わたしの文章は簡単に書いているように思われている。テレビでも見ながら片手にカップ麺をもってチャッチャッと書いていると思っている人が多いのではなかろうか。というのも、そうとしか思えないぐらい文章が幼稚だからだ。
 しかし文才がないからこそ、大作家の何百倍も苦しんで書いているのだ。その事実をもっと考慮してもいいのではないか。かりに三歳児が書いたとか、サルがキーボードに打ち込んだ文章なら、驚異の目で迎えられ、はるかに売れるはずだ。わたしが目から鼻に抜ける貴公子のような風貌だから気づきにくいかもしれないが、わたしの文才は幼児並みなのだ。 
週刊文春デジタル