平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。前回に引き続いて鮑(あわび)のエピソードです。房州大原のビワッ貝を至高とする敏樹先生。友人の女性ライターの引越し祝いで、金に糸目を付けず食材を買えるのをいいことに、鮑のとろろ汁の調理に挑戦しようとしますが……?
男 と 食 11 井上敏樹
以前、鮑に滑って転んだ事がある。鮑をおろし金の把手で殻から外していた時の事だ。外した拍子に鮑が落ちた。探していると床の鮑を踏んづけて滑ったのだ。大事には至らなかったが、不思議な事が起こった。足の裏の、丁度、鮑を踏んだ部分が赤くなったのである。痛みも痒みもなく、ただ、赤い。鮑の呪いかと思ったが、調べてみると鮑アレルギーというのがあるらしい。だが、食べてみてもなんでもない。だから気にしない事にした。
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