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地政学は生き続けている|THE STANDARD JOURNAL
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地政学は生き続けている|THE STANDARD JOURNAL

2014-06-30 16:48

    おくやまです。


    今回も、「奥山さん!またその話ですか?!」

    というツッコミが冒頭からさっそく聞こえて来そうですが・・・


    「地政学は生き続けている」


    というお話です。


    少し前の話題で、私の生放送の中でも少し触れましたが、

    典型的な「地政学」のニュースがありました。


    ===


    ▼ロシア、ニカラグア運河敷設計画への軍政的支援を保証する

    |The Voice of Russia  ( http://goo.gl/OGUqYH )


    ニカラグア運河の敷設が今年の末に始まる。

    事前の見積りではこの計画にはおよそ400億ドルを要する見込みだ。 

    香港のHKND社(HK Nicaragua Canal Development Investment)

    が主な投資機関となっており、運河の敷設及び

    利用に関する100年間の利権協定を結んでいる。

    ロシアは経済的支援に加え軍政的な支援も行う。

    ニカラグア運河は太平洋とカリブ海とを結びパナマ運河に代替するものとなる。

    完成した場合パナマ運河の2倍の物資輸送が可能になる。


    主な請負・投資機関は香港の企業であるHKND社だが、

    運河の敷設にあたっては外の国の企業の参加が認められている。

    その中でロシア政府は敷設を注意深く見守る立場にある。

    しかし現在ロシアの主な役割はニカラグアの計画に対して

    軍政的な支援を行うことである。


    こうした関係でニカラグア政府はモスクワと特別な協定を締結し、

    その合意のもとロシア艦隊や戦闘機が領海を巡回し

    敷設を想定される挑発行為から保護することとなっている。


    現在のところ協定の期限は2015年の上半期一杯までとされている。

    これに加えニカラグアの領土内にロシア海軍艦隊の拠点が置かれる。

    西側の報道機関では既にロシアがこの機会を利用し

    セーシェル共和国やキューバ、ベトナム、アルゼンチン

    そしてニカラグアに設置予定の軍事基地によって

    この地域での存在を大きなものにしようと急いでいる

    といった誤った報道がされている。


    これに対してロシア連邦外務省の

    セルゲイ・ラブロフ外相は次のように説明を行った。


    「ロシアが国外に軍事基地を建設することはない。

    もちろん海賊行為の取締等を行うために艦隊が頻繁に遠征を行うことはある。

    そのため幾つかの国とはロシアの軍艦が修理や

    食料・水の補給を受け乗組員に休息を与えるために

    各国の港に寄港することについて合意がなされている。

    しかし、アメリカが行っている様に基地を建設するということはない。

    また駐在先の国の領土で行われたあらゆる蛮行に対して

    軍人に特権を保証する様なアメリカが締結した協定に似た

    いかなる協定も結ばれることはない。」


    ===


    ニカラグア?なんでそんな辺鄙なところに?

    とお感じのかたもいらっしゃると思いますが、

    その重要性を簡単に説明します。


    ここ数百年間の歴史をざっと見ると明らかなのですが、

    大国というのは、

    <自分が存在している地域でナンバーワンになってやる!>

    と思うものです。


    第一次世界大戦では「ドイツ帝国」がこれに失敗し、

    第二次世界大戦では「ナチス・ドイツ」と「日本」が失敗し、

    近いところでは、冷戦期に「ソ連」が失敗しております。


    彼らが目指していた「地域ナンバーワン」というのは、

    国際関係の専門用語では「地域覇権」(リジョナル・ヘゲモン)

    と言ったりします。


    さて、この「地域覇権」国が出現することを

    執拗に邪魔し続けてきたすごい国があります。


    もうお分かりですね、そうです、アメリカです。


    しかも、何がすごいのかと言うと、他国の邪魔をしつつも、

    なんと19世紀末の時点から過去100年以上にわたって、

    アメリカこそが世界で唯一、

    「地域覇権」をしっかり(ちゃっかり?)維持し続けているわけです。


    どの「地域」の覇権を達成しているかというと、

    南北アメリカが位置する、いわゆる「西半球」(Western Hemsphere)

    と呼ばれる地域。


    アメリカは、この「地域覇権」を土台というか、

    踏み台として、世界に打って出ている。

    現在は、そういう軍事情勢だということです。


    そのことが良いか悪いかはともかく、


    「西半球を支配している」


    これがアメリカが自国の安全保障を考える上での

    「大前提」となるわけです。


    -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-


    さあ、ツッコミを入れた読者の皆さんも、そろそろ、

    今回、私が言いたかったことが見えて来たのではないでしょうか?


    このアメリカにとっての「大前提」である

    「西半球の支配」という状態に対して、

    中南米のニカラグアという意外な国をターゲットにして、

    挑戦する勢力が出てきました。


    それが中国とロシアというわけです。


    具体的には、上のニュースにあるように、


    1:中国の企業によるパナマ運河に匹敵する大運河の建設


    2:ロシアによるニカラグアの領土内への海軍艦隊の拠点の設置や

    政府の支援など。


    という2つの動きがあります。


    ようするにこれは、

    アメリカにとっては、自らの"庭"である地域に、

    潜在的ライバル国である中ロ両国が、

    大胆不敵にも半ば軍事的に手を突っ込んできた、

    ということなのです。


    詳細については、私のブログも参照してほしいのですが、


    ▼ニカラグア運河の地政学:大計画かサギか

    http://geopoli.exblog.jp/20645056/


    アメリカは、今のところは静観している様子で、

    「中国はこのプロジェクトに失敗するな・・・」

    と見ているようです。


    もっとも、その合間にも、アメリカのコンサルタント会社は

    しっかりと(ちゃっかり(笑))コンサル料をもらっているようですが・・・。


    -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-


    アメリカは過去に自分の庭(=西半球)に介入してきた者には

    「核戦争も辞さない!」というくらい、

    全く容赦のない厳しい反応をしております。


    その典型が、1962年10月のキューバ・ミサイル危機などですが、

    これは賢明なる読者の皆さんはご存知の通りですね。


    果たして今回の中露による「西半球(ニカラグア)介入」は

    一体どこまでアメリカを怒らせることになるのか?


    そして、ここで私たちがよくよく考えなければいけないのは、

    中ロ両国は、最近のオバマ政権の姿勢を「弱腰」と見做して、

    ここぞとばかりにそのチャンスを逃さないという姿勢を

    打ち出してきていることです。


    これこそが、グローバル化した現代でも

    リアリズム的な「チェスゲーム」が

    いまでも世界中で続いているという

    確固たる証拠であり、われわれはここに

    「地政学的な動き」を目撃するのです。


    これで、読者の皆さんも私が冒頭で言及した

    言葉の意味を納得して頂けたのではないでしょうか?


    地政学は生き続けているのです。

    ( おくやま )

    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
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