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                   ☆ メルマガPLANETS 号外 ☆
          ~二コ生PLANETS放送記念!「小人論」詰め合わせ~
                    発行:PLANETS  2012.10.25
                     http://wakusei2nd.com

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こんにちは!はじめましての方は、はじめまして。
PLANETS編集部・メルマガ担当の秘書A子です。

今号は、緊急増刊!
実は、10/26(金)夜21:00より、
二コ生PLANETS10月号「小人論」スペシャル ~白雪姫座談会~ の放送が決定しました!

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番組の詳細については、↓の番組ページをご覧頂くとして……
http://live.nicovideo.jp/gate/lv112230174

「そもそも『小人論』ってなに?」という方のために、
今回の「小人論詰め合わせ」パックをご用意しました。

「小人論――暴走する片思いのメカニズム」とは、
「世界に復讐するリトル・ピープルの会」という秘密団体が
「メルマガPLANETS」に連載している、恋愛考察エッセイです。

この号外には、メルマガPLANETSの創刊準備号「vol.0」から、
10/19(金)に配信された最新号「vol.7」までに掲載された、
「小人論」の全文が、ノーカットで収録されております。

これまでに連載で「小人論」を追いかけ続けてきた方も、
10月に入会したから、前半は読めてない!という方も、
ニコニコニュースで無料記事を読んだだけ……という方も、
今号を通じて、改めて[小人]とは何か、[姫]とは何か、そして
[本当の愛]とは何なのか?[人間の尊厳]とは何なのかを、
共に考え、感じて頂ければと思っております。

そしてどうか、すべての[小人]たちに、魂の救済のあらんことを!


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├○  小人論――暴走する片思いのメカニズム
├○                    世界に復讐するリトル・ピープルの会
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├○  序章  白雪姫と七人の小人たちの法則
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├○  第1章  映画『モテキ』に見る、白雪姫と小人の典型例
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├○  第2章 【ケーススタディ1】大学院生K君(仮名)の場合
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├○  第3章 [白雪姫]の精神分析:チューまではノーカウント
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├○  第4章  大阪LOVER
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├○  第5章 【ケーススタディ2】有名商社マンS君(仮名)の場合
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├○  第6章 [小人]の精神分析:DK心変わりの理論
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序章
白雪姫と七人の小人たちの法則

  仮に男女比8:2、計10人のサークルがあったとしましょう。

  多くの場合、2名の女子のうち明るく積極的なほうの女子が8人の男子の内のひとりと付き合い始めます。この女子をここでは[白雪姫]、と、男子を[王子]と呼びます。では残された7人の男子は、もうひとりの女子に殺到するのかというと、意外とそうでもありません。ここでこの7人の男子たちはむしろ[白雪姫]にとってのナンバー2の座を占めるため、その取り巻きと化すケースが多いのです。つまり[姫]にとっての[小人]になります。(このとき[姫]はサークル内で[王子]と付き合っていることを隠しているケース、サークルの外に[王子]がいるケースもままあります。)

  残されたもうひとりの女子はとうぜんこの状況が面白くありません。したがって彼女は[姫]の八方美人さを非難することになります。そう、彼女は[魔女]の役になってしまうのです。この場合、[小人]たちの多くが[姫]の歓心を買うために[魔女]をサークルから排斥しようとします。もちろん、そんなことをやっても[白雪姫]は[小人]を[王子]に昇格させることはまずあり得ません。それでも[小人]たちは勝手に盛り上がり、忠誠の証として[魔女]を排斥するのです。

  しかしほんとうの悲劇はここからはじまります。[魔女]を排斥し、サークル全体にとっての悪役を失ってしまったあと[小人]たちの満たされない思いはどこにそのはけ口を求めるのでしょうか。歴史が教える通り、共同体はその外部に敵を求めることで強い団結を獲得します。しかし外敵への反発のもたらした団結が強ければ強いほど、その外敵を失ったあとの反動は強いものです。[魔女]を排斥した[小人]たちは、たいていの場合[小人]同士の内紛をはじめます。それも、[王子]の座をかけたバトルロイヤルではなく、筆頭[小人]――すなわち[姫]にとってのナンバー2の座をめぐるバトルロワイヤルを開始するのです。そしてサークルはクラッシュしてゆくことになります。

  以上が、二〇〇一年頃ある批評家(当時はまだ善良な一学生でしたが)によって発見された人類普遍の法則――「白雪姫と七人の小人たちの法則」です。一説によると、全国の文化系サークルの崩壊パターンの役78.6パーセントがこの法則に当てはまるそうです(惑星開発委員会調べ)。

  しかしここで重要なのは、自意識過剰な年頃の男女がローカルな人間関係で承認を得ようとするあまり空回りするというありふれたことなどではありません。ほんとうに重要なのは、[小人]はどんなにがんばっても――[魔女]を撃退しても他の[小人]たちとの抗争を勝ち抜いても[王子]にはなれないということなのです。

  ディズニー映画『白雪姫』に、[姫]のベッドサイドに、七人の[小人]たちがずらりと並んでるという場面があります。彼らは一様に[姫]に好意をもっています。[姫]もまた、[小人]たちに優しく接しているものと思われます。だからこそ[小人]たちも[白雪姫]のことが大好きなのです。
  しかし、[姫]と[小人]たちの関係は決して対等ではありません。

  なぜならば[小人]たちが[白雪姫]が好きなほどには、[姫]は[小人]たちのことが好きではないからです。彼らは一様に手を揃えて置き、決してベッドの中の白雪姫にその手を伸ばしません。彼らは[小人]である限り、決して[白雪姫]にとっての恋愛対象にはならないのです。[小人]たちはみな、[姫]に恋愛感情を抱いて付き合いたいと思っているのに対し、[姫]は[小人]たちの誰にも恋愛感情は抱いていません。[姫]にはほかに[王子]がいるのですから。

