ドル・円相場がレンジを上抜け、26日に2007年以来の123円台をつけてきました。

 118円半ば~120円の範囲内で上下動を繰り返していたドル・円相場は、5月19日に米国の住宅指標が予想を大きく上回ると、レンジ上限を超え120円台へ。
 そして、イエレンFRB議長が先週末の講演で、「年内に利上げする」との主旨の発言をすると、121円台へ上昇。
 さらに、26日の東京市場の夕刻には、祝日明けの欧州市場参入と共に、上値抵抗ポイント今年3月につけた高値122円04銭をブレイク。ストップロスを巻き込んで一気に122円台半ばに上昇するや、米国市場オープンと共に123円台乗せを示現。
 いずれトライか?と思われてきた2007円6月の高値124円14銭が猛スピードで目前にきました。


 4月下旬から5月上旬にかけて、対ユーロを中心にドル高修正が大きく入った時期にも、ドル・円相場は、下値に買い注文が底堅く入り、下押しは限られたものになっていました。

 日本の貿易収支の累積赤字の改善、日銀の更なる金融緩和期待の後退という円安修正の材料があるにも関わらず、日本国内からの対外投資と思われる買いが衰えず、逆に増加していることが相場を支えた大きな要因だったと見られます。
 円は「姿を変えて、外へ行きたい」という強い意思でも持っているかのようです。
 一方、実需以外の投機的(トレーディングの)ドルの買い持ちが減少していて、ポジションが軽かったのも相場上昇のスピードに拍車をかけたようです。


 ドル買いのきっかけとなったイエレン議長の年内利上げ発言には、従来と変わらず今後の「経済指標次第」というニュアンスが含まれていますが、今後の金融 政策の選択肢を広げるためにも、一度は利上げをして正常化しておきたい、という意思も大きく働いているものと思われます。

 先週から発表された米国の経済指標、特に住宅関連指標と消費者物価指数が予想以上に強かったこと、また、耐久財受注などの数字も予想を下回るような数字 ではなかったことは年内利上げ期待を高めていますが、一時的ではなく4月以降の経済指標を「継続的に」注視していく必要があるでしょう。
 まずは、来週末に発表される5月の雇用統計が最も注目されます。


 利上げ期待によりドル買いが進んだ為替市場の一方で、米国の株式市場は利上げを嫌気して反落しています。また、金利市場の動きは少し違っています。

 米国債10年物利回りは5月初旬に欧州の債券利回りが上昇した影響で一時2.3%近くを付ける場面がありましたが、直近では2.15%近辺まで利回りは下がってきて、200日移動平均から下方への動きが見られます。

 また、金融政策の方向性が利回りに影響する米国2年債は、利上げ観測を受けて0.04%程度上昇の0.62%水準ではありますが、大きな動きにはなって いません。米国の政策金利変更の市場予想は9月よりも後にずれると見る向きが多く、利上げした後も大きな金利上昇には繋がらないとの見方が多いように見受 けられます。


 さて、5月の初めに大きく買い戻された通貨ユーロは、欧州中銀幹部によるユーロ高けん制ともとれる発言(量的緩和を強化する旨)等により、戻り高値1.1467から直近1.09割れまで反落しました。
 ギリシャの債務問題が6月に重要な局面を迎えるにもかかわらず、大きな進展が見られないことがあります。このところのドル高には、ユーロ安が進んだことも影響しているでしょう。ギリシャ債務問題の進展次第では、今年の安値である1.04を見にいく可能性もありそうです。


 昨年の夏もドル円相場はレンジを抜けた後にエネルギッシュに動きましたので、今回も大きな動きになる可能性はあるでしょう。ただ、今の水準123円台を買うということは、相場が125円を超え更に130円方向へと上昇することが前提になります。
 そこまでのドル高を見るとすれば、鍵を握るのは米国景気の本格的回復にあるでしょう。そう考えると、春以降の米経済指標をもう少し見ていきたい気がしています。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*5月27日午前1時執筆
 本号の情報5月26日の米国市場始値水準を主に引用しています。
 なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)