「最初の夜がやってきました」……と、尾野真千子が語り出した時、「あ、朝っぱらからどうしたらいいんだ」とうろたえた。
 畳の部屋に布団が2つ並び、枕元には電気スタンドと、盆に載った水差し。女は髪を解いて浴衣の寝巻。男も浴衣。夫婦の初夜。二人は「互いに好ましく思っている」けれど、それより先に「社会的地位を得るため」に結婚したので、恋愛感情や肉欲は横に置いてある。それでも初夜に並んだ布団に寝て、スタンドを消そうと二人の手が触れあったりすると「どきっ」としたりするわけだが、夫のほうは「大丈夫、指一本触れないから」とやさしく言うのである。
 本当かよ!?
『虎に翼』の、主人公寅子(ともこ)と、夫の優三さんの夫婦生活だ。 
週刊文春デジタル