マル激!メールマガジン 2015年7月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第743回(2015年7月4日)
夫婦別姓の前に立ちはだかるもの
ゲスト:山口智美氏(モンタナ州立大学社会学・人類学部准教授)
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 米連邦最高裁は6月26日、同性婚を合衆国憲法の下の権利であることを認めた。5月22日にカトリック国のアイルランドが国民投票で同性婚を合法と認めたのに続き、アメリカが同性婚に異性間の結婚と同等の権利を認めたことで、世界の同性婚合法化の流れが一気に加速する可能性が高くなっている。
 翻って日本の現状は、2013年2月に最高裁は非嫡出子の相続格差にようやく違憲の判断を下し、明治時代から続く婚外子への差別がようやく解消。そして夫婦別姓についても、今年11月に予定される最高裁大法廷における憲法判断では、夫婦別姓を認めてこなかった最高裁が、前向きの判断をする可能性が期待されている。
 ところが、最高裁判決を受けて実際に法律を作ることになる政治に目を向けると、どうもこうした流れとは正反対の保守的な傾向が強まっているようだ。政権の中枢にいる有力政治家に「夫婦別姓は日本の家族制度を破壊する」などとして反対の立場を公言している人が多い。自民党の憲法改正草案に至っては、前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」、24条の婚姻条項ではわざわざ第1項を新設して「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」などと、ことさらに家族の義務が強調されている。
 米・モンタナ州立大学准教授で、フェミニストの立場から保守化する自民党に影響を与えているとされる日本会議の研究を続けている山口智美氏によると、日本会議は現在、神社本庁を中心とする多くの宗教団体を傘下に抱え、日本の保守運動を統合するような立場にあるといってもいいという。そして、そのきっかけとなったできごとが、従軍慰安婦問題と夫婦別姓問題だったと山口氏は指摘する。1996年に当時の法制審議会が選択的夫婦別姓を含む民法改正の提言をまとめた際、強い危機感を抱いた保守層が、勢いを増していた日本のフェミニズム運動に対する「バックラッシュ」と呼ばれる反撃を開始したことが、一連の保守運動の源泉になっていると解説する。
 アメリカや欧米諸国の多くが、同性婚を含む多様な家族像を受け入れ始める中、日本では依然として夫婦間の別姓すら受け入れられていない。これはなぜなのか。保守派の主張する「美しい家族」は日本の伝統的な家族観を反映したものなのか。山口智美氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・保守的な反面、女性への配慮を戦略的に打ち出す“狡猾な”安倍政権
・巨大な影響力を持つ保守団体「日本会議」とは
・守るべき「家族像」は本当にあったのか
・憲法が同性婚を否定するという合理的根拠はどこにもない
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