マル激!メールマガジン 2015年9月9日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第752回(2015年9月5日)
本庄保険金殺人事件に見る自白偏重捜査の危険性
ゲスト:高野隆氏(弁護士・八木茂死刑囚再審弁護団)
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15年ほど前に年にマスコミを大きく騒がせた殺人事件の再審請求が2015年7月31日、東京高裁で却下された。この事件は「本庄保険金殺人事件」として知られる殺人事件で、埼玉県本庄市で金融業やスナックを経営する八木茂氏が、自身が経営するスナックのホステスと常連客3人を偽装結婚させた上で、多額の生命保険をかけ、うち2人を殺害、もう1人を殺害未遂をしたとされる事件。主犯とされた八木氏は2008年に最高裁判決で死刑が確定。ホステス3人も懲役12年から無期懲役の有罪が確定していた。
しかし、実際には八木氏の犯行を裏付ける物証がなく、いずれの被疑者も一貫して犯行を否認していたため、捜査の方は当初、難航していたが、3人のホステスの1人で共犯者とされた武まゆみ氏が、途中から当初の否認を全面的に覆し、犯行を自供し始めたため、八木氏および3人のホステスが起訴されいずれも有罪となったのだった。
しかし、八木氏の再審弁護団の高野隆弁護士は、武氏の証言は、長期にわたる勾留と昼夜を問わない連日の取り調べを通じて、武氏が検察が描くストーリーを植えつけられ、その「偽りの記憶」を信じ込むようになった結果だった可能性が高いと指摘する。武氏の記憶が変遷していく過程は、武氏自身が取り調べの過程を書き残していた日記帳「武ノート」にも、詳細に記されていると高野氏はいう。
免田事件、帝銀事件、足利事件、布川事件等々、戦後の主要な冤罪事件のほとんどで、被疑者はやってもいない犯行を一度は自白している。いずれも虚偽の自白だったことになる。いまだに自白偏重主義を貫き、取り調べの可視化にも後ろ向きな日本の捜査当局は、過去の過ちから何を学んでいるのだろうか。
国連の委員会で「中世」などと嘲笑を買いながらも、一向に改善が見られない後進的な日本の刑事司法制度の下で、武氏の「途中で変質した記憶」に基づく判決に対する再審は高裁段階では認められなかった。弁護団は8月5日、最高裁に特別抗告をしたので、今はその結果を待たねばならないが、見通しは決して明るいとは言えない。
元々あやふやで、刷り込みや作り替えさえ可能な「記憶」に基づいた証言や自供に依存した刑事捜査の危険性を、本庄保険金殺人事件の弁護人の高野氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・本庄保険金殺人事件の物証なき有罪
・“偽りの記憶”が作られる過程とは
・虚偽自白の3類型
・冤罪問題を解決するために
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