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【対談】糀屋総一朗さんに聞く『幸せを感じるお金の使い方』前編
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【対談】糀屋総一朗さんに聞く『幸せを感じるお金の使い方』前編

2021-01-30 16:09



     福岡県宗像市神湊(こうのみなと)からフェリーに乗って20分、人口約600人の大島に1泊10万円の宿「MINAWA」があります。
     その仕掛け人が今回のゲストである糀屋総一朗さんです。

     糀屋さんは、慶應義塾大学の法学部に在学中から不動産業界で仕事を始め、卒業後、2001年に株式会社谷口宝飾グループの不動産部門に入社。2007年に独立し、撮影スタジオや展示会場、セミナー会場のシェアリングサービス「レンタルスペース糀屋箱機構」、レンタルスペースの検索サイト「スペなび」を立ち上げ、軌道に乗せた後、それぞれを売却し、投資家に。
     現在は、エリアリノベーションファンドというファンドを運営しています。

     エリアリノベーションファンドは、全国各地の不動産やコモディティ化されない地域性のあるサービスに投資をして、地元の人たちとともにエリア再生を目指すファンド。宗像市大島の宿「MINAWA」を中心とした大島の活性化は、その取り組みの1つです。

     同じ大学出身の小屋さんとは、糀屋さんが谷口宝飾で不動産の買取業務を担当していた頃、仕事を通じて出会って以来、15年の付き合いになるのだそう。

     それぞれの印象を聞くと、お互いに少し照れながらも
    「糀屋さんは、事業の立ち上げを含めて、無から有を生み出すゼロイチと仕組み化が本当に上手です」(小屋)
    「小屋さんは、自分にはないものを持った尊敬できる友人です」(糀屋)
    と話してくれました。

     そんな2人が向き合う今回の対談のテーマは「幸せを感じるお金の使い方」です。


    [お金が主人で、これがなくなったら生きていけない?]


    小屋 今日、糀屋さんと話したいと思っているのが、幸せを感じるお金の使い方です。
     というのも、マネーライフプランニングのクライアントさんはある程度、お金を持った方々なんですね。
     例えば、先日も遺産を相続して3億円近い財産のある方が相談に来ました。
     手堅く運用すれば年間1000万円くらいの利益を上げることもできますし,お話を聞くとご本人の1年間の支出はその額には届かないそうです。

    糀屋 そうだとすると、悠々自適な感じですね。

    小屋 ところが、「運用を始めるには怖さがあるし、何もしないのも不安だ」と。似たような相談事例はいくつもあって、さらにその一歩先、実際に運用を始めて資産は減らず、ゆっくりと増えていくことを実感したクライアントさんたちも、やっぱり「お金の不安が消えない」と言うんですね。

    糀屋 なるほど。でも、それはどういう種類の不安感なんだろう?

    小屋 運用に絶対はないですが、手堅く推移する数字は見えるわけです。
     それでも「減るのが怖い」と。また、今ある資産を使うことそのものに抵抗感を持っている人もいます。

    糀屋 資産があり、不動産もあるけど、心配、と。そういうクライアントさんは多いんですか?

    小屋 ほぼ9割の方がそうですね。だけど、そのままの心理状態ではいくら資産があっても、幸せではないと思うんですよね。いわゆるファイナンシャル・プランナーの仕事ではないかもしれないですが、私としてはお金を使うことの不安感、恐怖心を手放してもらい、「幸せなお金の使い方」を知るクライアントさんを増やしていきたい。
     それが今の課題感としてあって、私から見ると不安なく「幸せなお金の使い方」を実践しているように見える糀屋さんの考えを聞きたいと思ったんです。

    糀屋 お金に対するマインドの問題ですね。この話が合っているかどうかわからないけど、例えば、株式投資には大きく分けて2種類ありますよね。チャート見て、売り買いを繰り返す短期投資と、人や事業、社会的な価値を見て行う長期投資。
     僕はどちらも好きだったんですけど、最近は短期のチャートを見て、って側にはまったく興味がなくなり、人や事業、社会的な価値を見て投資しています。もちろん、リターンは大事なんですけど、投資した先の人が成長し、事業がうまくいき、社会的な価値が高まることに幸せを感じるようになりました。しかも、そうなると僕が感謝されることもあるわけです。

    小屋 フォーカスがお金ではなく、投資先のポテンシャルや潜在性が開花していくことに向いている?

    糀屋 お金はもちろん大事なんだけど、その幸せを味わいたくてリターンはまた再投資に向かっていきます。
     手元にお金を貯め込んで安心する感覚も、出ていく怖さもないんですよね。

    小屋 糀屋さんはどうやって今のような感覚になっていったんですか?
     また、資産を十分に持っている人たちにどう伝えれば、人や事業、社会的価値の未来に投資するおもしろさや喜びが不安や恐れを上回っていくと思いますか?

    糀屋 年齢や性格にもよりますよね。例えば、うちの母親を想像してみたんですが、難しそうです。
     以前、僕のお勧めのベンチャー企業への投資を勧めましたが、「そんなん出せない」と言われました。
     でも、うちの親の感覚は、世間一般のものさしではすごく普通なんだと思います。
     だから、小屋さんのクライアントの方々もお金の使い方について戸惑うのは頷けますね。

    小屋 成長を見守ってうれしい、喜んでもらってうれしいと実感する場面が少ないのかな。
     例えば、常連になっている居酒屋やバー、近所にある顔なじみのレストランや小売店でお金を使うとなんとなく「いい使い方」ができた感覚がありますよね。あれは経営者やスタッフの顔や暮らしが見えているからですよね。
     店をやっている人たちも含めたサービスの在り方に納得してお金を払い、それが店の維持や成長につながっているのがわかる。
     それが、チェーン店で飲み食いするよりも満足度が高い理由だと思うんです。
     そんなふうに消費レベルでも、幸せを感じるお金の使い方の感覚は実感できるはず。
     でも、なかなか「なんで気持ちよく使えたのか」を考える機会はないですから、人のためにお金を使うことに不慣れなんですよね。
     ましてやそれを投資で実感するのはかなり遠い感覚なのかな……。

    糀屋 でも、僕も昔はそうでしたよ。

    小屋 どうやって変わっていきました?

