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多くの投資家にとってなじみのあるPER(株価/EPS)という投資のモノサシ(尺度)がある。
モノサシと言っても最近あちこちで店舗ができ始めた事務キチのような文具店で売っている訳ではない。皆さんの頭の中にある投資する際の参考となるスケールだ。
株式市場の歴史の中で多くの投資家に使われてきたこのシンプルなモノサシは壊れていて使い物にならない。企業の先行き(足下の収益、将来性、衰退か成長か)がとても不透明なためだが、投資家が発行済みの株式のうち、市場内で浮動している株式を売り買いする際にその判断材料とする場合の尺度(他にPBRや配当利回りがある)の一つであるが、コロナ禍で足下の利益が見えない時代なのであまり当てにならないモノサシとなっている。
シンプルな投資尺度であるPERが銘柄ごとに違っていることはご存知の通り。企業の収益性や成長性には違いがあるからPERも違っていて当然。
現在の市場全体の平均的なPERは22倍から24倍という水準となっていて過去に比べればやや高い水準にある。利益が一定なら株価が下がればこの指標は低下するし、株価が上がっていくとこの指標も上がっていく。
手元に統計データはないが、過去30年の中ではおよそ10倍から30倍というレンジで変動してきたのではないだろうか。
PERは成長性が高いと見られたら、平均よりも高く評価され、成長性がないと見られたら平均よりも低く評価される。ですから平均よりも高い銘柄がある一方で、平均を大きく下回っている銘柄もある。
当然のごとく赤字の場合は算定ができないが、この場合はPBRという別のモノサシが稼働する。上場企業には様々なタイプがあり、中長期的な利益成長性への期待が高いほどPERは高くなって当然だ。このところの株式市場では高いPERの銘柄ほど人気がある。
高いPERは成長株の証とも言えるからだろうが、細かく見ていくとそうとばかりは言えない。投資家の誤解の産物も数多い。このあたりは投資家の見極めが求められる。
また、赤字銘柄の場合はPERの算出ができない。コロナ禍で一過性とは言え赤字に転落してしまった企業や先行投資で赤字続きの創薬ベンチャーなどの評価はPERという尺度ではできないことになる。
こうした問題点を抱えながらも投資家の皆さんにとってはなじみやすい投資尺度だと言える。
ざっと数えるとPER100倍以上の銘柄が185あるのに対しておよそ400銘柄がPER10倍以下の水準で評価されている。高PER銘柄の多くは成長に向けたユニークな事業を展開しようとしており、浮動株を売買する投資家の期待を背景に人気を集めている。
このところ人気化したマザーズ銘柄にはそうした高いPERで評価されている銘柄が多いように思われる。そのマザーズ銘柄の株価がこのところ急落の動きを見せている。何かがあった訳ではなく、マザーズ銘柄の高すぎるPERが警戒感をもたらしているのではないだろうか。
一方の低PER銘柄も一過性のイレギュラーな特別利益を含んだ銘柄が圧倒的に多く、投資家の評価の高まりが見出せない。
こうしたPERという尺度を投資家は投資の目安としてきたが、ここではその利益の内容がポイントとなる。また、経営者の利益成長への取り組みの中身が問われている。
マザーズ銘柄にはそうした経営トップ(多くは創業オーナーを兼ねている)の成長意欲を反映した評価がなされている。
筆者がフォローしているマザーズ成長期待銘柄ではPERが既に100倍の水準となっている本年7月IPOのグッドパッチ(7351)や熊本発住宅メーカーLibWork(1431)の評価が高い。
また、このところは中小企業向け助成金ビジネスを展開するライトアップ(6580)の人気も高まった。
2018年12月の上場時に人気化したドローン専業メーカーの自律制御システム研究所(6232)は今期は収益トントンか若干の赤字見通しだが、世の中のニーズの高まりの中で中長期成長期待も高まりつつある。
また創薬ベンチャーでは8月にIPOした希少性疾患薬をクリスパー技術を使って開発しようとしている東大発ベンチャー、モダリス(4883)に注目。
いずれも市場平均を上回る高PER銘柄だが、上昇トレンドの中で調整を入れている状況。
これらの銘柄は材料株、テーマ株の視点での評価がなされているようで必ずしもPERという投資のモノサシを評価の尺度として当てはめにくいのかも知れないが、それだけに株価は変動が大きくなる可能性がある。今後も十分な覚悟をして投資にあたる必要がありそうだ。
一方、一連のバリュー銘柄群は相場の蚊帳の外といった状況だが、PERが5倍前後へと極端に低下した好財務内容銘柄にはそろそろ見直し人気が出てきても良さそう。
皆様のここでの投資作戦はいかがでしょうか。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)