4月1日、新年度入り、そして、2015年の第1四半期が終了しました。

 今年の第1四半期の為替市場で最も顕著だったのは、米ドル高でした。主要通貨の対米ドルパフォーマンスをみると、上昇した通貨数も上昇幅も限定的で、大半の通貨が下落しました。
 上昇トップはスイス・フラン(+約1.6%)、その他台湾ドル、インドルピー、香港ドル、中国元がわずかに上昇。下落トップはブラジルレアルの18%、 続いてデンマークローネ、トルコリラ、ユーロ、北欧の主に欧州通貨で下落幅は11%程度。その中で、日本円は昨年末比-0.4%程度の下落幅に過ぎません でした。


 世界の殆どの国が、景気浮揚のための更なる金融緩和に進む中、米国は「ゼロ金利から金利を正常化する時期を探る方向にある」ことから、利上げ時期を推測するために、米FRBの出すサインに一番の関心が持たれました。

 世界の金融市場に最も影響を与える米国の金融政策の二つの目的は雇用と物価です。その雇用を示す数字は、数か月連続して好調を示し、早ければ6月にも利上げを期待する向きもありました。
 しかし、3月17,18日に行われた金融政策決定会合(FOMC)後に発表された声明文の内容、そして同時に出された経済と金利見通しの下方修正は、 「利上げはあるだろうけれども、早期ではない」との見方を強くしました。加えて、ドル高の米国経済への悪影響についてのコメントもあり、それまでのドル高 基調に修正が入りました。さらに、中東情勢の地政学的リスクもドル安方向へ影響しました。


 米国の利上げは、今後の経済指標次第ということでしょうが、余程のことがない限り、少なからず利上げをする方向にはあると推察します。現在のゼロ金利を 何とかして正常化しておかなければ、今後の政策の自由度が制限されますので、経済が下方に動いた際に備えて、FRBは利下げという選択肢を持っていたいと ころでしょう。

 現在は、利上げによる市場への影響を最小限にするために時期を慎重に模索し、FRB議長の発言やFOMC声明文により市場が過剰反応しないように対応しているように見受けられます。そのあたり、イエレン議長は大変巧妙という印象があります。

 3月のFOMC以来、ドル高に修正が入ってはいますが、修正の範囲にすぎず、基調としてのドル高に大きな変化はないと見ています。世界を見渡せば、少な くとも利上げの可能性を検討するところは見当たりません。もっとも、英国は時々、利上げをほのめかしますが、コロコロ変わりしやすい傾向も見られます。


 第1四半期のドル高に寄与した大きな要因が、ユーロ安です。欧州中銀は、大規模で画期的な量的緩和を実施して、ユーロ安を通じての景気回復とデフレ回避を目指しています。

 3月のFOMC後、ユーロ対米ドルは、1.04台から一時1.10台に戻る場面がありました。最近のユーロ圏の一部経済指標に予想以上に良い数字も見ら れることもあり、史上でも記録的なユーロ売りポジションが一部解消されつつあります。売られ過ぎからの修正と思われますが、1.04が相場の安値であると 見るのは早計だと思っています。まだユーロが売られる可能性は高いとみています。前回の拙コラムでも記しましたが、欧州中銀のQEのインパクトは相当大き いはずです。


 ユーロ安の背景の一つとされるのが、ご存知ギリシャの問題です。最近発表されたギリシャ中央銀行の数字によれば、ギリシャの銀行からの預金流出が止まら ない状態のようです。欧州中銀がギリシャ向けのオペを行ったのは、安全網としての救済資金ではないかとも報じられています。救済資金を確保するための、ギ リシャのアクションプランが債権者たちと最終合意できるのか、今後も微妙な展開が予想されます。4月25日の欧州財務相会議が注目です。


 次に、ドル円相場です。

 3月10日に122.03高値をつけ、昨年12月8日の121.85高値を超えました。しかし、これが鬼より怖い一文高値だったのか?、未だ分かりませんが、相場はそれを当面のピークにFOMCを経て、一時118円台までつける場面がありました。
 ドル円の直近の移動平均は25日120.18、50日119.32、75日119.22、100日118.95となっており、相場はこの移動平均の周辺での限られた動きに終始し、方向感がはっきりしない状態です。

 振返れば、75円台の円最高値を2011年10月につけてから、3年半近く経過し、円高修正から円安相場が続いています。変動相場制になって以来、基本 的に円高の歴史だったドル円相場。途中、一時的な修正場面はありましたが、3年半の間に約45円も円安方向に戻してきた今回の相場には大きな意味があると 思います。3月10日の122.03が当面の円安ピークになるのか?
 現在の相場は、微妙な水準での動きです。

 このところのドル高(一時的?)修正、日本の貿易収支の改善、相場のスピード調整等で、円高方向へ戻す動きも頷けるところもあります。ただ、一方で、頻 繁に報じられる日本企業による海外企業買収話は円の海外投資の増加をみると、円安要因の背景となる可能性が高いように思います。
 直近では、富士フィルムの米iPS細胞関連企業買収、2月の郵政の豪陸運企業買収は大型案件でした。また、年金基金運用による海外投資増もあります。


 最後に、景気刺激のために金融緩和策、市場自由化策を推進する中国の人民元です。
 ここへ来てアジアインフラ投資銀行へ欧州など44か国の参加が表明され話題になっており、日米をのぞく各国が中国へすり寄る姿勢が見られ、大国として リーダーシップを示している中国政府です。ここへ来て、IMFが進めるSDR通貨バスケットに人民元を加えるように働きかけに動いています。
 これに対して、IMFラガルド専務理事は前向き発言、ドイツ政府は賛意を表明しています。ロンドン市場では人民元建てETFが上場し、元投資が増加する 傾向が強まっています。増えたとはいえ、まだ個人投資家の投資手段は限られてますが、投資の選択肢の一つとして、人民元の動向には引き続き注目しておきた いところです。


 今週は、米国の雇用統計が注目されます。ただ、週末がキリスト教国のイースター祝日なので、本格的な動きはイースター明けかと思います。相場調整には気を付けたいところです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


*3月31日21時執筆
 本号の情報は3月31日の欧州市場日中レベルを基本的に引用。
 記載内容および拙見解は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)