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スイスのプライベートバンクから学ぶ資産管理のあり方 vol1
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スイスのプライベートバンクから学ぶ資産管理のあり方 vol1

2013-08-05 10:21
    こんにちは。株式会社ZUUの冨田和成です。

     職業柄、海外の金融機関(ヘッジファンドやプライベートバンク等)のオフィスへの視察・訪問には良く出かける機会があります。
     そのお陰で、海外の金融機関の富裕層向け金融サービスの最新の戦略や動向等を見聞きする機会には恵まれてきました。

     その経験から、海外、それも金融先進国と呼ばれるようなアメリカやイギリス、またスイスなどの富裕層がどのような金融サービスを利用し、資産運用に向き合っているのかを理解することは、個人のフィナンシャルプランニングを行う上で有益であると思うようになりました。

     そこで今回の記事では、これまでは見聞きした私の体験などをレポートにさせてください。

     以前UBSのスイス本社を始め、スイス系の各プライベートバンクなどの本社を訪ねる機会に恵まれたことがありましたので、その際にご教授頂いた各社の具体的な戦術や、クライアントアプローチなどについてお伝えしたいと思います。


    【スイスのプライベートバンク】

     スイスは、ヨーロッパの十字路と呼ばれ交易が盛んに行われていたため、為替業が古くから発達していました。またスイスは国連をはじめとした国際機関の本部やオフィスを多数誘致しており、さらに各国の王族、貴族、富豪の資金を保全・保管しています。

     そのような背景から、スイス金融機関に対する信頼は厚く、特に富裕層向け金融サービスを行うスイスのプライベート・バンク(Private Bank)が近年再び注目を集めています。

     プライベートバンクの元々の意味は「経営に無限責任を負うプライベートバンカー(Private Banker)が所有し、経営する銀行」となります。その形態から、プライベートバンクは自己勘定取引を行わず、結果経営の安定性が優れているといわれて おり、富裕層からの信任を集めています(リーマンショック時にも比較的傷が小さかったことも信頼に繋がっています)。
     またプライベートバンクはいたずらに規模の拡大を追わない所が多く、スタッフ数も数十人から数百人ぐらいまでの小規模な経営規模が一般的です。

     余談ですが、広く誤解されている話で、スイスの大手商業銀行として著名なUBSやクレディ・スイスは、厳密に言えばプライベートバンクではありません。正確には「プライベート・バンキング・サービスも提供しているスイスの大手商業銀行」となります。

     以下はプライベートバンク、またはプライベートバンクサービスを提供するスイスの金融機関とその特徴を一社一社紹介したいと思います。


    1.Berenberg

     Berenbergは、最古のドイツ銀行と言われており、1590年までその起源を遡ることが可能なヨーロッパの名門です。

    その顧客への提案プロセスですが、
    1)まず顧客を分析する
    2)そして、大きな投資戦略を決定します
    3)そして、更に詳細化し戦術を決定します
    4)ここまで決まって、投資を実行します
    5)その後のレポーティングなどを継続します

    というようになっており、基本を重視しつつ、大変丁寧なプロセスを重視しています。


    2.Clariden Leu

     Clariden Leu(クラリデンロウ)は、クレディスイスグループに所属し、アジアでも香港やシンガポールにも進出しています。ただ大多数の RM(リレーションシップマネージャー)はドバイにおり、インドの富裕層市場をカバーしており、該当地域では大手の一角となっています。

     メイン顧客は日本円にして預かり資産25億円ほどの顧客ですが、25億円を超えるとクレディ・スイスとのコ・ワークとすることがルールとなっています。

    こちらの顧客への提案プロセスは、
    1)顧客ニーズの把握
    2)投資経験・許容度の確認
    3)投資提案
    4)ポートフォリオマネジメント

    となっています。特に2)投資経験・許容度の確認の部分を大事にしている印象でした。


    3.Credit Suisse 

     クレディ・スイス銀行はスイスのチューリッヒに本社を置くユニバーサル・バンクです。
     プライベート・バンキング、インベストメント・バンキング、アセット・マネジメントの3部門から成り立っています。その他の有名金融機関が持つようなマーケット部門がないため、金融危機時も安定して収益を上げていました。

