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懸念された米国債デフォルトは、債務上限問題の期限とされた17日を直前にして共和党の譲歩でギリギリ回避されました。また、民間格付機関による格下げ も、今までのところ決定されていません。協議難航が伝えられた10月9日には43ベイシスポイントまで急騰した米国債の信用保証料(5年物国債)は35ベ イシスまで低下してはきました。(9月時点では23ベイシス程度でした)
米国の財政交渉は完全に妥結したわけではなく、条件付き協議持ち越しとなったわけで、来年1月15日をめどに再び米国版ねじれ国会バトルも予想されま す。とは言え、一時、共和党は米国債デフォルトも意に介さないと伝えられ悲観論優勢になりましたが、議会がデフォルトを避ける決断をした事実には少し希望 がありそうです。一方、16日間の連邦政府の閉鎖により、世論調査で共和党指示が大幅に低下した、と報じられました。来年が選挙年であることを考えれば共 和党の行動も柔軟になるのではないかと期待したいところです。
16日間の米国政府機関の閉鎖による経済への影響が心配される中、米大統領諮問委員会は今年の第4四半期のGDPを0.25%程度下げ、民間部門で12 万人の雇用減少(10月1日~12日の期間)になるという試算を昨日発表しました。長引いたバトルの有害さは今後の経済指標に表れてくるでしょう。
市場の関心は財政問題から米国の金融政策の行方に移りました。量的緩和第3弾(QE3)の今年中の縮小はないだろう、というのが直近のコンセンサスにな りつつあります。これまで、バーナンキ連邦準備委員会(FRB)議長は、経済指標を見ながら検討していくというコメントを繰り返してきました。経済指標の 発表は、政府機関の閉鎖により遅れています。経済指標が発表されなければ、金融政策変更の根拠もなくなります。
雇用状況は物価と共に米国金融政策が達成すべき2本柱の一つです。毎月第1金曜日に発表される雇用統計は重要指標として常に注目されます。速報性という 面でも重要な指標です。今月は政府機関(この場合は労働省)閉鎖のために、4日から昨日22日に9月分が発表されました。9月分は予想より弱い数字だった ので、量的緩和縮小の実施が更に延びるだろうという見方が優勢になっています。為替相場ではドル売り、株式相場では金融緩和による過剰流動性が続くことか ら買いにつながりました。
9月末から10月22日までの対米ドルでの主要通貨は全て上昇に動いています。最も上昇したのは豪ドルの4.19%、ついでニュージーランド・ドルの 2.58%、ノルウエイ・クローネも2%近い上昇。そしてユーロも1.88%上昇して今年の対ドル高値(2月)1.3712を上抜け1.38を目前です。 為替政策が柔軟になったとされる中国人民元も上昇しました。日本円は、0.1%程度の小幅上昇となっていますので、全体の動きとして、基調はドル売り、円 はレンジ内推移。ドル以外に対して、円安状態と言えます。
これまで利下げが続いた豪ドルは、豪中央銀行であるRBAの最近の声明文で利下げの可能性が遠のいたとされ底打ち、上昇に転じてきました。直近で発表さ れたインフレ指標が予想よりも高かったことも豪ドル買いにつながっています。また、同じオセアニア通貨であるニュージーランド・ドルは前号でも述べました が、金融政策の次の手が利上げとされていることから上昇が続いています。豪ドルやニュージーランド・ドルは株式市場が好転するとリスク選好で買われる通貨 の代表です。
ユーロもドル売りの受け皿になっています。このコラムでも何回か取り上げましたが、今年の7月に安値をつけてからじわじわと上昇チャンネルの中で動いています。
国民に抵抗された財政緊縮策によりユーロ圏の多くの国が貿易収支、経常収支が好転を見せています。ただ、景気はまだ大きく好転したわけではなく回復途上 に過ぎません。ドラギ欧州中銀総裁も未だに回復のためには政策面で「何でもやる」と繰り返していることも奏功してか、ドイツの株式指標であるDAX指数を はじめスペインIBEX35指数なども高値をとってきています。期待先行ともいえるのでしょう。
また、ユーロ危機で逃げた資金が戻っているのもありそうですが、このユーロ高は、不景気とデフレ下の通貨高という見方も強くあります。
対円で135円台に上昇したユーロ。欧州向け輸出が多い企業には好材料でしょう。
ただ、物価で比較すると1ユーロ135円は高すぎます。日本人観光客は、ユーロ圏での買い物は高すぎると感じるでしょう。1ユーロ=1.4ドルも欧州への米国人観光客を減らすかもしれません。米国の混乱が落ち着いてくれば、調整される可能性があるでしょう。
さて、レンジ内での推移となっているドル・円相場。米国のデフォルト回避のニュースで一時99円すれすれまで上昇する場面がありましたが、ドル安基調の 中、上値重く98円を中心に上下しています。先日発表された9月の日本の貿易収支も予想より赤字幅を広げ、貿易赤字は長期化の様相ですが、相場の材料とし ては織り込み済みとも言えます。
消費増税による景気悪化をサポートする日銀の追加金融緩和は実施されても来春以降。米国の金利は10年債で直近2.5%まで低下してきましたので、日本 国債10年物金利が0.6%割れと低下しているものの金利差は一時より縮小して円安サポートとはいきませんが、日米の量的緩和政策の出口時期予想のギャッ プは円安の材料の一つではあります。積極的な円買い材料はないのですが、円安の新鮮な材料も乏しいという状況です。レンジ相場はもうしばらく続きそうで す。米国経済状況が鍵を握ることも変わりないでしょう。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*10月23日13時執筆。
