前回の杉原さんへのインタビューの後編です。
前編はこちら ⇒ http://www.okuchika.net/?eid=11376
華やかなゲストが来てくれました。
10代の頃からタレント、グラビアアイドルとして活動する一方、個人投資家でもある杉原杏璃さんです。
23歳のとき、30万円ほどの貯金を元手に株式投資を始め、5年後には運用資産1000万円を達成し、投資歴17年で“億り人”に。
現在は『株は夢をかなえる道具』(祥伝社)や『マンガでよくわかる株1年生』(かんき出版)などの著書を出版、初心者にもわかりやすく投資術を伝えています。
また、2014年にはグラビアでの経験を活かしたソフト補正下着のブランドを立ち上げ、大手通販専門チャンネルで9年にわたりヒットするロングセラー商品に育てるなど、実業家としても活躍しています。
今回はそんな杉原さんに、前編で個人投資家としてのキャリアについて、後編では40代になった今感じている仕事と資産への考え方を、深掘りしてお話をうかがいました。
●30歳、株で得た利益を投じて夢だった補正下着のビジネスを立ち上げる
小屋「杉原さんが立ち上げられた補正下着のビジネスについてもお聞きしたいです。始めたのはいつ頃ですか?」
杉原杏璃さん(以下、杉原)「2014年で、30歳のときです。株を始めて9年目でした。」
小屋「どういうきっかけだったんですか?株式投資とも関係していますか?」
杉原「株式投資は深く関係しています。というのも、補正下着をつくるのは20代の頃の夢の1つだったんです。でも、メインのお仕事で得たお金は日々の生活に使っていたので、夢は夢だなと思っていました。それから株で収入が得られるようになって、補正下着のビジネスの資金を準備することができたんです。」
小屋「補正下着はグラビアのお仕事と縁深いものなんですか?」
杉原「グラビアアイドルはみんな、常にダイエットをしていますし、撮影に向けてメリハリができるボディに仕上げなきゃいけないと日々考えています。
ボディラインを維持していくなかで、ガードルを履いたり、コルセットを着けたり。補正下着は身近な存在なんですね。私も20代後半に向かう頃、グラビアの撮影でポーズを取りながらウエスト部分のラインが気になるようになりました。食事や運動の努力には限界があって、補正下着で整えられないかな?と初めて試してみました。そうしたら、腰回りのお肉が程良く生地の圧で抑えられて、ラインを自然に整えてくれる効果を感じたんです。」
小屋「そうなんですね。」
杉原「補正下着は着用すると体のラインをきれいに見せてくれるものですけど、ボーン(金属やシリコン製の芯)やワイヤーなどを使ってガチガチに固める補正下着は、窮屈で着るのも脱ぐのも大変。長時間は身に着けていられませんし、締め付けすぎると、かえってボディラインが崩れるように感じました。そこで、私が使っていたのはノンゴム、ノンワイヤー、ノンボーンのソフトな補正下着。程良く圧をかけて垂れやゆるみなどを防いでくれて、1日中つけていても苦しくない。でも、細かなところに『もっとこうならいいのに』という部分はいくつもあって、自分が一番気に入るものを自分で作れたら最高だな、と思うようになっていったんです。」
小屋「夢を形にするためにご自分で事業にしようと踏み出せたのが、すごいですよね。」
杉原「できたらいいな……から踏み出せたのは、株で少しずつ資金が貯まっていったからです。これを全部ビジネスに投下すればまた次の夢が広がるな、これも投資だなと。ちょうど30歳という節目で、女性にとって結婚だったり子供だったりを悩む年齢でもあり、私の場合はそこで1つ揺るがないビジネスを持ちたかったんです。」
小屋「株の利益を投じての立ち上げだったんですね。」
杉原「そうですね。水着を着て人前に出るグラビアのお仕事は50歳、60歳になってもできるようなジャンルではありませんから。いつかはやめなければいけない、賞味期限のあるものです。その先を見据えたとき、きれいに体のライン、女性らしいラインを見せる商品をつくることと、グラビアでの経験をつなげていけるとも思いました。10年近くボディラインを美しく見せるために試行錯誤してきたノウハウは自分にとっての財産です。そのノウハウを多くの女性にお伝えすることで、いつまでも美しく、自信を持って暮らしていただきたい。そんな想いもあっての補正下着の事業の立ち上げでした。」
●知らないからこそ、わからないことは全力で「教えてください」と言える
小屋「そこから実際に10年ビジネスを続けてこられて、どのように感じていますか。事業は株式投資や不動産投資と似ている部分もあれば、違うところもあります。」
杉原「株もそうでしたけど、マメに学ぶこと。失敗を検証すること。そうやってしっかり勉強すればするほど、少しずつうまくいくんだなということを感じています。特にビジネスは苦しい局面があっても、それを乗り越えたときの達成感が大きいですね。」
小屋「世の中、10年続くビジネスは少ないですから、すごいと思います。」
杉原「株は1人で黙々と売買するだけですけど、ビジネスは本当に多くの人が協力してくださっています。補正下着のパターンを引いてくださるデザイナーの方、営業に行ってくださる方、製造工程に携わっている方、いろんな方々に支えられていて、私はより良い商品の開発と商品を世の中に広めるという部分に力を注いでいます。多くの人とチームを組めるという意味で、株より楽しめているかもしれません。株は全部が自己責任ですけど、ビジネスは困ったことがあってもその道のプロの方々が知恵を出し、手を動かしてくれますから。」
小屋「人と作り上げていく楽しみもある一方で、1人でやっていたらこんなことないのに……とモヤモヤを感じることはありませんか?」
