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為替市場動向~ユーロ安はまだ進む?超強力な緩和政策とギリシャ離脱懸念~
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為替市場動向~ユーロ安はまだ進む?超強力な緩和政策とギリシャ離脱懸念~

2015-03-21 12:30
    3月9日、欧州中銀ECBによるユーロ版QEが始まりました。月間600億ユーロの資産購入プログラムの本格的始動です。政策は少なくとも、2016年9 月までの継続を前提としていますが、物価目標である2%近くの目途が立つまで期限は限定せずに続行される意向を示されました。

     デフレ回避を目標とした今回のECBの政策の凄いところは、加盟国の多様な債券を対象としている」「期限を限定しない」量的緩和政策である点に加えて、 「マイナス利回りの国債についても条件付きで購入」という他国の中央銀行に例がない政策である点です。この条件はドラギECB総裁が示した「欧州中銀の預 金ファシリティ金利マイナス0.2%を下回らない」という見解です。実際、マイナス金利となっているドイツ連銀債5年物もECBにより購入されたと伝えら れました。


     前回のコラムで も記しましたように、国債市場の需給の引き締まりから欧州各国の国債利回りは、「某一国」を除いて、10~20BPさらに低下。ドイツ国債10年物は 0.3%台から0.2%台に10BP低下したのをはじめ、スペインやイタリア等の周辺国ではほぼ20BP程度の利回り低下,ドイツとの利回り格差は縮小。 株式市場は量的緩和開始後に大きく上昇して、ドイツDAX指数は16日に12,000に乗せました。

     欧州の画期的な量的緩和が、同様に量的緩和を継続する日本の株式市場の上昇に大きく影響したのはご存じの通りかと思います。


     ユーロ相場は、緩和実施前から売り込まれ、対ドルで1.10を切れてからは米国の好調な雇用統計の数字も影響あり1.0458という2003年以来の安 値を示現しました。対円でも、一瞬127円割れもあり、猛スピードでの下落を演じました。直近では、米国FOMC開催を控えてさすがに下落が一服してポジ ション調整のためか、ここ数日は1.05~1.06台を行きつ戻りつとなっています。


     市場注目の米国の金融政策決定を行うFOMCが17~18日開催され日本時間19日未明に声明が発表される予定です。利上げについて「忍耐強くなれる」という文言が削除されるのか、そのままになるのか?或いは他の文言に替わるのか?を市場は辛抱強く待っている状態です。

     ブルームバーグによれば、エコノミスト調査で69%が「注目される文言は別の言い方に替えられる」と予想。また20%は削除のみの予想と回答しているとのこと。

     「忍耐強く」が削除されれば、6月に利上げが実施される可能性は高い市場は反応する、とされますが、声明とともに発表される経済予測でインフレ予想がど う示されるかも重要です。FRBが目安とする2%より低い場合には、利上げする「合理的な確信」を必要するとの文言が入る可能性があり、その場合は、利上 げについて中立的な色合いになるかもしれません。

     また、悪天候の影響とも言われる最近の米国経済指標の予想外の弱さ、或いはダントツのドル高の米経済への悪影響についてのコメントが含まれた場合には市 場はドル売りに反応する可能性があります。コメントの解釈により上下に激しく反応するでしょう。特に、米国の利上げを織り込んできたドル高基調ですので調 整のタイミングになる可能性があります。


     2月末から昨日までの通貨パフォーマンスでは、ユーロ相場、米ドルのみならず、一部通貨(ブラジルレアル、ノルウエイクローネ等)を除いてほぼ全面安の 展開でした。上記もしたように、スピードが早過ぎるために累積した売りポジションの調整も入っていますが、米国の利上げ期待が主要予想の6月から年後半予 想に変わりドル独歩高基調が和らいだとしても、ユーロ安基調は当面は続いていくものと思います。1ユーロ=1米ドルは速度調整後に試しにいくのではないか と思います。背景はECBの量的緩和の強力さと徹底さにあります。また、ギリシャの問題も引っかかります。

     ユーロ加盟国の国債が今回の緩和で買われた中で、ギリシャの国債利回りは10.5%(10年物)まで上昇。昨年は一時5%まで低下し、6%台を中心に取 引されていましたが、政権交代、ユーロ離脱の話が出て以来、利回りは急上昇しました。(ちなみに、ユーロ危機の2012年には30%台あり)


     このところ、市場では「Grexit」というギリシャと離脱の合成語が聞かれます。救済資金の諸条件についてのプラン詳細提出がなされていないことに加 えて、今週20日に期日が来る2600億円相当の負債の支払いもあり、19~20日のEU会議で主要国の首脳への会見を申し込むのと同時に、4月早々ロシ ア訪問をしてプーチン大統領に会見するというEUの嫌がるカードをちらつかせています。Grexitギリシャのユーロ離脱の確率は25%程度という市場の 見方もあります。ドイツのみならず、EU委員会からも離脱を排除しないという見解が聞かれ、すでに離脱ショックや影響を想定しての対策準備に入っていると も推察できますが、起こった場合には混乱は避けられないでしょう。また、「あの地域」でのロシアの影響力が増す可能性など諸々のリスクを考えておく必要も ありそうです。悪い想定が考えすぎであることを祈ります。

     最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    *3月18日11時執筆
     本号の情報は3月17日の米国市場終値レベルを基本的に引用。記載内容および拙見解は参考情報として記しています。

    式町 みどり拝

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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