マル激!メールマガジン 2018年11月7日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第917回(2018年11月3日)
平成の大合併で低下した防災力を取り戻せ
ゲスト:幸田雅治氏(神奈川大学法学部教授)
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何のための「大合併」だったのかを、今一度確認する必要がありそうだ。
東日本大震災、西日本豪雨などの被災地では、平成の大合併によって併合された地域の防災能力の低下が、災害対応や復旧・復興の遅れの原因になっていることが指摘されている。
平成の大合併は、主に国の財政負担を減らすことを目的に中央主導・政治主導で推し進められた。総務省が財政力の弱い市町村を半ば強引に合併させたことで、それまで3,232あった市町村数が、2010年3月末の時点で約半分の1,727に減った。しかし財政負担の軽減ありきで推し進められた合併は、地域的な一体感のない自治体を無理矢理くっつけることになり、結果的に住民サービスの低下をもたらすなどの弊害がかねてより指摘されてきた。その弊害が顕著に現われたのが災害への対応だったと、総務省の元官僚でもある神奈川大学法学部教授の幸田雅治氏は語る。
東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市は、「大合併」で旧石巻市と周辺の6つの町が合併していたが、河川や地形などによって地理的に分断された地域同士の合併で、産業構造が異なる地域を一つの自治体として括ることには、元々無理があった。そのため、震災時には、新たに併合された地域に十分な情報が伝達されなかったり、復旧段階でも生活支援が遅れるなどの問題が出ていた。大きな市に併合される形となった周辺の市町村では、何をするにも遠くなった本庁におうかがいをたてなくてはならず、時間的なロスも多く発生した。幸田氏は、特に復旧・復興段階で、地域の自己決定力の喪失が大きな問題だったと指摘する。
「財政負担を軽減する目的での合併はうまくいくはずがなかった」と幸田氏は語るが、いつ襲ってくるかわからない災害への対応は待ったなしだ。今後の災害に備えて市町村合併の弊害をどう克服したらよいのだろうか。
幸田氏は、総合支所や分庁舎に地域をよく知る職員を置き、災害時を含めてある程度地域に権限を委譲するなどの方策を考える必要があるだろう。そして何より、住民の意見を聞き、協働してゆく仕組みを作ることが重要だという。
自治体合併の影響は防災だけにとどまらず、教育、福祉、医療など他のサービスにも及んでいる。財政負担の削減は重要だが、住民にとっては死活問題となる基本的な公共サービスが低下してしまっては、何のための大合併だったのかと言わざるを得ない。
基礎自治体の規模はどのくらいが望ましいのか。日本の地方自治はどうあるべきか。「平成の大合併」は住民不在の理念なき合併だったと指摘する幸田雅治氏に、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が聞いた。
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今週の論点
・「大合併」で取り残される被災地
・東日本大震災で見えた防災の課題とは
・合併に対して考えうる、3つの処方箋
・渋谷ハロウィン騒動は、通底する問題だ
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■「大合併」で取り残される被災地
迫田: 今年も災害が相次ぎ、6月には大阪府北部で、9月には北海道で地震がありました。また台風も多く、7月の西日本豪雨では全国で200人以上が亡くなっています。平成30年を振り返ると、この「災害」というのが大きなテーマになりますが、東日本大震災や西日本豪雨の被災地の取材をしますと、「平成の大合併」によって併合された地域の復旧、復興が想像以上に遅れているのではないか、と気付かされることがあります。今回は、今後起こり得る災害に向けていま何を考えるべきか、平成の大合併で衰退した防災力をいかに取り戻すか、というテーマで議論したいと思います。
宮台: 韓国の徴用工問題で、日本が個人賠償をすべきだという判決が出て、日本政府・韓国政府ともに驚いている、という事態になっていますが、この問題と実は関係します。