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「電子書籍はなぜ使われないのか」で示されたテーマ(『堀江貴文のブログでは言えない話』ほか)
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「電子書籍はなぜ使われないのか」で示されたテーマ(『堀江貴文のブログでは言えない話』ほか)

2013-06-06 13:30
    ◆堀江貴文のブログでは言えない話/毎週月曜日/840円
    http://yakan-hiko.com/horie.html

    ◆ゲンロンサマリーズ/毎週火曜日・金曜日(第5週は除く)/420円
    http://genron.co.jp/summaries/

    6月5日(水)に東京・ゲンロンカフェにて行われた東浩紀氏と堀江貴文氏によるトークインベント、「電子書籍はなぜ使われないのか」に参加してきました。途中、横道にそれることも多かったのですが、基本的には、「プラットホームさえ作れば、面白いコンテンツが増える」と主張する堀江氏に対し、東氏が「プラットホームを作るだけでは、(自分が)面白いと思えるコンテンツが生まれない」と反論するというスタイルでした。

    ◆堀江貴文氏の示す成功例

    「プラットホームさえ作れば、面白いコンテンツが増える」という堀江氏の主張を支えるのは、具体的な成功例です。livedoorブログにより藤沢数希氏らの新たな才能が注目されたし、Youtubeによってヒカキン氏のようなアーティストがマネタイズに成功していると説明します。そして、堀江氏は「電子書籍」に限ると成功例は少ないかもしれないが、動画投稿サイトでは「ゲーム実況」のようなジャンルが生み出され、高い人気を博しているとの指摘をします。こうした意見に対して、東氏も反論はしませんでした。

    ◆東浩紀氏の懸念1:「質」の低下

    東氏も新しいプラットホームが生まれたことによって、より多くの人間にマネタイズできる可能性が広がったことは否定しません。しかし、マネタイズに特化した結果、コンテンツの「質」を高める必要がなくなると、東氏は懸念を示します。

    具体的な例として、「わざわざ」クラウドファウンディングで資金を集めてチェルノブイリに取材に行くよりも、ゲンロンカフェで「漫然と」津田大介氏とトークをしているだけの方がもうかると説明します。こうした東氏の説明に、堀江氏も理解を示します。

    本来は、より高い所に理想形があるにもかかわらず、より手軽な方法でマネタイズできてしまうため、コンテンツの「質」が高められなくなる。東氏は、このことを数理計画問題に例え、「局所的最適解」にハマった状態にあると指摘します。

    ◆堀江貴文氏の回答

    東氏の懸念に対する堀江氏の回答は明確です。「バランスが大事なのではないか」。「漫然と」トークライブを行ってお金を集めつつ、たまに、チェルノブイリに取材に行けばよい。東氏も堀江氏の回答に理解を示します。しかし、「わざわざ」取材を行う必然性がないと、結局は「局所的最適解」にハマるのではないか。これが東氏の主張となります。

    ◆東浩紀氏の懸念2:「教育」の不在

    東氏は「電子書籍」の成功例として、佐藤秀峰氏の漫画『ブラックジャックによろしく』の無料化によるマネタイズの成功を挙げます。しかし、たとえ佐藤氏が否定したとしても、佐藤氏が売れた背景には出版社の存在があったと指摘します。東氏自身も、文芸誌の在り方には否定的な見解を示していますが、文芸誌が有能の新人を育てる上で機能していたことは認めています。

    旧来のメディアでは、このような「教育」が機能していましたが、「電子書籍」では、こうした「教育」が機能していない。つまり、現在の「電子書籍」は、他のメディアで成功した人が進出してマネタイズに成功しているだけであり、「電子書籍」の中だけでは「教育」が行われていないと、東氏は指摘します。

    ◆まとめ

    東氏が「教育」の問題を指摘したのは、トークイベントの終盤だったため、堀江氏からの明確な回答はなかったと思いますが、トークの流れから察するに「新しいプラットホーム」により解決するということに落ち着くのではないでしょうか。この問題は解決することなく、常に議論されていく課題なのだと思います。

    「電子書籍はなぜ使われないのか」というテーマは、直球でこそ語られませんでしたが、このトークイベントにより、その答えは明確になったと思います。まずは、読者にとって魅力的な「新しいプラットホーム」を生み出すこと。その次に、「新しいプラットホーム」の中で、コンテンツの「質」が高められる環境を作り出すこと。この2つが実現すれば、「電子書籍」は使われるようになる。これが結論ではないでしょうか。
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