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マル激!メールマガジン 2019年9月18日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第962回(2019年9月14日)
ロシアとアメリカは新たな冷戦に突入しようとしているのか
ゲスト:小泉悠氏(東京大学先端科学技術研究センター特任助教)
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20世紀後半の国際秩序を支配した東西冷戦が終結して約30年。世界は再び新たな冷戦時代に突入しようとしているのか。
先月8日、ロシア北部のアルハンゲリスク州沖の軍実験施設で5人が死亡6人が負傷するという爆発事故が発生した。軍事専門家の間ではロシアが開発中の新兵器・原子力巡航ミサイル「9M730ブレヴェストニク」の実験中に爆発が起きたとの見方が有力となっている。
原子力巡航ミサイルは昨年18年3月にプーチン大統領が米国のミサイル防衛計画に対抗するために発表した6種類の新型兵器のひとつで、実現すれば事実上半永久的に飛び続けることができるため、普段からこれを多数飛ばしておけば、仮に核攻撃を受けて自国の核兵器が無力化されても、予め飛ばしておいたミサイルによる反撃が可能になるという夢のような兵器だ。ロシアは他にも水中ドローン兵器「ポセイドン」や音速の10倍の速度で飛行できるミサイル「キンジャール」などの新兵器を開発中、もしくは既に配備しているという。
ロシアによる一連の新兵器の開発は、米露間の新たな軍事的緊張を生み出している。しかも、昨年10月にトランプ大統領がINF全廃条約の破棄を表明し、今年8月2日に失効したことで、両国が新たに核兵器開発競争に突入する恐れが現実のものとなっている。
軍事アナリストでロシアの政治・軍事情報に詳しい小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター特任助教は、米露間で新冷戦が再燃する可能性は高くないとの見方を示す。プーチン肝いりの新型兵器にしても、軍事の専門家の間では利用価値のない代物ばかりだとの指摘が多いという。そもそもロシアには、ソ連時代のようにアメリカと競うほどの国力はない。
しかし小泉氏はまた、未だにこういう兵器を本気で開発しているところに、ロシアの危うさが潜んでいるとも指摘する。ロシアの軍事関係者は今でもアメリカと全面戦争に突入する可能性を本気で考えている。自国の勢力圏をアメリカから浸食されているとの思いが強く、常識で考えればあり得ないような事態が起きる可能性を完全に排除することができない。
今回のマル激は、突如として不安定化の様相を見せ始めた国際政治の現状とロシアの世界戦略、INF全廃条約破棄後の世界が安定を保つことができるのかなどについて、小泉氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・ロシアが開発する新兵器「ブレヴェストニク」とは
・新型兵器の数々と、核軍縮の歴史
・ロシアはなぜ、いま軍拡路線に戻ろうとしているのか
・ロシア・プーチン政権の今後と、日本の行く末は
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■ロシアが開発する新兵器「ブレヴェストニク」とは
神保: 先週は大きな話で、米露を中心とした「サイバー戦争」について取り上げました。日本でも大型台風による停電があり、最も暑い時期ではありませんが、すでに熱中症で亡くなった方がいるという報道もあります。サイバー攻撃によりインフラを止めるということは、爆弾を落とすのとはまた違い、真綿で首を締めるように、相手の国を弱らせることができます。今回は核兵器の制限条約がどんどん失効していく、という話題も取り上げますが、サイバーという領域においては、いまのところ条約がない状態です。
さて、日本の経済も民主制全体も、世界の安定があったから享受できたところがあります。そのなかで、どうもまた非常に不安定化しているのではないかということです。日本ではあまり議論されていませんが、世界が不安定化すれば、年金どころの騒ぎではありません。
宮台: 外交の問題や軍事の問題は、あまりニュースになりませんね。小泉進次郎の入閣がどうとか、くだらない話ばかりです。
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