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いわゆるSell in Mayという投資格言がある5月も今週で終わろうとしています。昨年の5月のジェットコースター相場は記憶に鮮明に残っていますが、今年の5月は日本に限っていえば株も為替もボックス圏相場に終始しそうです。
昨年のSell in Mayの大きなきっかけは、米国のFRB前議長バーナンキ氏の量的緩和策第三弾の段階的終了発言でした。あれから1年。FRBは 今年1月から毎月100億ドルずつばら撒きを減らし現在に至っています。今後の関心事は、いつ金利を上げるのか?という点でしたが、前号でも記しました が、米国の長期金利は潜在成長率などの諸条件と照らしても低い水準で推移しています。10年債は2.5%水準。好調な米国経済指標が発表されても反応薄 く、不思議な動きを見せています。
先般公表された米国の4月の金融政策決定委員会(FOMC)の議事録には、金融緩和継続について委員会メンバーの認識は一致していることが示されている一方、出口戦略について議論がなされていることが分かりました。
出口戦略をスムースにするために、中央銀行の政策金利であるFF金利の誘導方法や手段のテストを繰り返していく、とありますが、他方でFRBの資産売却 については触れていませんでした。現在、米国の利上げの時期は来年2015年の中盤から後半が有力とされていますが、利上げしても、市場(特に住宅市場) への影響を軽微にするため、保有資産はそのままで緩和状態は続くとの推測もできます。
イエレン議長は、就任前に2014年度中の利上げに含みを持たせた発言をして市場が過剰反応した経験から学んだのか、誤解を呼ぶような発言を控えるようになりましたが、水面下で出口についての議論が進んでいることには注目しておきたいと思います。
さて、利上げ時期など遠い将来のことのように、米国の長期金利は低位こう着して、為替市場に影響を及ぼしています。ドル・円相場は先週の日銀総裁会見後 に一時100円80銭水準まで下落したものの、101円~103円のボックス内での動きに終始しています。5月は102円24銭が始値なので、それ以上で 引けないと4月に続いて、月足陰線引けになりますが、102円が重くなりつつあるのは日米金利の縮小がじわじわ効いているからでしょう。
6月に金融緩和策が発表するとみられる欧州中央銀行。ユーロ・ドル相場は1.40に迫った5月月初、欧州中銀ドラギ総裁の6月緩和発言から対ドルで 1.7%近く下げ、直近では1.36台前半で推移しています。DAXに代表される欧州株式市場は大きく買われ、債券市場では長期金利が低位水準を試してい ます。今後の金融政策の方向性が表れる2年債はドイツ国債で見る限り0.048%まで低下。日本国債の0.078%を下回る水準まで下がってきました。
ドラギ総裁は、これまで「何でもやる」発言等の口先介入だけで、何も政策は実行せずに市場に期待をもたせただけでしたから、6月5日の政策委員会ではついに具体的な政策が発表されるだろう(今度こそ)と予想されています。
では、一体どんな政策を実行するのか?
