マル激!メールマガジン 2014年11月26日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第711回(2014年11月22日)
アベノミクスの先にある日本の姿とは
ゲスト:熊野英生氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
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 安倍首相は来年10月に予定されていた消費税率の引き上げの延期を決定し、11月21日に衆議院を解散した。解散後に記者会見で安倍首相は、自らこの解散を「アベノミクス解散」と位置付け、自らが進めてきた経済政策を選挙の争点に据える意向を示している。
 安倍首相は首相就任後、直ちに、日本経済が長年苦しんできたデフレからの脱却を目指し、アベノミクス第一の矢として金融緩和を実施した。本来、金融政策は日本銀行の専権事項だが、安倍首相は内閣の任命権を利用して日銀の総裁、副総裁、審議委員らに金融緩和推進論者を据えることで、官邸の意向を金融政策に反映させることに成功した。
 政権誕生時には1ドル80円前後だった為替は、118円前後にまで円安が進み、為替差益によって輸出関連企業を中心に業績が好転。一方、円安によってガソリン、食料品などの値段があがり、その一方で、賃金の上昇が見られなかったため、一部の輸出関連産業や株式を持つ富裕層を除いた大半の国民生活はむしろ苦しくなっているとの指摘が根強い。
 経済情勢分析の専門家で、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、アベノミクス第一の矢である異次元緩和に消費マインドを刺激するなど一定の効果があったことを認めた上で、「金融緩和策はいわば短距離ランナーであって、その効果をどうつなげていくかが重要だ。このまま短距離ランナーだけで走り続けるのは困難だ」と語る。特にアベノミクス第三の矢と称される成長戦略、とりわけ規制緩和や持続的に実体経済に働きかけることができる施策の重要性を強調する。
 熊野氏によると、第二の矢の財政出動もあまり効果的な事業に投入されていない上、第三の矢がほとんど実効性のある施策が打ち出されていないという。しかも安倍政権が財政再建の一環となる消費税増税を延期する決断を下したことで、日本政府の財政再建に対する本気度に対する内外の信用が揺らぐ可能性が十分にある。
 首相がアベノミクスを問う選挙を打った以上、野党は対案を出さなければならない。熊野氏は、もともと今回の消費税の税率引き上げは社会福祉予算の充実のためだったことを思い出してほしいと言う。誰でも増税は嫌いだろうが、消費税の引き上げを伸ばすことでわれわれの社会保障はどうなってもいいのか。野党はそれを問い、あえて消費税を引き上げてでも安心できる社会保障構築の青写真を示すべきではないか、と熊野氏は問う。
 あえて安倍首相自らが打って出た「アベノミクス選挙」の舞台に乗り、日本がこのままアベノミクスを続けることの意味とその対案の可能性を、ゲストの熊野英生氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・金融緩和頼りの“短距離走”が続く理由
・アベノミクスの功罪と、成長戦略なき金融政策のリスク
・プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション
・「税金を上げなければ票が入る」と高を括られている
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