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今週、ギリシャ救済問題に明かりが見えたことで、リスク回避の動きが緩みました。
株式市場が大幅上昇の反応を見せ、日経平均は18年ぶりの高値まで急騰してきました。6月に入ってからの反落で、もうひと押しを待っていた投資家の方も 多かったのではないかと思います。このところ、やや下向き、または、こう着を予想する声が多くなっていたことも、ポジション的に大反発、急騰に繋がってい たのでしょう。常に何が起こってもいいように、兆しを見逃さず要準備ということでしょうか。
為替市場の反応は、ギリシャ問題による質への逃避が剥がれたことに加えて、少し後退していた米国のFRBの年内利上げ2回説も出て、米国金利の上昇によるドル高の動きが復活しました。
ドル円は、今月初に125円台をつけた後、日米の要人発言を「警告」として解釈したことから、122円台へ下落。その後は、122円~124円の取引レンジの範囲で動いていましたが、23日の米国時間帯には124円台前半を一時つけています。
また、ユーロ・ドルは5月初旬からの主要取引レンジ1.10~1.14の下限に近い1.11台に反落しました。
ギリシャ救済問題に関しては、ギリシャ国民の殆どがユーロ存続を希望していること、合意なければ年金の支払いもない等で緊縮政策の継続が支持される見通 しになり、またEUはギリシャの出したロシア寄りのカードを懸念して歩み寄ったとの情報も伝わっています。ギリシャは、以前から助けを求めにロシア詣をし ていました。地政学的条件を上手く利用しているということでしょう。
ギリシャの残留とデフォルト回避は、今のところユーロ売りに繋がったようです。欧州諸国の金利が、低下したことも影響しているかもしれません。リスクが 低下したマーケットでは、低金利通貨売りの取引が活発化します。ユーロ・ドルは、まだレンジ相場内ではありますが、ユーロ安トレンドに戻る可能性は高いと 思っています。
さて、5月月初から6月23日まで、対米ドルで上昇した主要通貨は、中国元(+0.5%)でした。他の通貨が対米ドルで多かれ少なかれ下落した中で、ドル・中国元だけはほぼ同じ水準で推移しました。
中国元については、中国政府の政治的な思惑が見えます。中国政府は、人民元のIMFの特別引き出し権(SDR)通貨バスケットへの組み入れの実現を目指しているとされ、年内に元の許容変動幅の拡大もあるとの観測が強まっている、とブルームバーグニュースが報じています。
先般、日本の大手商社も初めての人民元債を発行すると伝わり、元マーケットは世界的に広がりつつあります。対円での6月の上昇率は22%と主要通貨の中で最大です。個人的にも、引き続き注目しています。
6月中に最も注目されていたのが、17~18日に開かれた米国の金融政策決定会合FOMCでした。
中でも注目されていたのが、各理事による今後の金利見通しでした。今回の見通しは、前回のものより幅が広くなっており、各理事の予想が分かれているので はないか、金利上げは緩慢なものになるだろうとの見方が広がり、それまで上昇していた米国の金利は反落。米国債10年物は2.30台後半から2.2%台後 半へ下がっていましたが、今週になっての利上げ説が強くなったことで、23日には2.41%までありました。
FRB関係者から繰り返されるコメントは「利上げは経済指標次第」です。このところ発表される米国の経済指標はバラツキはありますが、住宅関連の指標は 強いものが続いています。住宅関連は、金利の方向性と強い関連がありますので、金利の底入れをみて、住宅市場が動いている可能性もありそうです。
また、雇用統計では、雇用者数の増加だけでなく、賃金も少しずつ上がりつつあります。イエレンFRBは同じコメントを繰り返しながら、少しずつ市場心理を慣らしながらスムースに利上げへの道を進んでいるように見えます。
ドル円相場は、当面は122円を当面の下限(以前のレンジの上限)に125円を上限として動くという予想が大半です。特に上限である125円を、2週間 前の黒田日銀発言への警戒からタフな上値抵抗線として黒田シーリングと呼ぶ向きもあるようです。スピード調整を重ねて、タフとされるこの水準を何度かトラ イした後、ブレークしていくのではないかと思っています。
米国の利上げによる日米金融政策の差という材料の他に、ドル円相場をサポートしているとされているのは、以前から指摘されている日本企業の海外投資のためのドル買いニーズです。
黒田発言で反応が消されましたが、日本の保険会社による米保険会社の大型買収というニュースがありました。この保険会社の大型買収では既に用意された資 金からとの情報があり、市場でのドル買いには繋がらないようですが、日本企業の海外M&Aは為替が円安水準になっても衰えず、相場の下値を支えている印象 です。
今後、更にこの動きが進んでいくのかどうかが、相場の鍵を握る要素の一つとして注目しておきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*6月24日13時執筆
