マル激!メールマガジン 2014年11月19日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第710回(2014年11月15日)
地球温暖化交渉と世界の潮流から取り残される日本
ゲスト:山岸尚之氏(WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダー)
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アメリカのオバマ大統領と中国の習近平国家主席は11月12日、温室効果ガスの削減や非化石燃料への転換などを含む温暖化対策で合意した。長期目標とはいえ、中国が削減の目標値に合意したことは、世界に驚きを持って迎えられた。
中国とアメリカは世界の2大二酸化炭素排出国だ。特に中国は、大気汚染など環境対策の遅れが目立つ印象が強いが、実際は風力発電では新規導入量、累積発電量ともに群を抜いて世界一を独走し続けており、着実に脱化石化の布石を打ってきている。また、一方のアメリカも累積の風力発電量では首位の座を中国に譲ったものの、依然として世界第2位をキープしている。一切の削減目標を拒否してきた中国と、ブッシュ政権下で京都議定書から離脱し、国連を舞台とするCOP(気候変動枠組み条約締約国会議)からも一定の距離をおいてきたアメリカが具体的な削減目標を打ち出したことで、2015年に予定されている京都議定書に次ぐ新たな国際的CO2削減の枠組みの実現が、俄かに現実味を帯びてきている。
国際環境NGOのメンバーとして2006年から継続的にCOP交渉にかかわってきた山岸尚之氏は、人類が地球温暖化の影響を受容可能なレベルに抑えるためには、地球の気温の上昇幅を2度以下に抑えられるかどうかがカギになるとされ、それを目指した新たなCO2削減の枠組みが模索されているという。
今月発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書によれば、人類がこのまま有効な手を打たないままCO2の排出を続けた場合、地球の平均気温は今世紀末に最大で4.8度上昇し、その副作用として最大82センチの海面上昇、熱波の長期化、より極端な豪雨の頻発化などが避けられなくなると予想している。
そのような事態はなんとしても避けなければならない。そうした共通認識の下で、世界は新たなCO2削減の枠組みを懸命に模索しているが、山岸氏はそうした中における日本の存在は日に日に小さくなっていると指摘する。気候変動の国際交渉の場において、世界が温室効果ガス削減に向けて歩み出す第一歩となった歴史的な京都議定書のホスト国としての存在感はもはや見る影も無く、もはや世界の潮流から取り残され始めているというのだ。
地球温暖化を阻止するための交渉は成就するのか。世界の潮流と日本の実情について、山岸尚之氏とともに神保哲生と国際政治学者の山本達也が議論した。
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今週の論点
・温暖化対策の経緯と現在
・このままCO2の排出が続くと、どんなことが起きるのか
・日本のプレゼンスはなぜ下がったのか
・再エネの推進と「フェアであること」
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