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今年も残り1か月半となりました。皆様の運用成果はいかがでしょうか。
株価上昇銘柄をお持ちの投資家にとっては良い成果を残せたでしょうし、株価下落トレンドが続く銘柄を多く抱えておられる皆様にとっては悪い結果がもたらされたものと拝察されますが、そうした状況があっても株式投資はロングランで成果を上げていくものだと理解されれば、来年に向け希望も持てるかと思います。
問題はなぜ株高となったのか、なぜ株価が下落したのかという背景をしっかり認識しているのかということになります。
株価の上昇には市場参加である様々な投資家の評価がポジティブでないとなりませんし、業績の成長が基本的に実現しているか今後見込まれるものである必要があります。一方の株価下落に至るのはネガティブな業績結果とそれに基づく未来への不安感が背景になっていると考えられます。
全体相場はマクロ経済の影響を受けがちですが、個別銘柄の株価は企業ごとのセクター動向や成長戦略など足下の業績だけではない要因が背景になっているほか需給が株価の変動に大きく作用しているとも言えます。
短期投資家と中長期投資家では投資スタンスが異なります。株価のテクニカル上の下落トレンドをネガティブに見て売る投資家も多い一方で上昇トレンドを描く銘柄には不思議なほど買いが入ってきます。
市場には企業業績だけでは語れない摩訶不思議な株価変動の背景がうごめいていることも事実です。それは特に個人投資家にとって時に幸運をもたらしますし、時に最悪の事態をもたらします。
上場企業のミッションはステークホルダーとの共生にあります。経営者は株価上昇(評価の継続的な高まり)という投資家や株主の期待に応える必要があり、そのための施策を打ち出して理解を得ないとなりませんがその通信簿が株価や時価総額と言えなくもないでしょう。
株主は安定して保有するとは限りません。特に個人投資家の皆さんは売りも買いも自由なので駄目株は駄目と断じて行動することになります。企業は株価にまでなかなかコミットできず、経営者ならともかく、IR担当者ではそうした株価への意識は希薄ですし、社内での規定などからなぜ自社の株価が大きく買われたりして上昇しているのか、一方でなぜ株価が下落しているのかなどを明確にはコメントしません。
正直に言って企業のIR担当者は自社の株価への意識が欠けていますので、既存の株主や新たな投資家に、どのような伝え方をすれば良いのか分かっていないことが多いと考えられます。これは経営者にも言えることではありますが、投資家にとっては投資する原動力になる筈の十分なメッセージが存在しないのであれば単純にスルーするだけとなりますので、その分市場参加者が少なくなるだけなのです。
そのような形で取り残された銘柄が日本の株式市場には山のようにあります。
3800社余りの上場企業でPBR1倍以下は1700社余りもあり、解散価値を下回っている状況の企業が半分近くを占めているという現実を知る必要があります。
皆さんはこの状況をどう御覧になっていますか?
PBR1倍以下どころか0.5倍以下という銘柄は600社余りもあり、その中の多くは銀行株や保険などの金融株であったりします。
先日、政府保有株を叩き売りした日本郵政(6178)などはPBR0.24倍という水準で株式投資の教科書から言えば、恐ろしいほど割安な筈ですが、投資家の興味はほとんど無に等しい状況です。
PBRがこんなに低くて多くの株は割安だから皆さんに投資しなさいと言っているのではなく、こうした状況をつくっている市場関係者や財務省、東証など少しはこの状況を何とかしてはどうかと言いたいのです。
実際には解散価値となるPBR1倍割れの状況は単純に自己株を買うとかすれば1倍を上回る可能性もあるのですが、それが投資家の自然な発想や評価で形成されるのではないということで問題を含んでいるように感じられます。
一方ではPBR1倍を超えて評価されている銘柄も2000余り存在しており、そうした構成によって一応は平均PBRが1倍を超えているというデータになる訳です。つまり投資家が銘柄を峻別した結果、PBRが極端に低い銘柄群と極端に高い銘柄群で日本株は構成されていることになります。
取り残された銘柄群に対して以前は投資家の熱い視線が向けられたこともありましたが、現在はなかなかそうした展開には至らずに駄目株ないし低評価のバリュー株はほとんど蚊帳の外となっています。この相場をバブルという市場関係者が言うことがありますが、それは市場の一面を見ているとしか思えません。
確かに一部のタコ糸が切れたような動きを呈している機関投資家好みの銘柄も多いのですが、投資家からの評価が低いままキャッシュを有効活用しない企業の株は放置され続けています。サラリーマンファンドマネージャーが運用する機関投資家のファンドではその大半のリスクマネーが誰もが知っている銘柄やインデックスに向かっているように思われます。
その結果として多くの上場企業の株価が低評価のまま埋もれている状況となっている訳です。日銀が投資するTOPIX型ETFには無関係な銘柄も含めて多くの上場企業が幅広く復活することで株式市場は本来の機能を果たすのではないでしょうか。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)