マル激!メールマガジン 2016年7月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第796回(2016年7月9日)
この参院選で問われなければならないこと
ゲスト:中北浩爾氏(一橋大学大学院社会学研究科教授)
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日本は明日、3度目のアベノミクス選挙を迎える(番組は7月9日放送)。2012年の安倍政権成立から3年半の間に、2度の国政選挙が行われているが、安倍首相はそのいずれもアベノミクスを問う選挙と位置付けてきた。しかし、過去2度の選挙では一旦選挙が終わると、安倍政権はアベノミクス選挙の勝利で得た数を使って、秘密保護法や安保法制といった選挙公約とは異なる政治課題の実現にその力を集中させ、数の論理で強硬に成立させてきた。
そしてまた、3度目のアベノミクス選挙である。今週のマル激では、恒例となった選挙直前の「マル激的選挙の争点」を考えてみたい。
今週のゲストで政治学者の中北浩爾・一橋大学大学院教授は、今回の参院選で安倍政権は、巧みな争点隠しを行っていると指摘する。経済政策や社会保障など国民の関心が高い分野で、野党の主張に重なるような政策を掲げることで、対立の構造を見え難くしているというのだ。では安倍政権が隠したい、この選挙の真の争点とは何か。中北氏はずばり憲法改正だと言う。今回の選挙では与党に改憲に前向きな改憲勢力を合わせて、憲法改正案の発議に必要な参議院の3分の2の議席を獲得できるかどうかが、大きなポイントになると見られている。この選挙で改憲勢力が合わせて78議席以上を確保すれば、恐らく戦後初めて憲法改正案の発議が可能となる。
今のところ公明党が憲法9条の改正には慎重な姿勢を見せているため、仮に改憲の発議があったとしても、憲法9条を変更するかどうかは不透明な状況だが、党是に自主憲法制定を掲げる安倍自民党には、とにかく憲法を変えたいという強い野望を持つ議員が少なからずいる。9条にこだわらなければ、意外とすんなり憲法改正の発議が行われるのではないかというのが、中北氏の見立てだ。
かつてアメリカ建国の父トーマス・ジェファーソンは「十分に情報を得た市民は民主主義の基盤である」と語っている。明日の参院選でわれわれは何を選択しようとしているのかについて、各分野の識者へのインタビューを交えながら、ゲストの中北浩爾氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・ディスカッションがなく、政治に関心を持てない時代
・「一内閣10仕事」の安倍政権が改憲を目指す理由
・政策で結びつかない、異常な二極化
・「安倍が嫌なら野党を選ぶ」しかないのか
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■ディスカッションがなく、政治に関心を持てない時代
神保: 今日は7月8日、放送されるのが9日で、10日が参議院選挙です。若干しらけ気味な感じもなきにしもあらずですが、「マル激的選挙の争点」を議論しておきたい。“マル激的”と言っても、奇をてらったものではなく、むしろ本来ここが問われなければおかしいだろう、というオーソドックスな争点です。宮台さん、どうですか。
宮台: 共同通信の世論調査などによると、今回は特に若い世代の選挙に対する関心が非常に低い。おそらく投票率も低くなるという予測です。なぜ、これほどまでに関心が低いのか、というのは論じなければいけないひとつのポイントでしょう。論点が見えないから関心が低いのか、あるいは関心が低いから、論点をコンバージ(集中させる)することができないでいるのか。あるいはそのために必要な政治的なコミュニケーションが、もはや避けられているのか。避けられているとすれば、なぜなのか――いろんな問題があります。論点が何なのかということと、どうしてこれほど関心が低いのかということ。本当は両方論じていくべきことです。