     ちなみに、クレディ・スイスは早くから日本に参入した金融機関として知られています。戦後間もなくから国債引受業務など、機関投資家や事業法人向けの証 券・投資銀行業務などを行ってきました。また、オルタナティブ投資などのアセット・マネジメント業務にも力を入れています。

     現在も、金融資産10億円以上の顧客を対象にしたプライベートバンクビジネスを東名阪に拠点を構えて展開しています(2011年末にHSBCのプライベートバンク部門を吸収し一気に拡大させています)。

    顧客への提案プロセスに関しては、
    1)顧客ニーズ分析
    2)顧客理解
    3)投資経験/許容度確認
    4)投資戦略の決定
    5)実行

    となっており、非常に「顧客を知る(Know your client)」ための時間が他社よりも長くなっています。


    4.Pictet

     日本でもプライベートバンクやアセット・マネジメント会社として知名度の高いピクテですが、欧州でのビジネスでは、「税」、「ファイナンシャルプランニ ング」や「資産管理」などというキーワードを明確に発信しているように、「資産全体の最適化をどうするのか?」、また「長期的に見て、どのように資産運用 を行っていくか?」を重要視しています。

    顧客への提案プロセスは上記にもふれましたが、
    1)税や金融関連状況の分析
    2)ファイナンシャルプランニング
    3)投資戦略の決定
    4)投資提案
    5)アセット管理
    6)レポーティング

    となっており、フロントで担当するRMに、プロダクトスペシャリストやポートフォリオマネージャーに加え、税理士や弁護士などで構成されたチームで、長期的に顧客と世代を超えて付き合っていっている印象です。まさに老舗のプライベートバンクといえます。

    5.UBS

     今から10年以上前にUBSは独自に「クライアント・アドバイザリー・プロセス(顧客提案プロセス)」というものを開発しました。それを活用して、クライアントのカテゴリー化などを実施してきました。これがキッカケとなり、他社も追随したと言われています。

     国内の金融機関が営業社員の成果把握のために活用しているようなシステム(セールスの成績が一覧になる)をスイスでも使っており、セールスの育成に KPIを設定しています。KPIの中には顧客接触頻度なども全て盛り込むなど、収益だけではない総合的な評価を実施している様子が伺えます。

    UBSの顧客提案プロセスは、
    1)顧客のニーズと投資目的をよく聞き、理解する
    2)1)のニーズを解決するようにデザインされた提案を行う
    3)顧客に選択肢を与え、判断を助け、同意を得た後に実行する
    4)そして、継続的にレビューを行い、リバランスなどの提案を行う

    となっており、非常に基本に忠実という印象です。


    6.Vontobel

     Vontobelはチューリッヒに本拠を置く、1936年設立のスイス系プライベートバンクです。個人および機関投資家に対してサービスを提供しており、特に投資銀行部隊とチームを組んでのウェルスマネジメントを得意としています。

    顧客提案プロセスは、
    1)顧客ニーズの明確化
    2)データの収集
    3)顧客分析準備
    4)明確な戦略の定義
    5)戦略の実行
    6)定期的な戦略のレビュー

    となっております。特に、2)データの収集という部分が特徴的です。


     以上6社について見てきましたが、スイスの各金融機関の共通点として、「Listen!! 聴く力=共感力」を大変重視していることが伺われます。多く の大手銀行のキャッチコピーが「Listen」となっているように、まず顧客の声に耳を傾け、そして潜在的なニーズを十二分に把握し提案することが一番大 切だという考え方になります。
     全世界の金融機関で言われることだとは思いますが、その中でもスイスの各社は飛びぬけて重要視している印象です。

     ただ、そのプライベートバンクの聖地スイスでも、新しいバンカー達は、この最低限のことですらできていないのが現状であるとの話もしばしば耳にします。


     以上、以前にスイスを訪れた際のまとめなどをお届けさせてい頂きました。スイスのような金融先進国だからこそ、「顧客に耳を傾ける」「顧客と投資戦略を練る」ことなどを大変重視しており、余計に基本に忠実であることは我々に大切なことを教えてくれている気がします。
     「自分を担当してくれるセールスやプランナーは本当に自分の話を聞いているのか?」は良い金融アドバイザーと付き合う上で重要なチェックポイントということですね。

    以上、今回の記事となりました。
    また次回、宜しくお願い致します。

    冨田和成
    株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO


    冨田和成プロフィール

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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