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丸若裕俊『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』第4回「喫茶」は日常と非日常を往復する
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丸若裕俊『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』第4回「喫茶」は日常と非日常を往復する

2018-08-30 07:00
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    工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレスーー日本的なものたちの手触りについて』。今回は、東京・お台場にオープンしたチームラボの常設展内にある、丸若さんの手がけるカフェ「EN TEA HOUSE」をテーマに語っていただきました。茶の持つ遅さや日常性、飲むという行為は、私たちと世界、自然との関係をどのように変えていくのでしょうか。(構成:高橋ミレイ)

    デジタルとアナログの両面から東洋的な価値を更新する

    丸若 チームラボが6月21日、お台場にミュージアム「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」をオープンしました。その中に、チームラボとコラボしたカフェ『EN TEA HOUSE』(以下、TEA HOUSE)を出店しています。

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    ▲「森ビル デジタルアート ミュージアムエプソン チームラボ ボーダレス」
    https://borderless.teamlab.art/jp/
    東京・お台場に開設された、チームラボの常設型ミュージアム。巨大な敷地は、「Borderless World」「運動の森」「学ぶ!未来の遊園地」「ランプの森」「EN Tea House」の、5つの空間から構成されます。アートは、部屋から出て移動し始め、他の作品とコミュニケーションし、他の作品と境界がなく、時には混ざり合う。そのような作品群による、境界のない1つの世界、『チームラボボーダレス』が作り上げられています。

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    ▲『EN TEA HOUSE』
    https://en-tea-house.teamlab.art/odaiba/jp/
    「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」内のティーハウス。チームラボと、丸若屋の手がける「EN TEA」とのコラボレーション。「EN TEA」が用意した4種類のお茶と、チームラボのインスタレーション作品『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』『Enso - Cold Light』を楽しめる茶室となっています。

    ここは最先端のテクノロジーが詰まっている場所ですが、そこで飲む茶は自然農法によってつくられています。その陰と陽の部分がすごく先進的だし、同時に日本的で、それが楽しめる空間です。

    これまでのチームラボの展覧会と大きく違うのは、常設展なので長期的に陳腐化させないことが重要だということです。これは展示全体に言えることだと思うんですが、テクノロジー的な表現を単年ではない期間でやるというのは初の試みに近くて、機材的なものの進歩を考えると、結構なチャレンジだと思うんです。そこに茶という普遍的な要素を加えることによって、これまでテクノロジーの分野では、アナログの要素は足を引っ張るイメージがありましたが、むしろ、それによって陳腐化しないという現象が生まれたらいいと思っています。

    宇野 いまのお話を聞くと、丸若さんは相当深く考えられていますよね。

    先にチームラボの話からすると、今のコンピュータ技術は一般的には西洋的なものの究極の形だと言われているけれど実はそうじゃない、むしろコンピューターは西洋近代的な発想の外側に出るための道具であって、日本的な侘びや寂び、「もののあはれ」を可視化する装置だと言っているのが、猪子寿之率いるチームラボであり、落合陽一です。あの二人はやっていることは全然違うんだけれど、デジタル技術を東洋的なものとして捉えているという共通点がある。そこに丸若さんのような、トラディッショナルな文化をどう現代にアップデートするかを模索しているプレーヤーが合流するのは必然的な流れだし、僕は丸若さんの仕事を見て、猪子さんにはこういった並走者が要るだろうと思ったんです。

    そしてもうひとつ、情報テクノロジーには実体がないので、発展や変化のスピードがすごく早い。チームラボが2〜3年前に、当時の最先端の技術でつくっていた作品は、アートとしてはいまだに素晴らしいけれど、裏側のテクノロジーに関しては、古くなっているものがいっぱいあるはずで、それでも表現のレベルで陳腐化しないように、一生懸命やっている。

    それに対して茶は、圧倒的に遅いんです。20世紀的な遅い工業社会と21世紀的な早い情報社会では、後者が有利と言われてきたけど、今は普遍的なものを追求しようとすると、一周回って「遅いもの」の優位性が生まれてきていると思う。茶の新茶のサイクルは、1年以下にはなりませんが、その「遅さ」によって陳腐化しない。どんなに頑張ってもサイクルが縮まらないことが、普遍性を獲得しているところがあると思います。だから、茶と出会うことで、猪子さんは大きな武器を手に入れたし、丸若さんも猪子さんのようなプレーヤーにずっと刺激を受けてきたわけですよね。

    丸若 現代のお茶には余計なものが付きすぎているので、今は付いたホコリを払っているというか、化石を掘り起こす感じです。一方でテクノロジーは、肉付けをして積み重ねていく。アプローチは逆ですが、どちらもひとつの答えに向かっていて、両側からやると答え合わせの速度が倍速になる。削っているだけだと見えないものが、両方の角度からだと見えてくると思うんです。

    宇野 猪子さんやチームラボは、テクノロジーそのものを開発しているわけではなくて、最新の情報テクノロジーをアートとして文化的に応用することで、どう東洋的な価値をアップデートできるかということを彼なりにやってきた。それは「こんな感じで応用したら、こういうものが見えてきた、あんなものが見えてきた」といった試行錯誤の成果、積み重ねなんです。対して丸若さんは、千年以上の歴史を持つ茶というものが、近代化の中で本質が見えなくなっている、そのホコリを取り除く作業をしている。だから、足し算と引き算の比喩は正確だなと思いました。どちらも近代を通過した後に、現代のテクノロジーがなければ可視化できない東洋的なものの本質を、いかに出していくのかという作業を、それぞれ逆方向からしてるんだと思うんです。


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