可能性として言われているのが、
・利下げ(現在の政策金利0.25%を0.10~0.15%に)、
・中央銀行の預金金利にマイナス金利を適用、
・銀行貸出(LTRO)を通じて圏内の企業への信用を緩和する、
可能性は低いと思われるのが、日米のように大規模資産購入をする、です。
日米英の中央銀行のバランスシートに比べると、欧州中銀のバランスシートは減少傾向にあり、それもユーロ高の背景にもなっています。もし大規模な資産購 入策が発表されれば、ユーロは大きく売られるでしょう。発表される政策がインパクトが弱いとみられた場合、ユーロ・ドルは買い戻されるでしょう。また、あ る程度、政策が評価された場合でも、ドル金利が低位にある現在、ユーロの下値は限定的になる可能性は高いと思います。ユーロ相場は、欧州への輸出比率の高 い日本企業の株価とも相関が高いので注目しておく必要があります。
ユーロ高対策も目的とされている欧州の金融緩和策も米国の金融政策の行方に左右されます。為替相場を見るうえで、引き続き米国金利の動向を注視していきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*5月28日13時執筆
本号の情報は5月27日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
昨年のSell in Mayの大きなきっかけは、米国のFRB前議長バーナンキ氏の量的緩和策第三弾の段階的終了発言でした。あれから1年。FRBは 今年1月から毎月100億ドルずつばら撒きを減らし現在に至っています。今後の関心事は、いつ金利を上げるのか?という点でしたが、前号でも記しました が、米国の長期金利は潜在成長率などの諸条件と照らしても低い水準で推移しています。10年債は2.5%水準。好調な米国経済指標が発表されても反応薄 く、不思議な動きを見せています。
先般公表された米国の4月の金融政策決定委員会(FOMC)の議事録には、金融緩和継続について委員会メンバーの認識は一致していることが示されている一方、出口戦略について議論がなされていることが分かりました。
出口戦略をスムースにするために、中央銀行の政策金利であるFF金利の誘導方法や手段のテストを繰り返していく、とありますが、他方でFRBの資産売却 については触れていませんでした。現在、米国の利上げの時期は来年2015年の中盤から後半が有力とされていますが、利上げしても、市場(特に住宅市場) への影響を軽微にするため、保有資産はそのままで緩和状態は続くとの推測もできます。
イエレン議長は、就任前に2014年度中の利上げに含みを持たせた発言をして市場が過剰反応した経験から学んだのか、誤解を呼ぶような発言を控えるようになりましたが、水面下で出口についての議論が進んでいることには注目しておきたいと思います。
さて、利上げ時期など遠い将来のことのように、米国の長期金利は低位こう着して、為替市場に影響を及ぼしています。ドル・円相場は先週の日銀総裁会見後 に一時100円80銭水準まで下落したものの、101円~103円のボックス内での動きに終始しています。5月は102円24銭が始値なので、それ以上で 引けないと4月に続いて、月足陰線引けになりますが、102円が重くなりつつあるのは日米金利の縮小がじわじわ効いているからでしょう。
6月に金融緩和策が発表するとみられる欧州中央銀行。ユーロ・ドル相場は1.40に迫った5月月初、欧州中銀ドラギ総裁の6月緩和発言から対ドルで 1.7%近く下げ、直近では1.36台前半で推移しています。DAXに代表される欧州株式市場は大きく買われ、債券市場では長期金利が低位水準を試してい ます。今後の金融政策の方向性が表れる2年債はドイツ国債で見る限り0.048%まで低下。日本国債の0.078%を下回る水準まで下がってきました。
ドラギ総裁は、これまで「何でもやる」発言等の口先介入だけで、何も政策は実行せずに市場に期待をもたせただけでしたから、6月5日の政策委員会ではついに具体的な政策が発表されるだろう(今度こそ)と予想されています。
では、一体どんな政策を実行するのか?
可能性として言われているのが、
・利下げ(現在の政策金利0.25%を0.10~0.15%に)、
・中央銀行の預金金利にマイナス金利を適用、
・銀行貸出(LTRO)を通じて圏内の企業への信用を緩和する、
可能性は低いと思われるのが、日米のように大規模資産購入をする、です。
日米英の中央銀行のバランスシートに比べると、欧州中銀のバランスシートは減少傾向にあり、それもユーロ高の背景にもなっています。もし大規模な資産購 入策が発表されれば、ユーロは大きく売られるでしょう。発表される政策がインパクトが弱いとみられた場合、ユーロ・ドルは買い戻されるでしょう。また、あ る程度、政策が評価された場合でも、ドル金利が低位にある現在、ユーロの下値は限定的になる可能性は高いと思います。ユーロ相場は、欧州への輸出比率の高 い日本企業の株価とも相関が高いので注目しておく必要があります。
ユーロ高対策も目的とされている欧州の金融緩和策も米国の金融政策の行方に左右されます。為替相場を見るうえで、引き続き米国金利の動向を注視していきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*5月28日13時執筆
本号の情報は5月27日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)