マル激!メールマガジン 2017年3月22日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第832回(2017年3月18日)
迷走する介護保険をどうするか
ゲスト:小島美里氏(NPO法人暮らしネット・えん代表理事)
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 2000年に介護保険制度が導入されて、この4月で17年が経つ。
 当初、介護の社会化がうたわれ、家族の負担を軽減し社会全体で介護を担うための公的保険として大きな期待を集めた介護保険だったが、その後、何度も改正を繰り返すなど迷走を続け、そのたびに利用者も事業者も振り回されてきた。
 そして、今国会にも介護保険法の改正案が提出されている。
 埼玉県新座市で介護事業に取り組む小島美里さんは、既に介護の現場は低所得層のみならず中間層までもが、介護保険の利用ができない深刻な事態に陥っていると指摘する。利用者負担が引き上げられ重度にならないと利用ができないなど、介護保険導入時の「自宅で最期まで」という理念が失われているというのだ。
 背後には介護費用の増大という問題がある。公的介護サービスは利用者の自己負担分(当初1割)を除いた介護保険給付費のうち、5割を40歳以上が負担する介護保険料と残りの5割は国と都道府県・市町村の税金とで賄う仕組みになっている。利用者の増加に伴い、これまで、軽度者のサービスを抑制したり、収入が一定額を超える人の自己負担率を2割に引き上げたりするなど、介護保険給付費を抑えるための措置が取られてきたが、それでも当初3.6兆円規模でスタートした給付費が現在は10兆円を超え、団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となる2025年には20兆円にもなると言われている。
 安倍首相は、来年度の診療報酬/介護報酬の同時改定を、「非常に重要な分水嶺」と国会でも答弁し改革の必要を訴えるが、費用の伸びを抑えるための場当たり的な制度変更を繰り返しても、高齢者が安心できる介護制度となることは期待できない。
 高齢化が進む日本で、老後を安心して過ごすための決め手となるはずの介護保険はどのような変節を経て、今どうなっているのか。介護の現場をよく知る小島美里氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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今週の論点
・“あっても使えない”介護保険
・認知症患者が支援を受けられない「軽度者切り」
・専門家不在の政治が狙うこととは
・当事者運動のない高齢者問題 “プレ当事者”の動きがカギか
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■“あっても使えない”介護保険

迫田: 今回のテーマは「介護保険」です。介護保険は私も取材をしていてついていけないところがあるくらい、どんどん変質しています。そこで、現場でずっと介護保険の事業をしながら、利用者とともに地域をつくってきた小島美里さんにお越しいただきました。
介護保険はだんだん使いにくくなっているという声を聞きます。制度もどんどん変わっていて、言葉もどんどん変わったりするものですから、実際にいざ介護が必要になって使おうと思うと、こんなに使いにくいのかと思う。2月に改正案が出ており、特に来年度、診療報酬(2年ごと)と介護報酬(3年ごと)、両方のお金が同時に改定されます。総理大臣もそれが分水嶺になるだろうと言っているくらいのタイミングで、高齢者のセーフティネットという意味で重要です。

宮台: もともと医療はメディカルということだから、簡単に言うと、ご病気を治すためのシステムです。介護はそうとも限らず、医療とは無関係ではないが、体が弱ったとか、身の回りのことが自分でできなくなった人が、その分を「助けてもらう」こと。本来は概念として別であるはずだし、年をとれば多くの人がそのサービスを受けざるを得ないと考えられていることだから、介護保険ができたときにはそれなりに合理的なシステムだなと思いました。それが時とともにどんどん手厚くなり、使いやすくなるのかと思いきや・・・・ですね。

迫田: 実際現場がどうなのか。小島さんは埼玉県の新座市でずっと介護事業をされてきました。まずはその経緯から教えてください。

小島: 最初にボランティア活動から始めました。ただ、ボランティアで人の命を守るというのはやはり限界があり、介護保険が始まる4年前に、医療法人の中の一部門に入れていただいて介護部門をつくりました。その後に介護保険が始まり、NPOとして独立し、いまは介護保険の事業は5つ、そして障害関係の事業も2つに、配食サービス、高齢者の新しい住まい方などもサポートしながら、20年間動いてきました。介護保険の開始前から振り返ってみると、本当に激動でしたね。