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マル激!メールマガジン 2019年12月18日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第975回(2019年12月14日)
終末期に医療の出番はあるのか
ゲスト:新田國夫氏(医師・新田クリニック院長)
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厚労省が作成した「“人生会議”しとこ」というポスターに対して批判があがり、撤回されるという事態が起きた。「人生会議」というのは、医療関係者や家族とともに、終末期の医療や介護についての意思を事前に決めておくために行うACP(アドバンス・ケア・プランニング)の呼び方として、厚労省が昨年、検討会を開いて決定した表現だ。国民の間に理解が広がっていないため、普及のためのポスターが作られたが、患者や家族の気持ちがわかっていないと患者団体から批判があがり、取り下げる事態となったのだ。
ACPは昨年、厚労省が公表した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に初めて盛り込まれた。このガイドラインは、終末期の患者の人工呼吸器を外したことが明らかになった「射水市民病院事件」をきっかけに2007年に策定されたものだが、その後、高齢化がさらに進む中で作られた改定版に、欧米でも普及しつつあるACPの概念が取り入れられた。
しかし、終末期になって“会議”という形で意思の確認をしたり、ましてや、それを国が奨励することについて、在宅医で臨床倫理学会理事長でもある新田國夫氏は首をかしげる。終末期は、病気や状態によって異なった経過をたどるが、がんの末期などについては、ある程度見通しがつくようになってきているが、それでも亡くなる直前まで、そうした情報を患者や家族と共有しないまま抗がん剤治療が続けられるようなケースもあると、新田氏は語る。 情報を共有し、本人の意思を確認し、その決断を理解し共有するためには、何か標準化された形ではなく、信頼関係のなかで繰り返し話し合いをする必要があると新田氏は言う。
東京都は12月16日から救急搬送の際、ACPが行われている成人で心肺停止状態だった場合は、かかりつけ医に連絡をした上で蘇生を行わない運用を始める。ACPについて、患者・家族、そして医療関係者等が、共通の理解をしておかないと、現場が混乱するおそれもある。
そもそも終末期に医療の出番はあるのか、どうすれば尊厳ある死を取り戻すことができるのかなどについて、在宅医療に携わり、在宅で数多くの看取りをしてきた医師の新田國夫氏と、社会学者の宮台真司氏、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・本質が抜け落ちた「人生会議」の推進
・生命、生活、人生という観点で、人の尊厳を考える
・「医学的な最善」と「患者にとっての最善」を誰が判断するのか
・若い頃から「死」についての議論を
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■本質が抜け落ちた「人生会議」の推進
迫田: いま国が「人生会議」を推進していることもあり、今回は終末期の医療について話をしようと思います。宮台さんは、終末期医療についてどんなイメージがありますか?
宮台: 僕の母がガンで亡くなってから、10年少しが経ちます。そのときに、実際に終末期医療を経験して、どんな医療行為が母の心にいい意味で影響を与えるのか、ということをつぶさに見てきました。またそれとは別に、「人生会議」以前にもともと家族をどのように営んでおくべきなのか、という規範や道徳がなければ、ほとんど意味がありません。家族を支えるどんな関係が必要なのか、ということが抜け落ちたままで、言葉だけで「“こういう風に死にたい”と言っておきましょう」というのはくだらないと思いますね。
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