人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
 30代初めの頃だった。
「次号、篠山さんのページに登場が決ったよ」
 と、『ドリブ』って雑誌の編集長から電話があった。
 突然の話に、
「僕なんかでいいんですかぁ~」
 と、驚き、返した。
「これで、みうら君も一流だね」
 と、編集長は言うのだが、一体、何に於いての一流なのかはよく分らない。
 ま、そんなことより、篠山紀信さんにポートレイトを撮って頂けるチャンスが遂に回ってきたのだ。
「長年、うちで連載してくれてるから、その御褒美みたいなもんだよ」
 と、今度は笑いながら言った。
 きっと編集長の権限で僕を抜擢してくれたのだろう。どうにせよ、とても嬉しかった。 
週刊文春デジタル