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マル激!メールマガジン 2024年4月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1199回)
急激すぎる経済成長が韓国にもたらした超競争社会と超少子化から日本が学ぶべきこと
ゲスト:金明中氏(ニッセイ基礎研究所上席研究員、亜細亜大学創造学部特任准教授)
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月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。今回の5金は通常の番組編成で、韓国の社会問題に詳しい金明中(キム ミョンジュン)氏をゲストに迎え、超のつく低出生率が世界に衝撃を与えている韓国社会に今、何が起きているのか、その背景にある過剰な競争社会はどのように形成されたのかなどについて議論した。
韓国の昨年の出生率は0.72。1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数である合計特殊出生率は2.07で人口が維持されるとされる。出生率1.26の日本でも少子化は十分に待ったなしの危機的状況だが、先進国の中で出生率が唯一1を下回る韓国は日本よりもさらに状況は深刻だ。
この急速な少子化の原因の1つに韓国社会の過度に熾烈な競争があると金氏は指摘する。韓国は人口と就業者の50%以上が、面積で12%に過ぎない首都圏に集中しているのだが、良い仕事を得て成功するために首都圏に集まった若者たちの間の競争は熾烈を極める。その競争環境の下で若者達は競争に打ち勝つために、結婚や出産よりもキャリアでの成功を最優先しなければならない状態に置かれている。その結果、人口の集中するソウルの出生率が0.55と、とりわけ低くなっているのだ。
競争を勝ち抜いた成功者は高い年収を得て、結婚し家庭を持ち、子どもを作ることもできるが、それは全体のほんの一握りに過ぎず、大半の負け組にはそれができない。
競争に勝ち抜くと簡単に言うが、それは並大抵のことではない。金氏によると有名大学に入るためには学校とは別に多くの塾に通わなければならない。中には月に30万円以上もかけて、ありとあらゆる塾に通い、さらに少しでも内申書の内容をよくするために、深夜に水泳教室に通ったり、資格を取得するための塾に通っている人も多いのだという。こうなると、子どもを産んで育て、競争に勝ち抜くための費用を負担できる家庭は限られてくる。
今や韓国では良い企業に就職できなければ結婚・出産はできないという感覚が社会の共通認識になっていると金氏は言う。これでは出生率が下がり続けるのも無理はない。
しかし、なぜ韓国はそのような状況に陥ってしまったのか。金氏は韓国の経済成長の過程に原因の少なくとも一端があると指摘する。韓国の戦後の発展は「圧縮成長」と言われるほど、日本の高度経済成長よりも更に短期間に急速な経済成長を実現した。金氏は、韓国が経済に力を入れすぎた結果、社会保障や福祉の整備がそれに追いつかず、それが結果的に格差を生む原因となっていると指摘する。加えて韓国は1997年のアジア通貨危機の際に経済破綻をきたしIMFからの支援を受けざるを得なくなった。
IMFへの債務を返済するまでは事実上韓国は経済主権を失った状態にあり、その間、開発経済の世界では批判の多いIMF・世銀の構造調整プログラム(SAP)の下で、極度に新自由主義的な経済・社会的制度の改革を強いられた。
その結果、韓国は先進国でも希にみるような格差社会へと変質してしまった。韓国の相対的貧困率、とりわけ年金が未整備の時代に働き、韓国の経済成長を支えた高齢者の貧困率は約4割とOECDでは最も高い水準にある。
格差社会の現実を目の当たりにして、韓国では何とか勝ち組になろうと、誰もが必死で高学歴を得ようとする。韓国の大学進学率は7割を超え、日本の57.7%を遥かに凌ぐ。そしてその大学生たちは誰もが狭き門の大企業を目指すのだ。日本でも中小企業の生産性や賃金の低さが問題視されているが、韓国ではほんの一握りの大企業と中小企業の間の賃金や労働条件の格差が非常に大きい。そのため、若者たちは何とか大企業に入りたいがために、まずは有名大学に入った上で資格やTOEICのスコアを上げるなどのスペックを上げることに血眼になるのだという。
さらに韓国では貧困の固定化も問題となっている。以前は自分が頑張れば上に上がれる社会だと言われた。しかし今は生まれた家庭によって生活水準が固定化されている。有名大学に入るためには塾などで莫大な教育費がかかるため、裕福な家庭でなければ競争に勝ち抜くための教育を受けることが難しくなっているというのだ。
平均賃金で日本を抜き去り、1人当たりGDPでも間もなく日本を抜き去りそうな勢いで成長を続けながら、極度の少子化に直面する韓国が内包している深刻な矛盾とはどのようなものなのか。韓国ではなぜここまで競争が激しくなってしまったのか。過度に急激な経済成長が韓国にもたらした諸問題を、ある面では共通し、ある面では異なる問題を抱える日本に住むわれわれはどう考えるべきかなどについて、ニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本よりも出生率の低い韓国
・少子化の背景にある行き過ぎた教育競争
・1997年経済危機に端を発する貧困の固定化
・過度に急激な経済成長が韓国にもたらした矛盾
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■ 日本よりも出生率の低い韓国
神保: 今日のテーマは韓国です。韓国には日本が参考にしなければならない部分と異なる部分がはっきりとあります。日本の出生率も低いですが、韓国はそれに輪をかけて低い。しかし、起きていることの背景には日本と違うところがあります。
宮台: 前提知識として、人口維持に必要な出生率は2.07です。これは200人の親から207人産まれればよいということですが、韓国の場合は200人の親から72人しか生まれていません。結局、税金や社会保険料を誰が払うのかという問題があります。現役世代ではない人が膨大にいる中で、現役世代がそれらを払うとなると、可処分所得がどれだけ減るのかが問題になります。
先進国は消費社会化していくと必ず出生率が下がり、貧乏な国ほど家業を助けてくれる労働力ということで子どもの数が多くなります。よく言えば都市生活には多様性がありますが、子どもが耐久消費財化してしまいました。子どもを産むということが自明ではなくなり、コストパフォーマンスから見て子どもを産み育てることが自分たちの幸せに資するのかどうかという自己中心的な考えがあります。
神保: 緩やかな減少であれば吸収が可能でも、日本の1.26や韓国の0.72などになるとあまりにも急激な減少になるので、支える年代の人口が極端に減り、負担が大きくなりすぎて年金が破綻するということも起きるかもしれません。せめて緩やかに減らせることができれば良いのですが、日本も韓国もそれができていません。
韓国の合計特殊出生率0.72ということが衝撃的なニュースとして出ましたが、70年代は4.53だったのが80年代には2を割りました。日本は70年代くらいからギリギリ2くらいで、ずっと落ち続けています。OECD平均は1.58で先進国の平均も決して高くありません。
これらを前提にお話を伺っていきたいと思います。ゲストはニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中さんです。今日はじっくりお話を伺いますが、0.72という出生率について短いコメントを求められた時にはどういうふうに答えていますか。
金: 出生率がここまで落ちた大きな理由は2つあると思います。1つ目は韓国の若者が置かれている経済的状況があまり良くないこと、もう1つはソウルを中心とする首都圏に人口も経済も集中していることです。
神保: 中央と地方の格差が出生率低下につながるというのはどういう仕組みなのでしょうか。
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