早熟な人はいるが、わたしは大器晩成タイプだ。なぜそう言えるかと言うと、これまで一度も芽が出なかったからだ。
 花開くのがいつなのか、どんな大輪の花が開くのか、楽しみにしてきた。今年こそ花開くのではないかと待ち続けて六十五年になる。それなのにまだ萌芽も見られない。この調子でいくと、花開くまであとどれぐらいかかるか分からない。これからは長生きできるかどうかが勝負だ。
 だが問題がある。長生きできるような生活をしていないのだ。これまで自然に従う生活を心がけてきた。自分の身体に耳を傾けて、身体が欲していれば肉の脂身を食べ、身体が休息を欲していれば休んできた。
 その結果、どう考えても長生きできない生活を送っている。なぜ自然に従うと長生きできないのか納得できないが、それが事実だ。 
週刊文春デジタル