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投資スタンス
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投資スタンス

2015-02-06 12:52
    昨年11月の「論点整理」でも書きましたが、今政権に対しては、まずは不明瞭な点をクリアにする(行政予算における積極的な開示も)とともに、障害となっている既得権を減らし、地方のコンパクトシティー化を促すなどのローコスト・オペレーションの出来る息の長い国造りをお願いしたい。


     さて、昨年から続くカジノ株式市場ですが、国内では日銀が指数関与を強めたことで一層不透明な市場になっています。公的資金の入り具合で毎日大きく乱高下しますし、個別銘柄に至っては玩具のように売買されている銘柄が多数あります。
     また年金も株式購入を増やしていることから、指数自体が下がり辛くなったため乱高下する中でも中途半端に価格を維持してしまう故、値ごろ感も出ず、同時 に相場を動かしたい投機ファンドや値動きだけに注目する短期資金がかく乱要因となっているため、ローカルな資金や中長期資金が一層入り辛くなっているよう に感じます。企業の成長に投資する市場ではなくなり、株価を利用した、まさに鉄火場となっています。


     金融操作だけで物価を上げるなど無理をすればするほど金融市場は不安定になります。資源安により日本の交易条件が改善しつつあり同時に税収も増えたのですから、この機会を逃さず、余裕があるうちに痛みを伴う構造改革に着手することが望ましいはずです。

     まずは経済と財政の立て直しを優先し、憲法議論などは慌てず時間を掛け国民との対話を深めてゆけば良いのでしょう。一政治家の信念のためでは無く、国民のための政治が出来る政権なのかが注目されます。

     今回のISILの人質殺害事件にしても、自衛権とテロ対策を混ぜこぜに論じたり、ひたすら被害者親族へのインタビューばかりで視聴率を狙い、そしてマヌケなコメントを繰り返す軽薄メディアに惑わされぬよう気を付けたいところです。


     資産バブルが膨れ始めている日本ですが足元はどうなのか?

     株価の面ではまだバブルと言えるほどではありません。PER16~17倍は概ね適性ですし、現在の為替や資源価格、取引条件等に大きな変動が無ければ暫 くは上場企業の収益が落ちるとも思えません。課題となっているのは株主資産の有効活用が出来ていない非効率な企業(低PBR銘柄など)を減らし、また投機 的資金に攪乱されないような市場監視体制や法整備を進めることです。それら次第でもっと上がる余地が生れると思われます。


     その一方で不動産については首都圏の優良物件は随分と値上がりし、利回りも3%レベルに達しています。立地が悪ければまだ5~6%の物件もありますが、 REITなどファンド勢も金は集まるものの入れる物件探しで血眼と聞いています。何せ今こそ稼がなければ何時稼ぐのか?と言える業種ですから。中国などの 海外富裕層からの買付も増えていますが、そろそろ安心して買えるレベルでは無く、「どちらかと言えば売る時期に入った」と国内の専門家は言います。利回り 面から近いところでは2006年後半のイメージです。


     ただし、ECBもQEを始めたばかりで、日本の流動性供給もまだ続きそうです。米国が明らかな利上げトレンド入りをしない限りは依然として世界的な過剰流動性は続きます。

     過去の例からも株価も不動産価格も近しい値動きをしますが、まだ投資家達がバブルに踊っているほどの様子もありませんので、今しばらくは現状維持以上の 環境が続くと感じます。注意すべきは、それこそ海外発の想定外の動きを感じた時には直ぐに逃げられるようにと心掛けておくことでしょう。くれぐれも慎重 に。


     と・・・、そんな中にあって。

     昨年秋に石川臨太郎さんのメルマガにあった日○プラスト(7*91)に気になる動きがあったので書きたいと思います。
    (編集部注:有料メルマガのコラムにて取り上げています)

     昨年11月初旬に決算の上方修正があり、「少なくとも2割くらいは上がるかも?」などと感じたものの、700円台だった株価がその後あっという間に 1,700円を超えました。買われた理由としては好調な自動車部品会社が物色されたと言うことなのでしょう。急な値動きでしたので残念ながら小職は買えま せんでしたが(笑)。

     しかし、それから間もなくの12月末に単体の大幅下方修正(連結には影響していませんが)を発表したため「なんだか嫌な雰囲気だなぁ~」と感じました が、何と!その後の下落途中の1月8日に自己株の大量売り出しを発表しました。しかも発行済みの20%も!ただでさえ35%もの自己株を抱え始末に困って いたのでしょうが、株価が上がった機会を利用して換金しようと企んだものと推察します。
     これによりピークから30数%も下げていた株価が発表後一週間で更に20%も暴落しました。つまり、上方修正発表により僅か1か月間で倍以上の株価になり、その後の1か月で高値から50%も暴落して元の株価水準に戻ってしまった訳です。
     そして売り出し価格が決まった先週は900円前後で空売りの買戻しと新規期待買いの両方で下げ止まり、受け渡し日の1月27日から出来高も急増するのですが、この数日の買いは主幹事である某みずほ証券が中心だったのでしょうか?