    糀屋 僕のマインドが変わったのは、20代後半から30代前半。自分で事業を始めてからですね。
     自分の責任でお金を出資して、投資して、頑張っていかなければならない環境になってから、お金へのスタンスが変わりました。
     それまではお金って給料としてもらうもんだと思っていたから。
     でも、それはある意味、お金の奴隷だったんですよね。お金が主人で、これがなくなったら僕は生きていけないみたいな……
     さっき言っていた減る不安、怖さもそことつながっている気がします。

    小屋 それが経営者になってみて変わったんですか?

    糀屋 やりたいことがあって、そのためにお金を使うというマインドになりました。
     これは根本的な変化で、自分の主人が誰かという問題。お金が主人の状態から、お金が主人だとは思わない人になっていったんですよね。


    [人生の幸福度が高まるお金の使い方を発信したい]


    小屋 経営者ではない人の場合は、どうマインドを変えるきっかけをつかんでいけばいいのか。
     主体的にお金を使うことが大事になってくるんでしょうか?

    糀屋 そう思います。消費でも、投資でも、誰かに言われたのではなく、自分で考えて使って、誰かに喜んでもらう体験をすること。

    小屋 そういう意味では、クラウドファンディングはいい方法になるのかなと思っています。
     1万円寄付すると3000円分のリターンがあるといった寄付型など、クラウドファウンディングにもさまざまな形式がありますが、共通するのは「顔の見える相手を応援できる」「喜んでもらえる」といった感覚。
     また、モノではない体験をリターンとして得られるケースもあって、幸せを感じるお金の使い方を経験するにはいい仕組みです。

    糀屋 そうですね。クラウドファウンディングは相手から感謝される消費を体験できる要素がありますから、
     何回か出資することでお金に対するマインドを変えていくきっかけが掴めるかもしれません。

    小屋 ただ、一度もクラウドファンディングをやったことがない人のところには、「応援してください」「お金を出してください」という声が届かない可能性はありますよね。支援者になったことがない人は、顔の見える応援したい誰かの存在に目が届いていないのかもしれません。

    糀屋 たしかに。

    小屋 一度でも誰かを支援すると、その後も継続的に「今度、クラウドファンディングをやるので応援よろしくお願いします」という声も届くようになります。でも、ある程度、お金が自由になる状態になったとして、そこからどうしたらいいのかが全然わからない人は多くて、そのあたり糀屋さんはどうやって経験を積んできたんですか?

    糀屋 今、僕が投資している対象は不動産、ベンチャー企業、自分のやっているエリアリノベーションファンドです。
     そのうち、投資しているベンチャー企業は自分のソーシャルなつながりの中で紹介されたところがほとんどです。
     例えば、「五常・アンド・カンパニー」というマイクロファイナンスをやっているベンチャー企業があります。
     とてもいい会社ですが、そもそも存在を知っている人も、投資する人も少ない。それはベンチャー投資へのアクセスが難しいからです。
     経験した人はわかるけど、そうではない人にはまったくわからない。
     この状態を解消していくには、小屋さんがクライアントさんに教えるといったようにアドバイザーが必要ですよね。
     ちなみに、エリアリノベーションファンドは1口100万円から投資できますが、そういった情報も含めて、「ここにいい会社がある」「この投資先にはこんな魅力がある」ということを発信していく地道な活動も欠かせないと思います。

    小屋 情報を橋渡ししていくような?

    糀屋 そうですね。これは個人的な興味なんですが、小屋さんとしては運用や保険のアドバイスをするファイナンシャルプランナーの枠を超えて、クライアントさんたちに幸せを感じてもらうサポートをしていきたい?

    小屋 お金の使い方が上手になって欲しいと思っています。お金を貯めるのはもちろん大事です。
     でも、実際にうちのクライアントさんは十分に貯められる人も、運用ができている人も増えているので、次は上手な使い方をサポートできないと満足度が上がらない。
     実際、3億円持っていても、4億円持っていても、上手に使えなかったら幸福度は高まらないはずなんですよ。
     だから、お金持っているんだけど、幸せになるお金の使い方を経験してない層に向けていいメッセージを発信することが、この先の私のテーマになっていくと思っています。

    糀屋 すごくいい目標と目的ですね。

    小屋 クライアントさんがそこまで育ってきてくれたので。お金がいっぱいあれば幸福度が比例して上がっていくのならいいんですけど、『幸福学』の本などを読むと、そうでもありません。
     研究によると、お金、健康、人間関係、仕事、地域社会。
     この5つの軸のバランスが取れて、充実していくと幸せを感じる、とあります。だとしたら、お金はある程度あるというクライアントさんたちに、そうではない軸で幸福度を上げていく方法を地道に発信していきたいんですよね。

    糀屋 たしかに、投資にはいろいろなやり方、関わり方があって、究極は利回りに行き着くのかもしれないですけど、応援や感謝といった側面ももっとフォーカスされていいような気がしますね。

    (後編へ続く)


    株式会社マネーライフプランニング
    代表取締役 小屋 洋一


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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