【 ART OF LIFE ⑬】
前回触れたシューベルトセクションから、引き続き詳細な音楽解説をしていきたい。
Shubertというセクション名だが、28.つまり譜面でいうと最初の一段(11:49 〜)は、実際のところ、Shubertのフレーズは用いていない、オリジナルなものだ。
デモ音源制作で最初にこのセクションを記録し始めた時、僕はここもシューベルトのフレーズだと勘違いしていた。
それくらいにメロディーはクラシカルだし、展開も芸術的だ。
ただ、確かに和声(コード進行)はYOSHIKIらしい世界ではある。
このセクションの最初のコード進行を、そのままGのキーに置き換えると、C-D-B/D♯-Emとなり、ちょうど「Week End」のサビ、(手首を流れる血を・・・)の、(絡みつけると一瞬のうちに・・・から、・・・おまえの姿を)までの部分のコード進行と同じになる。
そのオリジナル部分からごく自然に、シューベルトのフレーズを用いた部分へと移っていく。
29.〜30.Shubert(12:07 〜)がそうだ。「未完成」の第一楽章のクライマックスのところに登場するフレーズだ。テンポは実際の「未完成」ではもう少し早めだ。
この28.〜30.Shubert のセクション中、厳密に言えば、キーはCm〜Gm〜Dm〜Gm〜Cmとめまぐるしく転調しているのだが、必然性があるからだろう、転調していることをまったく意識させない。
ちなみに、ここで演奏されるシューベルトのフレーズは、ピアノソロ後の後半、43.Shubert(26:27 〜)にも登場するのだが、そこでは「未完成」の第二楽章でクライマックスの際に登場するフレーズも立て続けに展開する。(26:43〜)
つまり「未完成」の第一楽章と第二楽章両方から、クライマックスの美しいフレーズを抜き出し、キーを変え、巧みに「ART OF LIFE」の音楽世界に昇華させる、という、非常に音楽的にレベルの高いことをYOSHIKIはしているのだ。
そこには、大好きな「未完成」と自らの半生を重ね合わせるという、深い芸術性の発露が見てとれる。