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株式市場にはおよそ3600社が上場していますが、それぞれに事業の内容は異なり、当然のごとく収益水準や収益性も異なっています。創業から今日までの企業活動の歴史を読み取りながら投資を敢行されている億の近道の読者は既に多くの企業の歴史を見ておられるかと思います。
ビジネスはその時代ごとに盛衰があり、ゴーイングコンサーンである企業は時流に沿うように経営資源を仕向けながら収益を確保しようと懸命な努力を重ねています。
人、物、金の経営の3要素を組合せて成長を図ろうとする日本企業の多くはそれに技術やサービスなどの無形資産が付随して経営を下支えしています。アベノ ミクスで環境が良くなっている時こそ事業改革にはチャンスですが、キャッシュリッチな老舗企業においては今後の生き残りを賭けた経営戦略に迫られている姿 があります。
経営革新を拡大指向でM&Aなどを駆使して発展させるやり方もあれば、拡大より縮小を選んで、改革を図り時流に乗った事業を見出そうとするやり方が見られます。
和歌山市に本社を置くノーリツ鋼機(7744)は1961年11月に設立された写真DPEラボ機器メーカーです。写真のプリントはPCやカメラ付携帯電 話の普及によって家庭用プリンターでのプリントが主流になってしまいましたのでDPE店向けの業務用現像機の需要が減退し、稼ぎ頭のアナログ現像機は縮小 していますが、それに対応して同社はこれまで蓄積してきたキャッシュをM&Aや医療機器などの新規事業に振り向けて生き残りを図ろうとしています。
このことが評価され2012年の安値283円から2013年5月に987円まで株価は3倍になったことは記憶に新しいかと思います。株価が300円前後 で開かれた決算説明会に出席した私は現在の若手社長の話を聞いた直後に、多くの友人に「買いだ!」と叫んだものです。M&Aでいきいきという中高年向け通 販会社を買収したとの話を聞いたからです。
キャッシュリッチな企業だけに保守的なままでは衰退するのですが、この時は、いきいきが中高年向けに業績好調だとの話を別ルートで聞いていましたのでピンときたのです。
企業というのは良い時と悪い時が極端に見られます。経営者の視野が狭いと市場の限度やビジネスの成長の見方に狂いが生じても簡単には対応ができないとい うことです。投資家はその点、駄目だと思えばより成長が見込めるビジネスに取り組んでいる企業に乗り移れば良いのですから案外楽です。
そのノーリツ鋼機の業績は好調だったいきいきの業績が停滞し早くも今期減益を余儀なくされていることから、このところ伸び悩み気味でしたが、またテイ ボー社という新たな医療機器、材料メーカーのM&Aによって蘇りつつあります。生き残りを賭けた積極的なM&Aが同社の経営陣の施策となっているようで す。
ただ、それによって財務内容は有利子負債が増加し、悪化しつつあるように思われます。収益性の向上を早期に実現させてかつての経常利益100億円台をクリアしていくことが課題であるかと見られます。
一方で縮小戦略を選択したのが東京・港区芝に本社を置く東京機械製作所(6335)です。同社は仕手性のある銘柄だというのが株式市場のかつての評価でしたが、それは保有する土地の含み益が膨大だと見られたこともありま
す。
残念ながらかつての仕手系銘柄としての趣は薄れ、読者離れが起きている紙媒体の新聞メディアの印刷機械会社として衰退の道を歩んでいる企業に投資家の関心が寄せられることはないと考えられての長期の株価低迷が見られます。
しかしながら、同社は現在デジタル印刷機器の開発に切り替えて復活を図ろうとしています。企業改革はそれ以外にもエネルギー関係や新規事業の模索につな がっています。保有していた工場用地を売却し長期借入金を返済し、極めて身軽なキャッシュリッチな財務内容に変化しています。
時価総額は68億円で実質保有現預金は97億円となっています。このうちの退職給付債務35億円を差し引いても現状は62億円を自社で有効活用できる企業体となっています。
400名余りの連結従業員数は今後の事業活動にとっては財産ではありますが、時代を担う新たな人材を採用する余裕ももっていると見られます。
昨年は経営トップの突然の訃報があり、一時的に創業家から非創業家に経営が代わりましたが、現状は若返りを図る人事が取られ、現在の芝龍太郎氏へと再び 創業家に移行しました。同社の株主は創業家が株式を3%程度保有しているだけで分散しています。いつでも経営陣が交代されてもおかしくない状況にあると見 られます。
敵対的買収防衛策は現在は採られていませんので、いつまた新たな資本家が株式取得に動き出すかわからない状態にあります。
赤字が続く企業に魅力はないと思われるかも知れませんが一度吟味してみる価値はあるかと思われます。
新聞社の設備投資動向と賞を取ったデジタル印刷機の米国での受注動向が今後のポイントとなります。メンテナンスビジネスなど変動の激しい受注産業から安定した収益モデルにどのように転換していくかも今後のビジネスにとっては鍵を握っています。
日本最古の新聞輪転機メーカーが選択した縮小均衡の道が新たな成長の道につながるのかを株価の動向とともに皆さんと見守っていきたいと思います。
(炎)