  しかし恋する[小人]たちはどうでしょうか。童話の中でこそ、[小人]たちは[姫]と[王子]との結婚を祝福します。しかし、実際はどうだったのでしょうか。[小人]たちはおそらくは何ヵ月もの間、[姫]と共同生活を送り献身的に尽くしてきたはずです。彼らのうち、比較的冷静かつ聡明な何人かは、自分が恋愛対象ではないこと、[王子]ではなくあくまで[小人]のひとりでしかないことに自覚的だったはずです。しかし、それでも彼らは誰一人として[姫]への献身を捨てなかった。それはなぜか。[姫]の優しい態度と、同居による近接性の高さが、「いつか自分に振り向いてくれることがあるかもしれない」という可能性を[小人]たちに信じさせていたからです。そして[小人]たちは多くの場合、[王子]が[姫]に口づけし、ふたりが結ばれたその瞬間にはじめて、自分が[小人]であること、いや[小人]でしかなかったことに気づくのです。

  本連載の目的はこの[小人]たちの救済にあります。[小人]は決して[王子]になれない。しかしそのことに気づかない、いや気付かないふりをし続けることで希望を得て、プライドを維持する哀しい生き物なのです。

  そして……この[小人化]は決して他人事ではありません。みなさん、胸に手を当てて考えてみてください。この人は自分に気があるんじゃないかという希望的観測のもとに、相手の都合のいい中距離にコントロールされてしまったという経験がある人は案外多いのではないでしょうか。私たちの入手したとあるFBIに連なる筋の極秘資料によると、日本人の20代~50代男性の実に66.2%が、女性の29.1%が、この「小人化」を経験しているとアンケートに回答しているようです。この数字に顕著に表れているように、一般的に「小人」化は男性の女性に対する片思い感情から発生します。しかし、主に職場での既婚男性とその部下・後輩の独身女性との関係性において女性の「小人化」も珍しくありません。

  そう、現代社会においては誰もが小人(リトル・ピープル)になり得るのです!

  そこで私たちは古今東西、老若男女、あらゆる「小人化」のケーススタディを集め、徹底的に分析と考察を重ねました。その結果、ぼんやりとですがこの[小人]という哀しい生き物の救済への手掛かりが浮かび上がってきています。

  この連載では、私たちの研究結果を発表すると同時に、みなさんと一緒に[小人]の救われる道について考えてみたいと思います。

  では、次章はさっそく映画『モテキ』を通じて、この「白雪姫と七人の小人たちの法則」についてより深い考察を加えていきましょう。


第1章 
「映画『モテキ』に見る、白雪姫と小人の典型例」

  昨年公開された映画『モテキ』は興行収入20億円超のスマッシュヒットを記録しました。テレビドラマ出身の監督・大根仁の演出力と、原作漫画以上に散りばめられた恋愛「あるある」ネタで、映画ファンのみならず広く話題になった作品です。

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  前回取り上げた[白雪姫と七人の小人たちの法則]のうち、特に[白雪姫]と[小人]の関係性について考えるとき、絶好の素材がこの映画『モテキ』だと言えるでしょう。

  主人公は森山未来演じる三十代前半の幸世青年です。インターネットニュースサイト(ナタリー)の記者である彼は特にルックスが秀でているわけでもなければ、仕事ができるわけでもなく、もちろん対人コミュニケーションスキルに秀でているわけでもない、平凡な(強いて言うならちょっと暗めな)青年です。

  劇中で彼とツイッターで偶然知り合って仲良くなるのがヒロインの雑誌(アイスクリーム)編集者・みゆきです。年齢は二十代半ば、長澤まさみが演じる彼女は明るくてかわいい上に、マニアックな音楽や漫画の話題にもついていけるサブカル通で、幸世君は初対面ですっかり彼女にハマってしまいます(ちなみにふたりの勤務先の設定は、サブカル好きには非常に嫌味なバランスになっています。紙媒体(雑誌)とニュースサイトの差、おしゃれカルチャー誌の定番(でも決して老舗の大雑誌ではない)と新興のニュースサイト、それなりに経験を踏んだ編集者と新人の記者(でも幸世の方が数歳年上)、非常にいい意味で「嫌らしい」設定だと言えます。)彼女の人懐っこさに引っ張られるかたちで、初対面の居酒屋オフで意気投合したふたりはそのまま朝まで飲み明かし、最後は幸世の部屋に流れ着きます。流れでキスまでしちゃって、あとはこのまま……と思った所でみゆきは素に戻り自分に覆いかぶさろうとする幸世君に「何?」と一言。空気は一瞬で凍りつきます。結局、それ以上は何も起らず、ふたりはまた遊ぼうね、と言い合って別れます。最後まではいけなかったものの、これで完全にフラグが立った(恋愛がはじまった)と思い込んだ幸世君はその後映画を通して彼女に振り回され続けることになります。

  ここでのポイントは、ここで「フラグが立った」と考えているのは幸世君の方だけだということです。みゆきのほうはおそらく、あくまでいつも通りに人懐っこく接し、いつも通り愛想よく振るまい、軽いリップサービスとしてキスしているにすぎません。どこまでが計算でどこまでが無意識がわかりませんが、経験上、彼女がそうすることで周囲の男性にちやほやされることを知っていることは間違いないだろう、というのが我々の共通見解です。

  そう、みゆきはここで幸世君を[小人]にする気はあっても、[王子]にする気はないのです。