の拡大に努めたものの、その後はそうしたM&Aの頓挫で業績が停滞。事業戦略を思い切って転換したことが投資家の疑心暗鬼を呼んだが2011年の東北大震災を機に一気に業容が拡大し再び積極経営に転じた。
時価総額100億円以下だった同社の時価総額は2018年には1000億円を突破した。後継者であるご子息(現社長)に経営をバトンタッチして自らは会長に退いた。
その佐藤会長が2月に亡くなったとの話は個人的な関係者から聞くことになった。会社からは一切のリリースはなかったため、外部の関係者も知る術もなく今頃になってその話題が出てくるくらいだ。
いかにも佐藤会長らしい幕引きだったように思う。
もう一人はシロアリ駆除でお馴染みのアサンテを創業した宗政社長。
私と故郷が同じで佐賀県伊万里市。決算説明会などではいつも朴訥なしゃべり口でとても誠実さを感じた創業オーナーだった。
その宗政社長はサニックスの先代の宗政(伸一)社長とは兄弟の関係。私はかつてサニックスが上場した際にお目にかかったことがある。
お二人とも伊万里では有名な酒蔵である宗政酒造が実家なのだが、どういう訳かお二人の仲はさほど良いとは言えなかった。弟であった先代のサニックス宗政社長は西のエリアからシロアリ駆除のビジネスを展開。お兄さんのアサンテ宗政社長は関東から西に向かってビジネスを展開してきた。
いずれは西の九州にエリアを拡大するとしていたアサンテ宗政社長の思いは叶わず、あの世に旅だたれた。故人の思いは、後に残った経営陣に委ねられたが、コロナ禍で上場来初めてと言って良い停滞の局面を迎えている。
創業者の死を悼んでいずれもそれまでの元気さが消え、株価は調整しているが、後継者に経営を委ねられた今、復活に向けた施策に大いに期待したい。
それとともに心よりお二人のご冥福を祈りたい。
(炎)
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