• このエントリーをはてなブックマークに追加
ユニコーン型企業に潜むリスク
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

ユニコーン型企業に潜むリスク

2021-02-10 22:12



    ~180億円夫のプライベートな失敗と復活への期待~


     日本の株式市場にはまだ事業規模は小さくまだ利益の水準が低いか売上優先で先行投資期にあって赤字の状態でも未来への期待値の高い時価総額1000億円を超えるユニコーン型企業がいくつか存在している。創薬ベンチャーなども含めてそうした企業の上場が許され投資家の関心が向くようになってきた。

     これは米国でもアマゾンやテスラといった企業にも当てはまるが、創業時やIPO前の時代からその凄さが認識されIPO後においても一段と評価を高めてきた結果、市場をリードする企業となった事例でもある。
     日本のソフトバンクGや米国のアップルやマイクロソフトといった1980年代からのIT系老舗企業に対して1990年代以降に設立されたIT系企業の活躍がダイナミックに続いている結果、米国の株式市場は活況を呈している訳だが、今もまだまだ多くのベンチャラスな企業が設立され、IPOに向けて動きが活発な点はまだこの先の経済発展、新たな産業の隆盛にも期待される状況だろうと拝察される。

     IPO市場の活況はこうした産業、企業の勃興がまだ続くとの期待が背景にあると言えそうだ。


     日本のIPOは年間90前後となっているが、その多くは今後の成長を競うようにマザーズ市場に出てきて投資家のリスクマネーを呼び込んでいる。それでも香港市場も含めた海外市場のスケールに比べると時価総額のレベルは低い。

     通常、日本の企業評価はPERといったいささかオールドな教科書的な投資尺度でなされる訳だが、そうした投資尺度はIPO市場には通用しない。既存の上場銘柄の平均的なPERが26倍(これでも過去の水準に比べ上昇している)となっており、こうした平均値を超えると割高だったり下回ると割安だとか評価されるのだが、IPO企業にこうした尺度は不釣り合いな印象がもたれる。

     これまでのIT企業は年ベースでの成長というよりドッグイヤーで四半期成長なるものが随所に見られ、成長のスピードが既存の多くのビジネスとは異なったものとなっている。こうした成長スピードが1990年代以降にIPOしてきた今や日本を代表する企業の事業スケールを高め時価総額を高めてきた。

     米国ではアップルなどの200兆円もの巨大な時価総額を生み、その他アマゾンやアルファベット(Google、YOUTUBEなどを展開)、FACEBOOK、テスラ、マイクロソフトなどの巨大な時価総額群で構成される市場を形成してきた。彼らに続けとばかり日々ベンチャー企業のIPOに向けた取り組みが活発となり、株式市場は毎日がお祭り騒ぎのような展開となっている。


     コロナ禍で疲弊する社会に対して株式市場は活況。

     こうした活況にある株式市場においてのリスク要因を見出すとなるとなかなか難しいのだが、この上昇トレンドに水を差す出来事が時折出てくる。

     先般からの話題では米国のGAMESTOP株がヘッジファンドと個人投資家の対峙の中で乱高下していて全体相場にも何らかの規制が入るのではないかとの憶測を呼んだことで一時は波乱含みの展開となった。昨年3月に起きたコロナショック以降、滅多に起きない波乱の動きで身構えた投資家も多かったのかも知れませんが、また何事もなかったような株高の展開となり、一瞬の出来事のようになろうとしている。
     それでも市場にはこれをきっかけに今の相場についていけなくなった個人投資家が今後もあちこちでファンドに対する抵抗の狼煙を上げ、そうした動きに当局が規制を行うのではないかとの思惑が残っているようだ。


     日本でもそうした出来事に準じた事象の一つとしてベンチャー企業経営者に降りかかった予期せぬリスクが話題となった。

     オンライン診療制度の推進企業と言われるメドレー(4480)の創業経営者で事業推進の旗振りでもある豊田氏(医者で英国留学経験者)のプライベートな問題による辞任である。

     同社は2019年12月にマザーズ市場にIPOを行い、上場直後の安値1181円から2020年10月高値7370円までわずか10か月で株価を6倍にまで上昇させたことになる株式市場期待の経営者の筈だったが、今回の
    出来事が影響したのか株価は5000円割れまで売られている。
     外国人投資家にも注目をされ、その持株比率は34.5%とベンチャー型企業としては高水準。その結果時価総額は上場時の326億円から1000億円以上に高まっている(上場後に評価を高めた銘柄の一つ)。

     2019年の公開時の公開価格は1300円。その後上場後の昨年9月に135万株の公募増資(発行価格4237円)を行った。

     ピーク時の時価総額は2246億円、現在は1520億円。メディアでは180億円夫とのレッテルを貼られたが、これは豊田氏が発行済み株式の11.6%、335万株のメドレー株を保有していてその保有額を表している。

     こうした時価総額に対して同社が公表している前12月期の経常利益は3.5億円から6.5億円(四季報では6億円で12日に発表予定)で今期も業績続伸の予想となっていますが、創業社長の辞任による影響がどうなるかに関心が高まっている。ただ、豊田氏は医師であり同社の代表取締役ながら同社にはもう一人、代表取締役社長で筆頭株主でもある滝口氏がリーダーシップを担うものと想定される。

     赤字ではないが同社のようなまだ事業規模が小さくても時価総額が1000億円を超えるような、いわゆるユニコーン型企業に起きた予期せぬ出来事が他社にも同様に起きないかとの懸念が脳裏を過ることになる。


     メドレー社に限らず、ベンチャー企業の成長は日本社会や経済をリードする重要なことと捉えることができる。そこに降りかかった1企業の経営者のプライベートな問題とは言え、かつてのホリエモン事件の時と同様にIPO相場の活況に水を差さないか注意してみていきたい。


     時価総額は投資家の信頼で成り立っている。

     辞任した経営者の後継者がちゃんとやってくれるから大丈夫だと言う方もお見えかも知れませんが、志の高いアンビシャスな経営者にバトンタッチされるかどうかを見極める必要がある(決算発表時に何らかのメッセージは出されると思われる)。
     ビジネスモデルの良さから今後の復活が大いに期待される。


     こうした出来事を他山の石としてIPOしたばかりの若いベンチャー企業経営者には改めて気を引き締めて頂きたいが、人だけにこうした出来事は今後も起きてしまいがちなのかも知れません。


    (炎)


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


    honoh_01.jpg
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。