     何とも唐突な、自己株売却を挟んだ株価暴騰と急落。

     そもそもあの時の小職の印象は「この上方修正なら2~3割くらいは上がるかも?」といった程度でした。それが寄り付きこそ5%高だったものがその日のう ちに900円までスルスルと買い上げられ、その後数日は横ばいになったので「急だけど、まぁ、自動車部品はこんな程度だろう」と言った感覚でした。何故な らこの業種は株主軽視でメーカーを向いて仕事をしている低バリュエーション、つまり万年割安株の一員でしたから。

     ところがエアバック問題も絡めて僅か一か月弱で株価が2倍以上にも急騰したことには驚きました。
     その後の12月後半は急騰の反動で売られたものと思われますが、1月8日の売り出し発表日からは新たに信用売り(空売り)を膨らませながら再度下落し、そして受渡し日前日に878円の安値を付けた翌日に出来高が急増しつつ売り残が一気に減りました。


     この一連の流れで穿った見方をすれば、想定外の株価上昇に喜んだ日○プラスト(発行会社)は持て余していた自己株(PBRも1倍を超えていたし)の売却 を主幹事に相談し、幹事手数料が欲しい某証券は既存投資家へのダメージなど考慮せず大量売却に加担したというものです。何せ20%もの株式が一気に放出さ れるのですから下げる可能性は高く、これに投機筋も空売りで参戦し、中には借株で売却しつつ取得した売出し株を品渡しに廻して確実に利益を稼いだファンド 筋もいたのではと推察します。
     これなどは個人にはできない芸当ですし、これほどの急上昇と下落をした中でインサイダーを怪しむべき動きも感じられます。当局はしっかりと監視しているのか?

     もしこのような発行体(上場企業)と幹事(大手証券会社)による安易な売却判断が実態であるなら、知識や情報が少ない一般の個人投資家は堪ったものでは ありません。「貯蓄から投資へ」などと綺麗な言葉を使いつつ、まさに!政府と財界がグルになって素人の金を巻き上げている構図です。

     財務的な観点からすれば、この低金利なら資金が必要な際には株式の配当を払うより出来れば借り入れや社債による調達のほうがコストも低いはずで、しかも PBR1倍以下の会社ですからROEも向上します。そしてまた本来なら株価が大きく下落しそうな需給案件に対しては投資家保護の観点からも指導したり緩和 する方法を模索するのが主幹事会社の役割と考えますし、同時に行政側でもそれを防ぐ規制を布いたり法整備をすべきですが、何度のことながら投資家保護の掛 け声とは裏腹に放置されたままになっています。これでは安心して株式投資をすることは出来ません。


     日本は貯蓄超過と言われますが、政官財の都合優先で、結果として散々に損をさせられてきた経験から個人が慎重になり貯蓄にウエイトを置いているのは正常 な姿と感じます。それよりも過剰な現金を抱えたまま株主軽視の経営や失敗だらけのM&Aを続ける法人こそが貯蓄超過といえます。全てではありませんが。


     メディアは盛んに「個人貯蓄が銀行に800兆円も眠っている」と煽りますが、実態は無駄な現金をため込んでいるのは法人部門であり、最後の拠り所となる 現金を個人が消極的運用に回すのは当たり前なのです。個人投資家が安心して投資できるための市場整備を怠ったまま「さあ投信だ、NISAだ」と、何とかし て個人資産の世代間移転を促し消費に結び付けたい、そして大手金融機関の収益に結びつけたいなどを目的として官民挙げての大合唱をしています。果たして昨 年からNISAで株や投信を買って儲かっている個人投資家がどれほどいるのか?


     経済波及効果が高い新築の住宅購入を(何とかの一つ覚えのように)奨励している経産省や国交省方針より性質が悪いと言わざるを得ません。

     既得権者への痛みを伴わない付け焼刃の政策が続くことで資産バブルの膨張と資本市場のカジノ化が進む一方、肝心な管理態勢や法整備が追い付いていませ ん。個人投資家は様々な観点から慎重に投資先を選び、安易に金融機関の甘言や行政の煽り記事に乗らないスタンスを堅持していただきたいと思っています。そ れがひいては詐欺投資に引っかからない転ばぬ先の杖的な発想でもあると考えています。

    (街のコンサルタント)


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)
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