※このコラムは、有料メルマガ「炎の投資情報」2/23号と同様のものです。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
ビジネスはその時代ごとに盛衰があり、ゴーイングコンサーンである企業は時流に沿うように経営資源を仕向けながら収益を確保しようと懸命な努力を重ねています。
人、物、金の経営の3要素を組合せて成長を図ろうとする日本企業の多くはそれに技術やサービスなどの無形資産が付随して経営を下支えしています。アベノ ミクスで環境が良くなっている時こそ事業改革にはチャンスですが、キャッシュリッチな老舗企業においては今後の生き残りを賭けた経営戦略に迫られている姿 があります。
経営革新を拡大指向でM&Aなどを駆使して発展させるやり方もあれば、拡大より縮小を選んで、改革を図り時流に乗った事業を見出そうとするやり方が見られます。
和歌山市に本社を置くノーリツ鋼機(7744)は1961年11月に設立された写真DPEラボ機器メーカーです。写真のプリントはPCやカメラ付携帯電 話の普及によって家庭用プリンターでのプリントが主流になってしまいましたのでDPE店向けの業務用現像機の需要が減退し、稼ぎ頭のアナログ現像機は縮小 していますが、それに対応して同社はこれまで蓄積してきたキャッシュをM&Aや医療機器などの新規事業に振り向けて生き残りを図ろうとしています。
このことが評価され2012年の安値283円から2013年5月に987円まで株価は3倍になったことは記憶に新しいかと思います。株価が300円前後 で開かれた決算説明会に出席した私は現在の若手社長の話を聞いた直後に、多くの友人に「買いだ!」と叫んだものです。M&Aでいきいきという中高年向け通 販会社を買収したとの話を聞いたからです。
キャッシュリッチな企業だけに保守的なままでは衰退するのですが、この時は、いきいきが中高年向けに業績好調だとの話を別ルートで聞いていましたのでピンときたのです。
企業というのは良い時と悪い時が極端に見られます。経営者の視野が狭いと市場の限度やビジネスの成長の見方に狂いが生じても簡単には対応ができないとい うことです。投資家はその点、駄目だと思えばより成長が見込めるビジネスに取り組んでいる企業に乗り移れば良いのですから案外楽です。
そのノーリツ鋼機の業績は好調だったいきいきの業績が停滞し早くも今期減益を余儀なくされていることから、このところ伸び悩み気味でしたが、またテイ ボー社という新たな医療機器、材料メーカーのM&Aによって蘇りつつあります。生き残りを賭けた積極的なM&Aが同社の経営陣の施策となっているようで す。
ただ、それによって財務内容は有利子負債が増加し、悪化しつつあるように思われます。収益性の向上を早期に実現させてかつての経常利益100億円台をクリアしていくことが課題であるかと見られます。
一方で縮小戦略を選択したのが東京・港区芝に本社を置く東京機械製作所(6335)です。同社は仕手性のある銘柄だというのが株式市場のかつての評価でしたが、それは保有する土地の含み益が膨大だと見られたこともありま
す。
残念ながらかつての仕手系銘柄としての趣は薄れ、読者離れが起きている紙媒体の新聞メディアの印刷機械会社として衰退の道を歩んでいる企業に投資家の関心が寄せられることはないと考えられての長期の株価低迷が見られます。
しかしながら、同社は現在デジタル印刷機器の開発に切り替えて復活を図ろうとしています。企業改革はそれ以外にもエネルギー関係や新規事業の模索につな がっています。保有していた工場用地を売却し長期借入金を返済し、極めて身軽なキャッシュリッチな財務内容に変化しています。
時価総額は68億円で実質保有現預金は97億円となっています。このうちの退職給付債務35億円を差し引いても現状は62億円を自社で有効活用できる企業体となっています。
400名余りの連結従業員数は今後の事業活動にとっては財産ではありますが、時代を担う新たな人材を採用する余裕ももっていると見られます。
昨年は経営トップの突然の訃報があり、一時的に創業家から非創業家に経営が代わりましたが、現状は若返りを図る人事が取られ、現在の芝龍太郎氏へと再び 創業家に移行しました。同社の株主は創業家が株式を3%程度保有しているだけで分散しています。いつでも経営陣が交代されてもおかしくない状況にあると見 られます。
敵対的買収防衛策は現在は採られていませんので、いつまた新たな資本家が株式取得に動き出すかわからない状態にあります。
赤字が続く企業に魅力はないと思われるかも知れませんが一度吟味してみる価値はあるかと思われます。
新聞社の設備投資動向と賞を取ったデジタル印刷機の米国での受注動向が今後のポイントとなります。メンテナンスビジネスなど変動の激しい受注産業から安定した収益モデルにどのように転換していくかも今後のビジネスにとっては鍵を握っています。
日本最古の新聞輪転機メーカーが選択した縮小均衡の道が新たな成長の道につながるのかを株価の動向とともに皆さんと見守っていきたいと思います。
(炎)
※このコラムは、有料メルマガ「炎の投資情報」2/23号と同様のものです。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)