マル激!メールマガジン 2017年11月29日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第868回(2017年11月25日)
独立を強行したカタルーニャは何を求めているのか
ゲスト:田澤耕氏(法政大学国際文化学部教授)
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世界ではイギリスのスコットランドやイラクのクルド人自治州など、ざっと見たたけでも40~50の地域で何らかの独立運動が起きているが、実際に独立宣言まで強行するケースはほとんどない。その意味で、スペイン北東部のカタルーニャ自治州がスペイン政府の反対を押し切って今年の10月1日に独立を問う国民投票を行い、圧倒的な賛成多数を受けて独立宣言にまで踏み切ったことは、近年では希なケースとして特筆されるだろう。
特定の地域で独立機運が高まった時、中央政府との間に大きな摩擦が生じる。憲法で、一部の州や地域の独立を認めている国は恐らく世界には一つも存在しないだろう。そもそも憲法というものは、国を一つにまとめるために存在するものだからだ。ということは、どんな国でも独立宣言=(イコール)憲法違反ということになる。
現在カタルーニャ州は独立宣言以前に持っていた自治権も停止され、中央政府の直接管理下に置かれている。独立を強行することのリスクがもろに顕在化した形だが、それにしてもカタルーニャはなぜそれだけのリスクを冒してまで、独立にこだわったのだろうか。
地中海に面し、フランス国境にそびえるピレネー山脈の通り道に位置するカタルーニャは、歴史的には15世紀にスペイン王国の一部となったが、独自の言語と独自の文化を持ち、住民たちの間にも元々スペイン人としての意識が希薄な地域だった。しかも、一般的なスペイン人と比べると勤勉で、芸術などの面でも優れた人材を多く輩出し、経済的に繁栄していることもあり、むしろカタルーニャ人はスペインに対して優越感を持っていたと、カタルーニャ文化に詳しい法政大学国際文化学部の田澤耕教授は語る。
カタルーニャを自らの管理下に置いたスペイン政府は、12月21日に自治州の議会選挙を行うことを発表している。しかし、世論調査によると現時点では独立推進派が僅かに優勢だという。当面はこの選挙の成り行きが注目されるが、カタルーニャの独立問題が解決するまでにはまだしばらく時間が必要になりそうだ。
元々、相当の自治を認められていたカタルーニャが、ここに来てあえて独立宣言に踏み切ったことに、どのような意味があるのか。これはウエストファリア体制として知られる国民国家の時代の終わりの始まりなのか。世界の他の地域へはどんな影響があるのか。田澤氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・カタルーニャが享受したかつての栄華
・再び豊かになり、「金の亡者」と疎まれることに
・独立宣言に正統性はあるのか
・かえって溝を深める現政府の対応と、今後の注目点
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■カタルーニャが享受したかつての栄華
神保: 今回は僕らがあまりきちんと見てきていなかったテーマを勉強も含めて掘ってみようと考え、カタルーニャの独立を取り上げようと思います。
宮台: 独立と言うと、最近ではユーゴスラビアの領土だったコソボだったり、ボスニア・ヘルツェゴビナだったり、またセルビアなどに多くの問題がありました。それを見ていると、独立することには、多くの場合、血が流れてしまうのだなと。それほどの犠牲を払ってまで独立する、というのは、日本で普通に暮らしているとわからない。単なる自治州ではなく、独立を勝ち取ろうとするのはなぜなのか、という素朴な疑問がずっとありました。
神保: 植民地と宗主国のように、支配/被支配という関係になっているのであれば、独立したいというのも理解できます。
宮台: 1960年代にはそういうことがありました。しかし、特に冷戦が終わって以降の民族紛争はそうではないですね。よく言われることですが、むしろ社会主義のある種の強力な権力のもとで抑圧されていた民族の自治自決の意識が高まって……みたいなことが言われたりします。
神保: 今回のカタルーニャの独立、国民投票の動きというものは、これまでの流れのなかに位置づけられるものなのか、それともまた新たな独立機運というものの走りなのか。
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