マル激!メールマガジン 2016年6月15日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第792回(2016年6月11日)
米大統領選で右も左も大混乱なわけ
ゲスト:会田弘継氏(青山学院大学教授・ジャーナリスト)
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アメリカ大統領選はヒラリー・クリントンが民主党の候補者に指名されることが確実となり、11月の本戦で共和党候補のドナルド・トランプと大統領の座をかけて争うことが事実上決まった。
アメリカの政治は前代未聞の異常事態に陥っている。共和党では政治経験など皆無の不動産王が、暴言を繰り返しながら、名だたる党のエスタブリッシュメント候補を完膚なきまでに打ち破ってしまった。もう一方の民主党も、知名度も経歴も非の打ち所の無いと思われた大本命が、昨日まで民主党員でもなかった老政治家に、ぎりぎりのところまで追い込まれた。二大政党が同時に崩壊の縁に立たされているといっても過言ではない。
アメリカに何が起きているのか。アメリカの思想史を長年ウォッチしてきたジャーナリストで青山学院大学教授の会田弘継氏は、トランプやサンダース躍進の背景にアメリカ社会に鬱積した不満や不安の存在を指摘する。グローバル化が進む中でアメリカの豊かさの代名詞だった「分厚い中間層」が崩壊し、その多くは、低所得層へと没落した。彼らの多くは既存の政治勢力に強い絶望感を抱いている。中でもプアホワイトと呼ばれる白人の低所得層は怒りの矛先を移民や少数民族に仕向けるトランプの支持に回り、多額の学費ローンを抱え、満足な仕事に就くことができない若者はウォールストリートや富裕層批判を強めるサンダースの下に参集した。そうした政治的変動が、今回の大統領選挙の予備選で既成政党に対する反発と反体制派候補への支持という形で顕著になったのだという。
アメリカではもはや保守派が社会を保守できず、リベラル派は再分配を通じた公平の実現が困難になっている。そしてそれは、決してアメリカに限ったことではない。アメリカの大統領選挙の異常事態は、保守とリベラルという従来の政治的な棲み分けが、世界的に困難になっていることの反映と見ることができる。
アメリカの大統領選で表面化した政治的な混乱は何を意味しているのか。保守とリベラルという伝統的な仕分けが成り立たなくなった世界で、何が新たな対立軸となり得るのか。トランプ、サンダース躍進から見えてくる世界の新たな政治的潮流の正体を、ゲストの会田弘継氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・あらためて振り返る、トランプ快進撃の理由
・なぜ、右も左も大混乱なのか
・“下”への憤りがトランプ支持、“上”への憤りがサンダース支持へ
・同様の問題を抱える日本に、処方箋はあるか
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■あらためて振り返る、トランプ快進撃の理由
神保: 今週は米大統領選で、民主党ヒラリー・クリントンVS共和党ドナルド・トランプが確定した週になりました。右(保守派)も左(リベラル派)も大混乱で、一体何が起きているのか、その背景には何があるのか、ということを見ていくのが今回の趣旨になります。宮台さん、最初に何かありますか?
宮台: イギリスではあと2週間も待たずしてEUを離脱するかしないかの国民投票(6月23日)が行われるのですが、これも面白い分断があります。そして、イギリスでは、アメリカで「プアホワイト」と呼ばれているような層と重なる人々が、圧倒的に離脱派なんです。つまりEUに入っているということは、グローバル化に身を晒すことであり、それにより自分たちの職が奪われたと、彼らは感じている。報道によれば、4ポイントほど離脱派が勝っている。
神保: イギリスがEUを離脱するかもしれない。
宮台: これはすごいことです。いずれにしても、イギリスを見ても、もう「保守だ」「革新だ」みたいな話とはまったく違った展開になっています。首相のキャメロンは「もしEU離脱なんてことをしたら、全く未知の不確定なカオスに突っ込むことになる」としていますが、アメリカのトランプ現象に似ていませんか。アメリカもイギリスも、「そんな不透明な領域に入っていいのか?! もういいよ!」みたいな状況です(笑)。