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足元で欧米を中心にコロナパンデミック第2波が襲い掛かり、米大統領選を前に株式市場も動揺し始めました。
冬場の乾燥しやすい時期にウイルスが活発化することはあらかじめ予想されていましたが、とりわけ西側諸国に感染拡大が偏っていることは誰の目から見ても明らかなことと思います。
今後の株式市場を展望するにあたり、一連の新型コロナウイルス騒動だけでなく、米大統領選の混戦、米追加経済対策をめぐる2大政党の泥仕合、英国のブレグジット交渉の難航、といったところに米中対立が市場に覆いかぶさっていることをふまえつつ、日本株の優位性を探っていくことが重要となるでしょう。
まず新型コロナウイルスに関して、日本は比較的その脅威から遠ざけられたところにあると言え、ある意味政府がコロナ対策に有効な一手を打ち出さずとも感染拡大が抑制され、経済活動正常化への道程を歩んでいるとみられます。
また、米大統領選に関してはトランプ米大統領、バイデン候補の双方が互いに舌戦を繰り広げたテレビ討論会もしきりに発表される世論調査の結果もさほど情勢を変化させるようなものでなく、米民主党の息がかかったマスメディアの偏向報道によって4年前と同様に実態が覆い隠されているのが現状です。
おそらくは次期大統領がどちらに転んでも、あるいはどちらでもない誰かが急に表舞台に登場して新大統領に就任しようとも、株式市場にとってみれば何ら関係なく上昇再開のきっかけとなるに違いないでしょう。
なぜそう考えられるのか?が重要なポイントになるわけですが、そもそもの相場サイクルとしては2018年1月の段階で日本の株式市場、景気循環ともにピークを打ったという認識から、2018年10月の米中貿易摩擦によって景気後退が決定的なものになりました。
そこから今年2・3月のコロナショックによって株式市場は大きな急落に見舞われると同時に、4-6月GDPは戦後最悪な数値を記録して、株価および企業業績はそれぞれ深刻な打撃を被ったわけです。
これらの背景には様々な金融市場の複合的要因が重なっていますが、極めて重要なのは景気、すなわちヒト・モノ・カネの動きを各国政府が強制的に止めたという一点に尽きます。
元々、米中貿易摩擦などでモノの動きが停滞、トランプ政権下における中国およびEUをはじめメキシコやカナダといった諸外国との貿易に関税を課すといった政策に加え、グローバリゼーションが進む中での国際的な金融資本ネットワークを断絶させ、マネーロンダリング(資金洗浄)などに手を染める犯罪組織(麻薬・密売・人身売買…etc)を強力に抑え込み、カネの動きを封じ込めました。
そして最後の仕上げともいうべきものが、コロナパンデミックの演出によるヒトの動きの制限、すなわちロックダウン(都市封鎖)や経済活動自粛を促す緊急事態宣言が各国で打ち出されたことで、ヒト・モノ・カネといった経済の循環をストップさせたことによる人為的な災害であったことに他なりません。
各国政府はその代償として、コロナ対策の名目で米国、欧州をはじめ巨額の財政出動に踏み切るとともに金融政策をフル動員した対応策を敢行、前代未聞の全世界2000兆円近くにものぼる資金供給を行い、未曾有の“カネ余り”現象を引き起こした現状へとつながっています。
ところが株式市場では強力な政策対応から期待された資金流入は、コロナ環境下でいわば特需の恩恵を享受する一部のハイテク銘柄へと集中し、歪な市場形成につながっただけでなく、債券市場への流入や待機資金の積み上がりによって、カネの動きはまだ抑制されたままだと言えます。
つまりはこの膨大なリスク回避の資金がいざ出動となった場合のことを考えて今後の相場をみていく必要がある中で、上述したヒト・モノ・カネが一斉に動き出すタイミングはいつなのか?が重要になってきます。
カネの動きだけから言えば、分かりやすく米国の追加財政出動の決定を待つだけと言えますが、より重要なのはヒトの動きが活発化してくることで、日本も米国も個人消費の復活が景気回復の原動力である点は否めません。
よって、現在突貫工事で開発が進められているコロナワクチン・治療薬の開発(ワクチンの効果はともかくとして)であったり、さらに人々が行き来するための外国人VISA制限の緩和などが次なる相場のきっかけとなってくるであろうことはおさえておく必要があるかと思います。
そうした中で、足元の相場の状況を俯瞰して見ますと取るべき選択肢は自ずと絞られてくるわけですが、何よりも優先しなければならないことは“景気敏感のバリュー株を徹底的に仕込んでおく”という一点に尽きます。
いざヒト・モノ・カネが動き出した際に景気回復ペースは市場が予想しているものよりもはるかに急ピッチで進むことになると考えられるほか、単純な話で株価の上値余地がこれまで評価されてきたグロース株と比べて格段に大きいことが明らかであるからです。
とくに象徴的なのが、今足元で壊滅的なダメージで危機が叫ばれている航空業界、すなわち空運株の存在です。
JAL(9201)やANA(9202)といった代表株が悪材料出尽くしとなるきっかけを投じられ、浮上してくるようになれば景気敏感株は一斉に噴き上げることになるでしょう。
少なからず足元でも、景気敏感を代表するセクターで自動車や工作機械などに底入れの兆しを見出すことができますが、本格的な回復にはまだ時間がかかるとの見方が大勢を占めています。
しかし、目先の決算発表を通じてこうした見方が180度転換してくることになると考えるほか、経済再開を強める菅新政権の動向をみればおそらく来年の早い段階でVISA制限の緩和に踏み切り、追加の補正予算とあわせて日本経済の回復を一刻も早く内外にアピールしたいといった思惑が透けて見えてくるはずです。
仮に年内の相場と来年以降の相場を天秤にかけた場合、未だ米追加財政支援が決まらない中で目先の上値を追いかけて切った張ったの勝負をするよりも、今後着実に訪れる景気回復へのシナリオに沿って戦略的に景気敏感株の下値を仕込んでおく方が、後から振り返ってみた際に得られる果実は天と地ほどの差が生じてくることになるでしょう。
したがって、これから迎える決算シーズンの本格化を前に準備しておきたいことは、まずポジション整理とポートフォリオの見直し、そして景気敏感株への重点配分を心がけること、さらには欧米と確実にデカップリングへと向かう日本の立ち位置を強烈に自覚しておくことです。
くれぐれも今までの相場認識や経験を拠り所として、米国や欧州といった西側諸国の動向に振り回されてはなりません。
むしろそうした先入観を排除して、「マネーは日本へと向かってくる」というような本質的な理解の下で投資を行っていただければ、来年には果実が実り、きっと想像している以上に素晴らしいパフォーマンスをあげることができることと思います。
(あすなろ産業調査部 加藤あきら)
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