多くの人たちの感想に表れているように、横浜アリーナ公演は、かつてのX JAPANにはみられない豊かさと幸福感に満ちた、素晴らしいステージだった。
YOSHIKIのDrums演奏は、鍛え抜かれた身体によるものだろう、速い曲が連続する2日間にわたるステージでも余裕を感じるほど素晴らしかったし、TOSHIの声は30年近い歴史の中で、最もコンディションが良かったように感じた。
そしてSUGIZO、HEATH、PATAの見事な演奏。5人の演奏とパフォーマンスは、スーパーバンドというより、結成してまだ数年、まだ20代前半の最も勢いのある若手バンドのような一体感に溢れていた。
そして何より、演奏レベルの高さやファンの期待にちゃんと応える圧倒的なパフォーマンスは、完全に世界レベルだった。
そのステージをじっくり観ることができた僕は観ているうちに、ある確信が揺るぎないものになっていき、過去27年にわたる長い年月を想い、とてつもなく幸せになり、いつしか我を失うほど心を震わせていた。
メンバーと一緒に闘っていたあの頃、気がつくといつも、悔しさや幸福感でよく泣いていたものだけれど、今回のステージを観ながら流した涙は、過去のどんな涙とも違う、新しい涙だった。
その涙は、予想通りX JAPANの「輝く未来」がちゃんと見え始めた、という幸せの涙だったかもしれない。
これまで綴ってきた通り、桁外れに強いYOSHIKIがちゃんとそこにいてくれた、という感動の涙だったかもしれない。
あるいは、X JAPANを守り、ずっとメンバーの心を支え続けている、運命共同体の愛の力を改めて感じ、自分もいつの間にかそのひとりになり始めている、という喜びの涙だったかも知れない。
何より、世界で今、一番幸せかも知れない、子どものような、いや、赤ちゃんのような、メンバーの屈託のない笑顔を見て、心から安心した涙かも知れない。
そして、それがどんな涙であれ、僕は泣きながらその涙がもたらしてくれる新しい幸福感に包まれていた。
それは過去、Xに、X JAPANに、メンバーに、外から持ち込まれたあらゆるネガティブな要素や記憶を、すべて消し去ってくれるほどのとてつもなく強いエネルギーを感じたからだった。
いや、それだけではない。
そんな「夢のような今」を生み落としてくれた源が一体何なのか・・・。その答えが、今回のステージではっきりしたからだった。
今回から僕がこの連載で書いていくことは、すべて、今回の横浜アリーナ公演で見えた「答え」だ。
X JAPANというバンドとそのメンバーが、なぜこれから「輝く未来」を手にすることができるのか、そしてそのことが、普通の日本のアーティストにとって、なぜ、どれだけ、困難なことなのか。
その「答え」を、きちんと書いてみたいと思う。
1. TOSHIの今
2014年9月。
僕は、外国特派員協会の会見に臨むTOSHIの映像を観ていた。
そのちょっと前、世間を賑わした洗脳にまつわる話題については興味が湧かず、一切の情報から距離を置いていた僕だったが、この記者会見は、バンドの現況について語る部分が感慨深い、という知人の話を聞いて興味が湧いたのだった。
見終わった僕は、ああTOSHIらしいな、とか、この子、本当に奇麗な日本語を使うよなぁ、などとしばらく穏やかな気分だったが、先に控えている横浜アリーナとMSGの公演に想いを馳せた途端、何か大切な答えが見つかった気がして、しばらく考え込んだ。
そして突然、僕は明るい気持ちになった。
ちゃんと、ある確信が持てたからだ。
「もう大丈夫だ・・・」
そして、僕は唐突にある光景を思い出した。
1991年9月。
僕は、二人だけの部屋で、TOSHIと向かい合っていた。