本号の情報は10月22日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
米国の財政交渉は完全に妥結したわけではなく、条件付き協議持ち越しとなったわけで、来年1月15日をめどに再び米国版ねじれ国会バトルも予想されま す。とは言え、一時、共和党は米国債デフォルトも意に介さないと伝えられ悲観論優勢になりましたが、議会がデフォルトを避ける決断をした事実には少し希望 がありそうです。一方、16日間の連邦政府の閉鎖により、世論調査で共和党指示が大幅に低下した、と報じられました。来年が選挙年であることを考えれば共 和党の行動も柔軟になるのではないかと期待したいところです。
16日間の米国政府機関の閉鎖による経済への影響が心配される中、米大統領諮問委員会は今年の第4四半期のGDPを0.25%程度下げ、民間部門で12 万人の雇用減少(10月1日~12日の期間)になるという試算を昨日発表しました。長引いたバトルの有害さは今後の経済指標に表れてくるでしょう。
市場の関心は財政問題から米国の金融政策の行方に移りました。量的緩和第3弾(QE3)の今年中の縮小はないだろう、というのが直近のコンセンサスにな りつつあります。これまで、バーナンキ連邦準備委員会(FRB)議長は、経済指標を見ながら検討していくというコメントを繰り返してきました。経済指標の 発表は、政府機関の閉鎖により遅れています。経済指標が発表されなければ、金融政策変更の根拠もなくなります。
雇用状況は物価と共に米国金融政策が達成すべき2本柱の一つです。毎月第1金曜日に発表される雇用統計は重要指標として常に注目されます。速報性という 面でも重要な指標です。今月は政府機関(この場合は労働省)閉鎖のために、4日から昨日22日に9月分が発表されました。9月分は予想より弱い数字だった ので、量的緩和縮小の実施が更に延びるだろうという見方が優勢になっています。為替相場ではドル売り、株式相場では金融緩和による過剰流動性が続くことか ら買いにつながりました。
9月末から10月22日までの対米ドルでの主要通貨は全て上昇に動いています。最も上昇したのは豪ドルの4.19%、ついでニュージーランド・ドルの 2.58%、ノルウエイ・クローネも2%近い上昇。そしてユーロも1.88%上昇して今年の対ドル高値(2月)1.3712を上抜け1.38を目前です。 為替政策が柔軟になったとされる中国人民元も上昇しました。日本円は、0.1%程度の小幅上昇となっていますので、全体の動きとして、基調はドル売り、円 はレンジ内推移。ドル以外に対して、円安状態と言えます。
これまで利下げが続いた豪ドルは、豪中央銀行であるRBAの最近の声明文で利下げの可能性が遠のいたとされ底打ち、上昇に転じてきました。直近で発表さ れたインフレ指標が予想よりも高かったことも豪ドル買いにつながっています。また、同じオセアニア通貨であるニュージーランド・ドルは前号でも述べました が、金融政策の次の手が利上げとされていることから上昇が続いています。豪ドルやニュージーランド・ドルは株式市場が好転するとリスク選好で買われる通貨 の代表です。
ユーロもドル売りの受け皿になっています。このコラムでも何回か取り上げましたが、今年の7月に安値をつけてからじわじわと上昇チャンネルの中で動いています。
国民に抵抗された財政緊縮策によりユーロ圏の多くの国が貿易収支、経常収支が好転を見せています。ただ、景気はまだ大きく好転したわけではなく回復途上 に過ぎません。ドラギ欧州中銀総裁も未だに回復のためには政策面で「何でもやる」と繰り返していることも奏功してか、ドイツの株式指標であるDAX指数を はじめスペインIBEX35指数なども高値をとってきています。期待先行ともいえるのでしょう。
また、ユーロ危機で逃げた資金が戻っているのもありそうですが、このユーロ高は、不景気とデフレ下の通貨高という見方も強くあります。
対円で135円台に上昇したユーロ。欧州向け輸出が多い企業には好材料でしょう。
ただ、物価で比較すると1ユーロ135円は高すぎます。日本人観光客は、ユーロ圏での買い物は高すぎると感じるでしょう。1ユーロ=1.4ドルも欧州への米国人観光客を減らすかもしれません。米国の混乱が落ち着いてくれば、調整される可能性があるでしょう。
さて、レンジ内での推移となっているドル・円相場。米国のデフォルト回避のニュースで一時99円すれすれまで上昇する場面がありましたが、ドル安基調の 中、上値重く98円を中心に上下しています。先日発表された9月の日本の貿易収支も予想より赤字幅を広げ、貿易赤字は長期化の様相ですが、相場の材料とし ては織り込み済みとも言えます。
消費増税による景気悪化をサポートする日銀の追加金融緩和は実施されても来春以降。米国の金利は10年債で直近2.5%まで低下してきましたので、日本 国債10年物金利が0.6%割れと低下しているものの金利差は一時より縮小して円安サポートとはいきませんが、日米の量的緩和政策の出口時期予想のギャッ プは円安の材料の一つではあります。積極的な円買い材料はないのですが、円安の新鮮な材料も乏しいという状況です。レンジ相場はもうしばらく続きそうで す。米国経済状況が鍵を握ることも変わりないでしょう。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*10月23日13時執筆。
本号の情報は10月22日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)