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半田滋氏:ウクライナへの軍事援助と日本の防衛費2%問題を考える
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半田滋氏:ウクライナへの軍事援助と日本の防衛費2%問題を考える

2022-06-15 20:00
    マル激!メールマガジン 2022年6月15日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1105回)
    ウクライナへの軍事援助と日本の防衛費2%問題を考える
    ゲスト:半田滋氏(防衛ジャーナリスト、元東京新聞論説兼編集委員)
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     ロシアのウクライナ侵攻から100日が過ぎた。依然として出口が見えない戦況が続く中、世界各国の対ウクライナ軍事支援は既に4兆円(約310億ドル。軍事費データはいずれもドイツのstatistaより引用)を突破している。ウクライナの年間軍事予算が約7,600億円(約59億ドル)であることを考えると、これがどれほど異常な金額かがわかるだろう。
     中でもアメリカの対ウクライナ軍事支援が群を抜いており、5月10日までで既に255億ドル(約3兆3,150億円)を超えている。一部の傭兵を除けば、実際に戦っているのはウクライナ軍とロシア軍だが、どうもこの戦争はアメリカ対ロシアの代理戦争の様相を呈してきているようにさえ見える。
     元外交官で外務省の情報課長として情報分析に当たってきた孫崎享氏は、アメリカは意図的に戦争を長期化するような支援を行っているように見えると指摘する。戦争が長期化することでロシアはますます疲弊し、NATOを始めとする西側陣営の結束は固まり、陣営内のアメリカの指導力も強化される。そして、ウクライナ支援の名の下に法外な予算がアメリカの兵器産業に流れ込むことになる。アメリカ兵器産業にとってウクライナは自社の兵器の有効性を証明するショーケースとなっており、主要兵器産業の株価は軒並み高騰中だ。
     ウクライナ侵攻以前から国力が大きく低下し、防衛予算もアメリカの5分の1まで減少していたロシアは、もはやアメリカにとっては脅威ではなかった。しかし、大量の核兵器を持っているだけにロシアはまだ脅威を煽る対象としてはとても有効な駒で、防衛予算を膨らませる格好のネタになる。アメリカにとってウクライナ戦争の長期化は良いことずくめと言っても過言ではない状況なのだ。
     翻って日本では、年内にも予定される「戦略3文書」(「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」)の見直しを睨み、安倍元首相などから防衛費の現在の対GDP比1%から2%への増額や、敵基地攻撃能力の獲得などが盛んに喧伝され始めている。
    日本の防衛費が対GDP比で1%増えると、防衛予算が現在の5~6兆円から10~12兆円に増えることになり、日本はアメリカ、中国についで、堂々世界で三番目に大きな軍事予算を持つことになる。その増額分の5~6兆円があれば、すべての大学の授業料を無償化し、小中学校の給食費もゼロにすることもできる。それを犠牲にして防衛費に回すのであれば、相当のしっかりとした正当性のある内訳と必然性が求められることは言うまでもない。
     防衛ジャーナリストの半田滋氏は、そもそも防衛費2%論は必要な項目を積み上げた結果出てきたものではなく、最後の公共事業といっても過言ではない防衛予算を増額するために、とりあえず2%という大きな枠を押さえておこうという考えから出てきたものだと、これを一蹴した上で、結果的に防衛予算が大幅に増額されれば、その大半はアメリカの兵器を買うことに費やされる上、日本にとっては敵基地を攻撃するためのミサイルの開発などに予算が回ることになるだろうと語る。
     まもなく日本は参議院選挙を迎える。無風選挙とか与党の勝利は安泰などとの声が聞こえてくるが、それは現政権に皆が満足しているからではなく、メディアを含め野党、そして市民社会が政府や与党の行っている政治をきちんとチェックしていないからではないか。無関心を装っている間に、日本は世界有数の軍事大国になろうとしているし、憲法第9条や専守防衛の理念を保持したまま、敵の基地を先制攻撃する能力まで持とうとしている。そのような国策の大きな転換が、来る国政選挙で問われないとすれば、一体選挙で何を問おうというのだろうか。
     今週は防衛ジャーナリストの半田氏と、ウクライナへの軍事支援を元に、あの戦争は実は誰と誰が何のために戦っているのかをあらためて確認した上で、この機に便乗するかのように防衛費2%だの敵基地攻撃だのが囁かれ始めた日本の防衛政策の中身と対米従属の実態などを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・アメリカからの爆買いと辻褄を合わせた、インチキな防衛費
    ・5兆円あれば大学の完全無償化も叶う
    ・サステナブル・ウォーの犠牲になるウクライナ
    ・脅威を煽られ対米追従へ、というサイクルから目を覚ませ
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    ■アメリカからの爆買いと辻褄を合わせた、インチキな防衛費

    神保: 今回はウクライナの軍事援助と、それに便乗するかのように喧伝されている、日本の防衛費を現在の対GDP比1%から2%へ増額するという話も合わせて議論したいと思います。また「敵基地攻撃能力」を今年から「反撃能力」と呼ぶようになるようですが、狂牛病がいつの間にかBSEになってしまったようなものですね。

    宮台: これは核シェアリングと同じでイージスシステムに依存しなければ不可能で、アメリカが「いいよ」と言わなければ、絶対に先制攻撃的反撃はできません。すべてイメージだけで語っていて、そのイメージもアメリカに引き回され誤った、ある種のファンタジーです。滑稽ですね。

    神保: アメリカが武器供与で悪ノリしており、空前の株価高騰、軍事産業が非常に上がっています。現在、日本の防衛費は1%で、当初予算で5兆円、2%にするともう5兆円増える。大学を全部無償化しても1.8兆円くらいですから、いったい何を考えているのかと。必然性があるなら国防は重要ですが、果たしてそこがきちんと検証されているのかどうか。

    宮台: 大学無償化で知識社会化を遂げた方が、日本の将来的な安全保障につながります。

    神保: そういう話も含めて本当に根拠があるのか、専門家にきちんとお話を伺いたいと思います。ゲストは元東京新聞の論説委員、編集委員で、現在は防衛ジャーナリストの半田滋さんです。日本の防衛費は1%というベンチマークを超えてしまい、2%論が出ている状況。ドイツが1.5%から2%にするとして大騒ぎですが、日本はいきなり2倍です。半田さんは、ウクライナ問題に端を発するこの議論についてどうご覧になっていますか。
     
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