杉原「もし私が飲食の仕事で経験を積んでからレストランを開いたとしたら、そういったモヤモヤを感じる場面もあったかもしれないですね。でも株を始めたときと同じで、グラビアアイドルからビジネスのことは何も知らない立場で入っているので、わからないところについては全力で教えてください、お願いします、と言えるんです。」
小屋「その素直さが順調な成長の秘訣かもしれませんね。」
杉原「少しずつ規模が拡大して、毎年プレッシャーの負荷がちょっとずつ増えています。でも、基本的に楽しめていますね。」
小屋「補正下着をつくるという夢が実現して、今はまた次の夢ができていますか?」
杉原「大苦戦中ですけど、アジアに進出したいと思っています。アジアの女性は体型も似ているので、きっと着心地がよくボディラインを整えられる補正下着がお役に立てるはずなんですね。中国、台湾、香港。チャレンジしているんですが、なかなか実を結ばないところです。でも、数年以内に実現するといいなと思っています。」
●将来的には個人投資家が運用について語り合えるシェアハウスを作りたい
小屋「僕たちは個人のお客さんの資産運用についてアドバイスをしています。杉原さんはすでにご自身でできているので必要ないとは思うのですが、アドバイザーの存在についてはどう見ていますか?」
杉原「投資をしていく上で何が一番大変だったかと言えば、やっぱり信頼して話し合える人がなかなかいないことです。特に20代の頃は、投資についてコミュニケーションが取れる仲間がまったくいませんでした。すごく寂しかったし、不安でしたね。そこに経験のあるアドバイザーがいてくれたら、その分ノウハウを身につける時間が短く済んだかもしれません。もし可能なら、23歳に戻ってアドバイザーや投資について話せる仲間と一緒にやりたいなっていう気持ちがありますね。今はSNSもあるし、私の周りの個人投資家の方々もグループLINEを作って「おはよう」の挨拶から、銘柄に迷ったときに相談したり、どのくらいの株価から入っていくかを話したり、ひんぱんにやりとりしているみたいです。私はそういう経験がほとんどないので、メンタル的に心強いだろうなとも思うし、少しうらやましいです。」
小屋「投資家や経営者グループへの誘いはないんですか?」
杉原「私はお仕事のとき以外、すごく人見知りなんです。しかも、出不精で年々お尻が重たくなってきていて……会食に誘われてもほぼ断ってしまっているんですね。プライベートはお家とご近所で完結しちゃう。でも、もう40代になりましたし、もうちょっと人間力を養って、コミュニケーション能力を高めていきたいと思っています。」
小屋「先ほど、ビジネスの次の展望をお聞きしましたが、資産運用についてはどうですか?」
杉原「今は投資スタイルも変わってきて新興銘柄中心ではなく、高配当株や優待株も持って、複利で回すような銘柄も増えました。資産額はあまり気にしないようしているんですが、それでも株価は毎日見るので精神的な負荷はかかりますね。デイトレで売買しているわけでもないのに、日経平均が下がって保有銘柄に影響が出ると気持ちが重たいし、何年やっていてもメンタルコントロールは難しいですよね。ただ、昔から私は『100万円貯まったらバーキンを買おう!』みたいな物欲が一切ないので、今もお金を使いたい目標はなくて…。」
小屋「物欲がなくて、でも運用はうまくいっていると資産は増えていきますよね。これから先の使い方についてはどうでしょう?これはうちのお客さんたちの悩みでもあって、50代、60代と資産運用がうまくいった後、そのお金をどう使うと幸せを感じられますか?という問いなんですが。杉原さんは40歳になったばかりですから、まだ具体的に60代以降のイメージは描かれていないとは思うのですが、プライベートでの夢はありますか?」
杉原「プライベートで自分のものとして、これを買いたい!というものは思い浮かばないんですが、1つ夢はあります。投資のシェアハウスを作りたいんです。」
小屋「投資のシェアハウス?」
杉原「1週間単位、1ヶ月単位の入居でもいいんですが、投資という趣味を持っている人たちが集まるシェアハウスです。その建物がRCになるのか、木造になるのか、どんな場所になるのかは、これからの私の資産運用にかかっているんですけど、投資が好きな人が集まる場所を作りたいんです。」
小屋「それは楽しそうですね。僕も同じようなイメージを持っているので、驚きました。会社の事務所の半分ぐらいをオープンスペースにして、いろんな投資家さんや新規でビジネスを立ち上げたい人が集まるサロンにしたいんですよね。気軽に、でも真剣にビジネスや運用の話ができるような空間があったらいいなと。」
杉原「いいですよね。私も投資というジャンルが好きな人たちが入居して、大きなダイニングの共有スペースで株や不動産など、運用のいろんな話ができる場所にしたいです。週末にセミナーに行くのもいいですけど、仕事が終わって、家に帰ったら気の合う仲間がいてコミュニケーションが取れるってすごくいいじゃないですか?老後はそのシェアハウスの大家さんになって、お茶をすすりながらみんなの会話を聞いていたい。自分からコミュニケーションを取るのは苦手なので、みんながわいわいしているのを眺めていたいんですよね。それだけで心が潤いそうだし、人間関係のコンプレックスも解消されて、人生の満足度が上がると思うんです。」
(了)
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
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