先月18日の政策決定会合では日銀は政策変更(利上げ)をしませんでした。その結果として当日午後は急速な株式や円のショートカバーが入ったと思われます。が・・・、「日本株は大して上がらない」「いずれ金利は上がる」と読む海外ファンドを中心とした投資家は株価が上がる度にショートを入れます。
先月後半は買戻しによるものか日経平均株価は27,000円台へ戻しましたが、その後の上値は重く、日本株は今年も厳しい相場が続く予感がします。
足元のIMFの推計では日本の2023年の成長率見通しは1.8%であり、前回予想からは若干の鈍化となります。が、今の経済環境が続くのであれば来期業績は悪くとも横ばい程度は維持しそうですから割安とは思うのですが、日本株に対する国内投資家に厚みが無く、且つ信頼感も薄い故に国内投資家による売買は低迷し、結果としてファンドによる人為的な株価操作がされ易くなっています。
PBR(株価純資産倍率)が1倍以下の銘柄が半数にも及ぶのに、それを是正すべき対策が打たれないままの市場です。取引所はヒアリングを始めたようですが、報道を見る限り「要請」と言うだけの、(財界を牛耳る大手割安企業に忖度するため)強制力のないソフト対応が続きます。
これでは幾らNISA枠を拡大しても投資妙味の無い日本株に資金が流れることもなく、結果として日本から海外投資が増える事により円安を後押しします。これがここ数年の標準シナリオだったのではないでしょうか。
これらが是正されるか否かが日本株を再評価する目安になりますが、「新しい資本主義」だの「異次元の少子化対策」等々、以前と変わらぬ言葉遊びで政権(議員バッチ)維持を狙うだけなら日本の将来には期待出来ません。
先週の米シェブロンの記事に驚きました。
昨年は資源高で空前の利益だったと思われますが、純利益が350億ドル(ドル円130円換算で約4.55兆円)ですが、先週末の時価総額3,600億ドル(同47兆円)の会社が750億ドル(同9兆7、500億円)もの自社株買いを発表しました。時価総額に対して約20%の自社株買い(株主還元)です。
日本ではソフトバンクGの5,000億円の自社株買いが驚きを持って記事になりましたが、これとてシェブロンの20分の1です。このダイナミックさを見て日本が置き去りにされている現実を再認識した次第です。
勿論、バイデン大統領はその利益を広く還元しろと言っていますし、筆者の感覚でも、その棚ボタ的利益を幾らかでも困っている人や地域に還元できないものか?とも感じましたが、シェブロンは(節税しながらも)税金を払っていますし、資本主義とはこう言うもの(=株主のもの)と明確にするのが米国資本主義なのでしょう。
そもそも資本主義は周囲からの搾取で成り立つ経済構造ですから、資本を有効利用した者が利益を得て格差が拡大するのは当たり前な訳です。
その一方で、ダイナミックに合併などをしてでも多くの利益を創出しようとする気概も無く、僅か数百億円の時価総額で「我こそはプライム上場企業だ!」と満足し、無事に役員を満了するまでチマチマと剰余金を積み上げるだけの経営を続け、純資産を下回ったままの会社では勝負に(投資する気にも)なりません。
昨日の住友化学の四半期決算も残念過ぎました。
一昨年から時価総額7,000億円~9,000億円辺りを往復していましたが、損益トントンの業績へと下方修正し、株価も下落しました。株価動向にしても30年前から変わらぬ水準を行き来しています。
PBR0.5倍台の大手上場企業が僅か1期の損益がトントンになっただけで配当まで無くしてしまいました。これでは恐ろしくて株主になんてなれません!さっさと会社を畳んで資金を株主に返還すべきです。
日本を代表する大手化学会社の時価総額が1兆円にも満たない現状では世界の主要投資家からは相手にされません。世界と戦うために規模の利益や生産性を求めず、財閥グループ内の思想でそれぞれ化学会社を運営し、似たような経歴のお年寄りを経団連に送り込む組織になっています。
この方たちが有識者として政府にアドバイスをしている国です(呆)。
振り返れば、ロシアがウクライナに侵攻してから間も無く1年になり、またコロナ蔓延から3年が過ぎます。
この資源高の中で原発についてはなし崩し的に再稼働と延長が決められています。医療行政にも変化が見られないうちにコロナ対策の緩和が進められています。
これ程の混乱を経験してもなお「何も変わらない日本」に不気味さを感じます。
内閣府の推計では2100年には日本の人口が約6,000万人強(うち65歳以上の高齢者が38%、中位数年齢53歳)となっています。大都市の人口減少はなだらかと思われる一方、地方の相当数の中小都市が消滅するとされています。この頃には、いや、そのずっと以前に現在の行政システムを維持する事が不可能となっていることでしょう。
日本の長期停滞の最大原因は90年代以降に増えた世襲政治家の比率と、社内政治の延長線上で漫然と役員選任を続けた大企業(財界)の影響が大きかったと考えています。組織トップの交代時に退任するトップが次を指名する行為は世襲と変わりません。
行政も概ね従来慣行でトップが決まっていますから、政官財の全てで世襲が慣例化されていると捉えるべきでしょう。恐るべきことに国家を動かす中核集団が世襲によって既得権を行使する国になってしまっています。
世襲は古い柵(しがらみ=既得権)を温存します。
コロナ禍では医療既得権の闇が露になりました。業界利益維持の為に古い医師法にしがみつく、国民置き去りの既得権者達の醜さを見せつけられました。
政治も2010年代に入ってからは特に、与野党ともに政治家として存在すること(老害既得権)が目的化しており、その方便故に、口先だけで何も変わりません。一刻も早い選挙制度の抜本改革が求められます。
国内株式市場については、このような環境下であることを認識しつつ投資研究をしなければなりません。
狙うべきは、将来に渡り本当に成長しそうなビジネスモデルを持ち、且つ意欲的な経営者がいる会社、または割安な中でも経営が代われば変化が見込めそうな会社でM&Aなどの対象となりそうな会社です。
暫くは金利の影響を受け易い銘柄の選別も必要になります。少なくとも主要市場である欧米の市場金利は上げ止まったとしても横ばいが続くでしょうし、下がるまでには時間がかかるとの前提で銘柄研究をしたいところです。
日本の市場金利も当面は上がることはあっても下がることは無さそうです。
余談ですが・・・、NHKには本質的なジャーナリズムが感じられません。まず、総合番組では若者や高齢者をターゲットにした娯楽番組が多く、貴重な海外ニュースや人気のスポーツなどはBSで放映することで多めの視聴料を払えるビジネスマンを誘導しています。
姑息ですね。
幽霊病床で荒稼ぎした病院はどこなのか?どうすれば医療行政を変えられるのか?ザルとなっている政治資金規正法改正に何故に言及しないのか?統一教会に関するニュースも表面的な報道ばかり・・・。
重要なニュースなのに分析や提案も殆ど無く、政府広報に徹するだけの姿勢です。
NHKは徴税並みの権限ばかりを行使する反面、開示は中途半端なままであり、民放も公共の電波を無駄にし続けています。
ジャーナリズムの在り方こそが民度に直接影響すると考えています。政権の都合次第の報道に終始し、単なる総務省利権の巣窟では困ります。
(街のコンサルタント)
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