本号の情報6月23日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
株式市場が大幅上昇の反応を見せ、日経平均は18年ぶりの高値まで急騰してきました。6月に入ってからの反落で、もうひと押しを待っていた投資家の方も 多かったのではないかと思います。このところ、やや下向き、または、こう着を予想する声が多くなっていたことも、ポジション的に大反発、急騰に繋がってい たのでしょう。常に何が起こってもいいように、兆しを見逃さず要準備ということでしょうか。
為替市場の反応は、ギリシャ問題による質への逃避が剥がれたことに加えて、少し後退していた米国のFRBの年内利上げ2回説も出て、米国金利の上昇によるドル高の動きが復活しました。
ドル円は、今月初に125円台をつけた後、日米の要人発言を「警告」として解釈したことから、122円台へ下落。その後は、122円~124円の取引レンジの範囲で動いていましたが、23日の米国時間帯には124円台前半を一時つけています。
また、ユーロ・ドルは5月初旬からの主要取引レンジ1.10~1.14の下限に近い1.11台に反落しました。
ギリシャ救済問題に関しては、ギリシャ国民の殆どがユーロ存続を希望していること、合意なければ年金の支払いもない等で緊縮政策の継続が支持される見通 しになり、またEUはギリシャの出したロシア寄りのカードを懸念して歩み寄ったとの情報も伝わっています。ギリシャは、以前から助けを求めにロシア詣をし ていました。地政学的条件を上手く利用しているということでしょう。
ギリシャの残留とデフォルト回避は、今のところユーロ売りに繋がったようです。欧州諸国の金利が、低下したことも影響しているかもしれません。リスクが 低下したマーケットでは、低金利通貨売りの取引が活発化します。ユーロ・ドルは、まだレンジ相場内ではありますが、ユーロ安トレンドに戻る可能性は高いと 思っています。
さて、5月月初から6月23日まで、対米ドルで上昇した主要通貨は、中国元(+0.5%)でした。他の通貨が対米ドルで多かれ少なかれ下落した中で、ドル・中国元だけはほぼ同じ水準で推移しました。
中国元については、中国政府の政治的な思惑が見えます。中国政府は、人民元のIMFの特別引き出し権(SDR)通貨バスケットへの組み入れの実現を目指しているとされ、年内に元の許容変動幅の拡大もあるとの観測が強まっている、とブルームバーグニュースが報じています。
先般、日本の大手商社も初めての人民元債を発行すると伝わり、元マーケットは世界的に広がりつつあります。対円での6月の上昇率は22%と主要通貨の中で最大です。個人的にも、引き続き注目しています。
6月中に最も注目されていたのが、17~18日に開かれた米国の金融政策決定会合FOMCでした。
中でも注目されていたのが、各理事による今後の金利見通しでした。今回の見通しは、前回のものより幅が広くなっており、各理事の予想が分かれているので はないか、金利上げは緩慢なものになるだろうとの見方が広がり、それまで上昇していた米国の金利は反落。米国債10年物は2.30台後半から2.2%台後 半へ下がっていましたが、今週になっての利上げ説が強くなったことで、23日には2.41%までありました。
FRB関係者から繰り返されるコメントは「利上げは経済指標次第」です。このところ発表される米国の経済指標はバラツキはありますが、住宅関連の指標は 強いものが続いています。住宅関連は、金利の方向性と強い関連がありますので、金利の底入れをみて、住宅市場が動いている可能性もありそうです。
また、雇用統計では、雇用者数の増加だけでなく、賃金も少しずつ上がりつつあります。イエレンFRBは同じコメントを繰り返しながら、少しずつ市場心理を慣らしながらスムースに利上げへの道を進んでいるように見えます。
ドル円相場は、当面は122円を当面の下限(以前のレンジの上限)に125円を上限として動くという予想が大半です。特に上限である125円を、2週間 前の黒田日銀発言への警戒からタフな上値抵抗線として黒田シーリングと呼ぶ向きもあるようです。スピード調整を重ねて、タフとされるこの水準を何度かトラ イした後、ブレークしていくのではないかと思っています。
米国の利上げによる日米金融政策の差という材料の他に、ドル円相場をサポートしているとされているのは、以前から指摘されている日本企業の海外投資のためのドル買いニーズです。
黒田発言で反応が消されましたが、日本の保険会社による米保険会社の大型買収というニュースがありました。この保険会社の大型買収では既に用意された資 金からとの情報があり、市場でのドル買いには繋がらないようですが、日本企業の海外M&Aは為替が円安水準になっても衰えず、相場の下値を支えている印象 です。
今後、更にこの動きが進んでいくのかどうかが、相場の鍵を握る要素の一つとして注目しておきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*6月24日13時執筆
本号の情報6月23日の米国市場始値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)